「お姉ちゃんも行くよねー?」「当然、遙も行くわよね?」
遙は二人の顔を交互に見る
「わ、私は…」
何で二人が遙にこんな事を聞いているかというと、近々花火大会が開催されるのである。
要するに、それに遙を連れて行きたいという訳なのだ
「鳴海さん…誰に説明してるんですか?」「え!?」「邪魔ですから、仕事に戻って下さい!」
「コラー!糞虫〜!サボるな〜。働け〜!馬車馬のごとく働け〜。そして私の分まで働きなさい…」
ふにゅ!
「遙〜。花火が怖いから嫌だって言うんでしょ〜」「ち、違うよ…。ただ…」
「大丈夫よ。怖い時は『キャ!』て言いながら、鳴海さんに抱きつけば良いだけじゃない!」
それを聞いて遙はぼっと顔を紅くする
「それもそうね。孝之が一緒だったら、何も心配要らないわね!」「た、孝之さんに悪いよ〜。勝手に…」
「大丈夫。鳴海さんなら、一発OKだら!」「え!?どうして…?」
茜は自信満々に笑う
何処からくるんの?その自信…
「雪さん…」「はい…何ですか?」
振り返ると水月さんがこっちに来てと手招きをしていた。
「何か御用ですか?」「雪さん、これ行かない?」
水月さんはニコニコと笑いながら、一枚のチラシを雪に見せる
「花火…大会ですか…」「うん!雪さんも一緒にどうかなーって思って…」「すみません…雪は行けません…」
丁寧ね頭をさげる
「どうして?」「雪には…仕事がありますから…」
手に持った洗濯物をじっと見る
「そうよね…雪さんには仕事があるもんね…」
水月さんは凄く残念そうな顔をする
「御免なさいね…」
水月さんはそれだけ言って歩いて行こうとする
「あの…雪も…」「え!?どうしたの?」「雪は…本当は行きたいんです…でも…」
水月さんはゆっくりと歩いて来て、ポンと雪の肩に手を置く
「本当に、行きたいの?」「はい…」
水月さんはうんうんと何度か頷く
「どうします?」
スタ!
「あ、真那様…」「雪が行きたいのでしたら、行って来なさい」
真那様はにっこりと笑う
「良いって。良かったわね」
水月さんはにっこりと笑いながらこっちを見る
「はい…」「ところで…雪さん」「はい?何でしょうか?」「浴衣…ある?」
どうしましょう…着て行く浴衣がありません…。
「雪…これを着て行きなさい」
真那様は浴衣を雪の前に差し出す
「水月様と一緒にお選びした物なんですよ」「気に入るか…どうか判んないけど…」
水月さんは照れくさそうに頬を紅くする。受け取った浴衣を抱きしめる
「有難う御座います…。雪は…雪は…」
目から涙がこぼれる
「何も泣く事無いでしょ…」「すみません…でも、嬉しくて…」「そう…それは良かったわ…」
水月はにっこりと笑う
|