「ねぇ…知ってる?」「ん…?どうした?」「また、転校生が来るらしいわよ!」
またですか…。この前みたいなことはないだろうな〜
「今、前のこと思い出したわね!」
ドキ!
「な、何でわかったんだ?」「私も同じこと考えてから…」
なるほど…
「それで、どこに来るんだ?」「ここ!」
水月は床を指差す
「ここって…? このクラスにか!?」「うん…本人の強い要望とか…」
あははは…誰だよ、そんなデマを流した奴は…。一人しか居ないか、そんなことをいうのは…
「ねぇ…」「いやだ!」「何よ!まだ何もいってないでしょ!」
聞かなくても判るって…。この前のみたいに賭けをしようっていうんだろ…きっと…
「あら、良く判ったわね…」「人の心を読むな〜!あんたはエスパーか!」「知らなかった?」
あ〜好きにしろ…もう知らん
「もう、みんなも知ってると思うが…。今日、このクラスに転校生が来る」
お決まりだが、教室が一気に活気だつ
「入って…」
ゆっくりとドアが開く。数人の男子生徒は体を前にだして覗き込む
入って来たのは、白髪の女の子だった
「彼女が、本日転校して来た…」「琴乃宮雪です。よろしくお願いします」
深々と頭を下げる。当然、教室の男子生徒は一気に活気だつ
「君の席は…」
先生があいている席を探している時、琴乃宮さんはこっちを見てにっこりと笑う
俺も軽く手を振る。何か異様なものを感じる。ゆっくりと水月の方をみると、プイっとそっぽを向く
「ねぇねぇ…どこから来たの?」「スリーサイズは?」「好きな男性のタイプは?」
当然のように、琴乃宮さんは男子生徒に囲まれる。
俺も…いってみようかな…
おもむろに立ち上がり、琴乃宮さんの所に行く時に、水月に襟を掴まれる
「ぐぇ…」「あ〜ら…ごめんなさい!」
水月さん…怒ってますねよね?
「そんなに、あの子に興味あるの?んー?」
水月はニコニコ笑いながら顔を近づけて来る。思わず後ろに二、三歩さがる
「えっと…その…」「それもそうよね…。さっきなんて、手なんか振って嬉しそうだったもね〜」
水月に、壁まで追い詰められる。何度も後ろを確認するが、やはりそこは壁に違いはなかった
水月の手に、白くて丸い物が握られている事に気が付いた時は、すでに遅かった
「大丈夫ですか…?」
ゆっくりと目を開けると、緑の髪の子が心配そうにこっちを見ていた
ここは、保健室か…。そっか、水月のあれを食らって倒れたのか…。あの制服は、一年か…
「目を覚まされましたよ」
カーテンが開き、琴乃宮さんがやって来る
「大丈夫ですか…」「慣れてるから…」
苦笑いを浮かべる
「ところで、何でここに?」「雪は…すごく心配で…」「そうか…ごめんね。初めて会った人に心配かけて…」
琴乃宮さんはそれを聞いて、少し驚いた顔をした後で普通に戻る
何だ…今、一瞬みせた驚きの顔は?
「もう、教室に戻って良いですよ」
保健室の先生がそっと顔をのぞかせる
「はい…お世話になりました」
そういって保健室を出て、二人で教室に向かってゆっくりと歩きだす
「驚いただろ?」「え!?」「水月だよ。水月!あんな至近距離で投げつけるか…。普通…」
「水月…さん…?」「あの何でも投げる…」
ガン!
床に黒板消しが転がる。慌ててあたりを見渡すが、廊下には琴乃宮さんと俺しか居なかった
どこから…飛んできたんだ?
琴乃宮さんは驚いた顔で、その場に立ち尽くす
「み・つ・き…」「あ、お帰り。ちゃんと持って帰って来たわね。関心…関心…」
「何もこんな硬い物をぶつける必要…」「じゃぁこれの方が良かった?」
水月は机の上に白い玉を転がす
「いえ…結構です…」「そうでしょ。さ、帰りましょ」「え!?」「『え!?』じゃないわよ!もう、放課後よ…」
ゆっくりと教室を見渡すと、誰も居なかった
まったく…気が付かなかった
「琴乃宮さんも帰るんでしょ?」「は、はい…」
琴乃宮さんは俺の後ろに隠れながら、少しおびえた様子で水月をみる
「あの…」「どうしたの?」「雪にぶつけませんか?」
何を俺の後ろで聞いてるんですか…?
「そんなことしないわよ。するのは、これと孝之くらいよ!」
俺は、これ扱いですか?水月さん…
「そんなことより、帰りましょ」「そうだな…」「はい…」
「私こっちだから。またね!」「おう!」「さようなら…」「きちんと送って行なさいよ!」「判ってるよ!」
水月は手を振りながら行ってしまう
「さて、家はどっち?」「あっちです」
ん…?俺の家の方だなー。あのあたりに空家あったかな〜?ま、いっか
「それじゃぁ、行こうか…」「はい!あ、それと…雪のことは、『雪』とお呼び下さい」
何だ…突然?
「判ったよ。雪さん…」
この時は知る由もなかった。雪さんと同姓することを…
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