「ねえ、髪切ったら?」「まだ、大丈夫だって!」
自身満々で言う。水月はしらーっと俺を見る。
「もしかして…髪を切りに行くお金が無いとか?」
ギク!
「そんなわけないだろ…」「ふ〜、それもそうよね」
水月はそう言いながら、ジーと俺のことを見る。
「な、何だよ…」「もしかして…怖いの?」「え!? 何が?」「鋏が!」
ガン!
「あのな〜! そんな馬鹿なオチは必要ないって…」「それもそうね!」
水月は何度か頷く。水月は何か閃いたように手を叩く。
「何か思いついたか?」「私が切ってあげる!」「は〜?」「散髪代もうくし、一石二鳥じゃない!」
何を思いついたかと思えば、そんなことかよ
水月は鼻歌を歌いながら、せこせこと準備をする。
「水月さん…? 今まで経験はあるんですか?」「もちろん! 永遠の髪も切った事あるわよ」
永遠…?
ついこの前みた、永遠の髪型を思い出しす。
「やっぱり…散髪に行って来るわ〜!」
そう言って出かけようとした時、水月に肩を掴まれる。
「も〜、遠慮しなくても良いのよー」
水月は鋏を動かしながら言う。
ひぇ〜! 誰か助け〜!
「さ、始めましょう!」
水月はそう言って、俺を引っ張って連れて行く。
「お客様。どのような髪型がご希望ですか?」「聞いたって、できないんだろ?」
「何よー! せっかく、感じだそうと思って、聞いてあげたのにー」
「で、本当にやるのか?」「もちろん!」
水月はキッパリと答える。
「さ、始めるわよー!」
神様…どうか、無事に終わりますように。
チョキ!チョキ!
「どう?」
水月は手鏡を持って来て聞く。
「まあ、合格点じゃないか?」「本当!」「まさか、見えない所を失敗したとか、無いだろうな〜?」
「え! そんな事は全然ないわよ…」
やっぱり、何かやったな。
「もう一つ鏡を持って来てくれないか?」「はい!」
水月から鏡を受け取り、合わせ鏡で後ろ頭を見る。
「な! 何だこれ〜!」
水月は、そーとその場から逃げようとしていた。
「水月〜!」「キャ! あははは…ちょっと失敗しちゃった…」
水月はペロっと舌をだしながら笑う。
「これの何処が、ちょっとなんだ〜!」
後ろ頭を水月に見せながら指差す。
「でも、可愛いわよ…」「可愛いだ〜!」「何を騒いでるんですか? うわ!」
「茜? どうしたの? 可愛いトラさんカットだね」
「水月にされたんだよー! 水月にな〜!」
そう言いながら水月を睨みつける。その後、水月を鋏を持って追いかけまわす。
「ねえ、可愛いよねー?」「お姉ちゃん…そんな問題じゃあないと思うんだけど…」
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