「そういえば…もうすっかり、卒業のシーズンなんだな〜」「そういえば、私達の卒業式って…」
水月は横に座り、暗い顔をする。そんな水月の頭をポンと叩いてにかっと笑う。
それを見て水月は優しく微笑む。
そうだよな、俺達の卒業式に涼宮は居なかった…それは紛れもない事実だ。
「なあ。もし卒業式に涼宮が居たら、こんな感じだったと思うんだ」「え、どんなの?」
水月は興味津々で聞いてくる。
「だろう?」「そうね」「水月〜!」
水月と話をしていると、涼宮が駆け込んで来る。
「ちょ、ちょっと…落ち着いて。いったい何があったの?」「あのね…これ…」
涼宮は一つの封筒を見せる。
「その封筒って…アレだろ? 卒業式でみんなの前で読む…」「うん…」
「もしかして、遙が読むの!?」「うん…」
まあ、当然と言えば…当然かもな。
「水月が読むよりかは、涼宮の方が…」
ギュー!
「イテテテ…」「それはわる〜ございましたね〜! え〜!」「それにね…」「まだ何かあるの?」
「うん…皆の代表で証書を受け取るのも…」「遙…」「大変だな〜」
「水月にみんなの前で、緊張しない方法を教えて欲しいの…」「え!? 何で私の?」
水月は、驚きの表情で涼宮を見る。
「だって、水月は大会とかですごい記録をだしてるでしょ?」「まあね…」「たんに鈍いだけだったりして…」
ドス!
「ぐぉ…」「悪かったわねー! 鈍くて…」「何か方法があるんだったら、教えて欲しいの…」
「私は別に何もしてないわよ。無我夢中っていうのかしら、一生懸命にやれば緊張なんてしないわよ」
「やっぱり、鈍いんだな」
ゴリ!
「がはぁ!」「少し黙ってて!」「はい…」「そうなんだ〜。私に出来るかなー?」
「うーん…遙には難しいかもね…」
水月は苦笑いを浮かべる。
「遙! いい方法があるわ!」「え!? 本当?」「これなら遙にピッタリ!」
水月は自信満々で言う。『本当に大丈夫か?』と言いかけたが、それを飲み込んだ。
「良い…遙?」「う、うん!」
涼宮は真剣な顔で頷く。
「まず最初に…」
卒業式当日…
式は順調に進み、卒業証書の受け渡しになる。
『なあ、涼宮…大丈夫なのか?』『大丈夫よ。絶対に成功するわ』
水月は自信満々に言う。
本当に大丈夫なのか?
涼宮は階段をゆっくりと上がって行き、最後の一段で足を滑らして、頭をぶつける。
涼宮は、すぐに立ち上がって校長の前に行く。校長は心配そうに涼宮を見る。
無事に証書を受け取り、階段を下りて戻ってくる。
『やっぱり、無理だろう。掌に人を三回書いて飲み込むなんて…』『そうみたいね…』
水月は苦笑いを浮かべる。その後は何事も無く、式を終了する。
「こんな感じになりそうだろ?」「そうね。でも、遙が聞いたら怒るわよ〜」
「そうだな…」「う〜そうだよー。私をそんな風に見てたの?」「え!?」
慌てて振り返ると、そこには涼宮が立っていた。
「これは…例え話で…な〜水月…」「さてね。私は何も知らないわよ!」「お、おい…」
「自分で蒔いた種でしょ。自分で処理しなさい!」
水月はそう言って何処かに行く。その後、涼宮に事の次第を説明をした。
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