「さてと、出かけるか〜!」「何処かに行かれんですか?」「花見の場所取にな…」
雪さんは不思議そうに首を傾げる。
「水月に言われる前に、行っとこうと思ってな」「そうなんですか…」「何処かに行くの?」
「ん? 花見の場所取に決まってるだろ?」「あ、今年は良いわ」「え!? 毎年、俺を脅して…」
スパン!
「誰が…脅してるって〜! えー!」「すみませんでした…冗談です…」「誰に頼んだんですか?」
「それは秘密よ」「どうせ、脅して…」「病院に行きたい? それとも…死にたいのかしら?」
水月は指を鳴らしながら近づいて来る。
「水月…落ち着け…冗談だ。判るだろ? ギャー!」
「お! いい場所が開いてるぜ…」「お! 本当だ。あそこにしようぜ」
「うがあああぁぁぁ…!」「うわ〜! な、何だ…」「他を探しなさい。もうここは予約済みよ!」
「なんだよ! このガキが!」「ガキ…」「こんな煩いガキなんてほっとこうぜ!」「そうだな!」
「うがあああぁぁぁ…! 誰がガキじゃ〜! ボケ〜! コンクリはかせて、東京湾に沈めるぞー!」
「ひ〜!」「助けて〜!」「はん! 私から場所をとろうなんて千年速いわよ!」
いててて…水月の奴、本気で殴りやがって…死ぬかと思ったぜ。ん? あそこに居るのは…確か
「こんな所で何をしてんだ? また勉強をサボってるのか?」「違うわ! ボケ〜!」
「じゃあ…何をしてんだ?」「はん! お前には関係ないさ!」「そうか、じゃあな!」
そう言って歩きだしすと、ズボンを引っ張られる。
まったく、素直じゃないんだからな…。
「何だ? 頼みごとか?」
彩は黙って頷く。
「なら言ってみろ。聞いてやるから」「家の母親…何処に言った知らない?」
「居ないのか?」
彩は頷く。
なるほどな…あゆに行かせたわけか〜。でもどうやってだ?
「知ってるの?」「心配要らないって、明日には帰ってくるって」
そう言って彩の頭をポンと叩いて笑う。
夕食を終えて…
「そういえば、花見って明日だよなー?」「そうよ!」「何時から行ってんだ? 場所取」
「昼位からかしら?」「ひ、昼から!」
「うん! 大丈夫よ。核弾頭だもん、風邪なんてひかないわよ。それに、快く引き受けてくれたしね」
「どうせ…また、御剣財閥の名前使ったろう?」
それを聞いて水月はドキッとする。
「やっぱりな、そんなこったろうと思ったぜ! あの大空寺がそう簡単に引き受けるわけないのもんな〜」
「結果として、行かなくて済んだんだから良いじゃない…」「それも…そうだな」
ポリポリ…
翌日…
「え!? みなもが風邪をひいたって…」「そうなんです…」「有難う。ちょっと行ってくる」
子供部屋に行き、中に入る。
「調子はどうだ?」「うん…今は薬を飲んだから、楽になったてる」「そうか…」
「ごめんなさい。私のせいでお花見行けなくなちゃった…」
みなもは申し訳なさそうな顔をする。そんなみなもの額に手を置いて笑う。
「元気なったら、一緒に行こうな。お花見」「うん!」「約束だ。それじゃあ、おやすみ…」
みなもにそっと布団をかけてやり、手を握る。
「寝るまで側に居るから」「うん!」
みなもはゆっくりと目を閉じる。しばらくして、寝息が聞こえて来たのを確認して、手を離そうとする。
ん? お、おい! 水月の時と同じオチかよ…誰か〜助けて〜!
結局、みなもが目を覚ますまで、その場に居る事になった。
「ばくしょん! ちくしょうめ〜! あ〜さむ…それにしても、あいつら何時になったら来るのさ?」
大空寺が中止になった事を知るのは、翌日のことであった…
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