| ふー、疲れたなー。
 「お疲れさまです。どうぞ」
 
 雪さんからコップに入った麦茶を受け取って飲み始める。
 
 「それにしても…すごいよな〜」「そうですね。あの真那様まで…」
 
 まあ、水月はこの家の一番の権力者だからな。金庫番でもあるし…勝てる奴なんていないな…絶対に。
 
 「コラー! サボるなー!」「やべ! 見つかった…」
 
 ピュー!
 
 「あ、コラ…待てー!」
 
 
 キョロキョロ…
 
 何とか、まいたようだな。
 
 トントン…
 
 後ろから肩を叩かれ、小さく飛び上がる。ゆっくりと、後ろを振り返ると雪さんが立っていた。
 
 「何だ〜、雪さんか…脅かさないでくれよ…」「すみません…雪はそのようなつもりでは…」
 
 「気にしなくてもいいよ」「そうですか?」「うん!」
 
 雪さんはホッと肩を撫で下ろす。
 
 「ここで何をしてるんだ?」「こちらの方に行くのが見えたので…」
 
 「何だ、そうか…俺はてっきり水月に頼まれて、俺を連れ戻しに来たのかと思ったぜ!」「え!?」
 
 雪さんは驚いた顔で俺を見る。
 
 「まさか…」「はい…」
 
 雪さんはすばやく俺を蓑虫の状態にする。当然、立っていられずにその場に倒れこむ。
 
 「ごめんなさい…」「ふーん、こんな所にいたんだ〜」「み、水月!」
 
 ヘコヘコと動きながら逃げようとする。ロープの先を水月に踏まれる。
 
 「何処に…行こうって言うのかしら〜? え〜!」「いや…あの…その」「良いからいらっしゃい!」
 
 水月はロープの端を持って歩きだす。
 
 「サボったぶん! 確り働いて貰うから!」「許して〜!」
 
 ズリズリ…
 
 
 「だは〜! 終わったぞ…」
 
 会場設営を終えて倒れこむ。
 
 いくらサボったからって、残りを一人でやらせるか…普通。
 
 「お疲れ様」「お疲れ様でした。はい、お絞りです」「サンキュー」
 
 雪さんからお絞りを受け取って顔をふく。
 
 「どうぞ…」「お、悪いな」「いいえ…」
 
 今度はコップに入った麦茶を渡してくれる。
 
 「残るは、主役が帰って来るのを待つだけだな」「そうね。じゃあ、今から打ち合わせるわ」
 |