「孝之く〜ん、はやく〜!」
丘の上にから、ゆっくりと登って来る孝之君に声をかける。やっと孝之君も登って来て、二人で街を見下ろす。
「ここの景色は、変わらないな〜」「そうだね。あ、でも少しビルとか変わってるよ!」
「それはそうだよな。時間もたってるもんな」「そうね…」
手を広げたまま、クルリと2回転たあと、笑顔で孝之君の方を見る。
「孝之君…覚えてる?」「ここで遙に告白され、俺が告白した場所だろ?」「うん!」
大きく頷く。
「孝之君…」「ん? 今度は何だ?」「今日が何の日か覚えてる?」「遙の誕生日だろ?」
孝之君は、真面目な顔で言う。
「それは…そうだけど。もっと、他にあるよ…」「他に…」
孝之君は于組をして考え始める。
覚えてるよね? 今日が何の日か…。
「そうか! 今日は…」「何の日?」「見たいテレビがあったんだ!」「う〜、もう良いよ…」
孝之君に背を向ける。すると、孝之君は私を後ろからやさしく抱きしめ、耳元で囁く。
「悪かったよ。今日は…俺達の…結婚記念日だよな」
顔をボッと紅くする。孝之君はゆっくりと離れる。
「コホン! 鳴海孝之は、鳴海遙を妻とし一生涯愛する事を誓います!」
孝之君はそう大声で叫ぶ。
「鳴海遙は、鳴海孝之を夫とし一生涯愛する事を誓います!」
孝之君の真似をして、大声で叫ぶ。お互いの顔を見つめあい、笑いだす。
「孝之君…」「遙…」
ゆっくりとお互いの距離を縮めて行く。そして、またキスをする。
「孝之君…」「ん?」「あれ…しよ…」
孝之君は頷き、私の手に自分の手を絡める。
「夜空に星が瞬くように…」「溶けた心は…離れない…」『たとえ…この手が離れても…』
お互いの目を見詰め合って頷く。
『それを忘れぬ…かぎり…』
そして、またキスをする。
茂み座り、空を眺めながら孝之君が言う。
「遙…」「なあに?」「その孝之君っての止めないか?」「え!? どうして? やっぱり嫌だった?」
「別に…そうじゃないけど、俺達は…なんだ…夫婦なんだし…」
孝之君は顔を紅くしながら、頬をポリポリと掻く
「じゃあ…孝之さん…」
孝之君はドキっとした顔をする。
「ダメかな〜?」「よし! それでいこう!」
そう言って立ち上がる孝之君の顔はさらに紅かくなっていた。
『ただいま〜』
あれ? 誰も居ないのかな〜? 電気も消えてるし…
「どこかに出かけてるのか?」「でも、もうこんな時間だよ?」
孝之君に腕時計を見せる。時計は6時を指している。
「待ってれば、いずれ帰ってくるって」「そうだね」「俺ちょっと…」
孝之君はトイレの方に歩いて行く。仕方が無いので一人でリビングに行く。
リビングの戸を開けた時…
パンパン…!『お誕生日! おめでとう!』
「え? え?」
訳がわからず、キョロキョロと辺りを見渡す。
「驚いたか?」
振り返ると孝之が立っていた。
「悪かったな、涼宮…準備のために孝之に頼んで、連れ出してもらったんだ」「遙、はい…」
水月からプレゼント受け取る。
「有難う…」「最後は俺だな。ほい、芋きんつば!」
バコ!ドス!
「何を考えてるのよ!」「かるい…冗談だ…本当はこれだ」「有難う…」「次は私よ」
今度は茜、次に雪さんといった順番に皆からプレゼントを受け取る。
「皆…有難う…」
思わず泣き出す。
「さ、遙様。蝋燭の炎を」「はい…」「遙、持てってやるよ」
孝之君にプレゼントを渡す。ケーキの所に歩いて行く時に躓き、ケーキに顔から突っ込む。
『ぷ…ぶははは…』「遙…何やってるのよー。あははは…」「まったく、涼宮らしいな…あははは…」
「期待を裏切らないのが…お姉ちゃんらしい…あははは…」「ふぇーん。皆…笑いすぎ〜」
う〜、何でこうなるの…
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