| 「こんな風にするのって、ずいぶんと久しぶりね…」「そうだな…」
 今日は、水月に耳掻きしてもらっている。他の皆は出かけていて居ない。
 
 「どう? 気持ちいい?」「ああ、とっても…」
 
 日差しが気持ちよさと、水月の膝枕のせいでついうとうとしてしまう。
 
 「寝ても良いわよ」
 
 水月はやさしく微笑む。
 
 「そうか…それじゃあ、少しだけ…」「おやすみ…」
 
 ゆっくりと目を閉じる。
 
 
 こうして見下ろすのって、どれくらいぶりかしら…。あの日以来よね…
 
 
 「風が気持ち良いな」「そうね…」
 
 風が私の髪をもてあそぶ。私の膝の上で横になっている彼を見る。
 
 夏が過ぎて、秋の気持ちいい日。あの丘の上で彼とこうして過ごしている。
 
 「ここから見える景色も、冬になると変わるんだよな」「そうね。綺麗でしょうね」
 
 「そうだな。だけど、水月は困るよな」「え、どうして?」「泳げないから…」
 
 彼は悪戯ぽく笑う。
 
 「どうして、そう思うの?」「泳がないと、太るだろ!」
 
 彼の額にデコピンを食らわせる。
 
 「冗談だって…本気にするなよ…」「今度言ったら、頭が無くなるわよ!」
 
 悪戯ぽく笑いながら言う。彼は少し考える。
 
 「俺が悪かった…」「判れば良いのよ!」
 
 うんうんと頷く。気持ちのいい風がふく。
 
 「本当に今日の風は、気持ち良いわね」「そうだな。このまま眠りそうだな」
 
 「良いわよ。寝ても…」「え!」
 
 彼は驚いて起き上がる。それを見て再度、同じ事を言う。
 
 「良いわよ。寝ても…」「それじゃあ…少しだけ…」
 
 彼は顔を赤くしながら、私の膝の上に横になる。そんな彼を見下ろしながら呟く。
 
 「おやすみ…」
 
 彼の寝顔を眺める。何も警戒していない無邪気な寝顔がそこにある。
 
 本当に気持ち良さそうに寝てるわね。
 
 その寝顔を眺めていると、心臓がドキドキする。彼を起こさないように、ゆっくりと口を近づける。
 
 もう少しの所で彼が目を開けたので、慌てて顔をあげる。彼は何が不思議そうな顔をしする。
 
 「お、おはよう…」「ん? どうしたんだ? 顔が赤いぞ…」「な、何でも無いわよ…」
 
 「…?」
 
 彼は時計を見るて立ち上がる。
 
 「さて、帰るか」「そうね…」
 
 
 膝の上には、昔と変わらない寝顔がある。時計を見てみると、3時をさしていた。
 
 もうこんな時間…子供達が帰って来るわね。
 
 そっと彼をゆすって起こす。
 
 「ん…?」「子供達が帰ってくる時間だから…」「もうそんな時間か?」
 
 彼は時計を見る。
 
 「仕方が無いな」「この続きは、また今度ね」
 
 そう言ってにこやかに笑う。
 
 「ただいま〜! おやつ何〜?」「ほら、先に手を洗ってからよ!」『は〜い』
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