秋の味覚
廊下を歩いていると、雪さんが庭で何かしているのが目に入る。

何をしてるんだ?

廊下の窓を開けて雪さんに声をかける。

「雪さ〜ん!」

雪さんは驚いて、こっちをみる。

「何をしてるんだ?」「あ、落ち葉を集めていたんですよ」

落ち葉を…? 何のためだ?

一階に下りて、雪さんの所に行く。

「落ち葉なんて集めて、何をしようっていうんだ?」「お庭が汚れていましたので、それで…」

庭を見渡すと、確かに落ち葉が沢山散らばっていた。

「何か御用でしょうか?」「え、あ、別に用って訳じゃないんだけどな…何をしているのかな〜って思ってな」

「そうなんですか…」

雪さんはそう言うと、また落ち葉を集めだす。しばらく、その光景を眺める。

茶でも入れてくるかー。

台所に行って、お茶を入れてくる。

「雪さん、一息つかない?」「え、あ、そうですね…」

雪さんに麦茶の入ったコップを差し出す。

「お疲れ様。俺も手伝おうか?」「駄目です!雪の仕事を取らないで下さい!」

そういえば、何度もこの言葉を聞いたっけ…雪さんらしい言葉だよな。

そんなことを考えながら、ふっと笑う。

「どうかなされたんですか?」「いや、なんでもない…」

そう言って麦茶を飲む。雪さんは空になったコップを置いて、また落ち葉を集めはじめる。

落ち葉が集まり、小さな山が出来上がる。

結構あったんだな。あれだけの量を一人で集めたんだよな…大変だったろうな。

雪さんは新聞紙を取り出して、それに火をつける。新聞紙の火は、落ち葉に燃え移る。

雪さんはそれを確認して、俺のところにやって来る。

「水が無いみたいだけど…」「水は必要ありませんから」「え? でも…消す時に…」

雪さんは何も言わず、ただにっこりと笑った。

しばらく、雪さんと一緒に燃える落ち葉を眺める。

火が消えると、雪さんはそこへ歩いてい行き、何かを落ち葉の中から取り出す。

「美味しいそうに焼けてますよ」

雪さんはそう言いながら振り返る。その手には焼き芋があった。

「焼き芋か〜!」

雪さんは芋を半分にし、片方を俺に差し出す。

「有難う…アチチチ…」「美味しい…」

雪さんは一口食べて笑う。

「そうだな…はむはむ…」

雪さんは俺の横に来て座る。

「あの…」「ん? はに?」

芋を頬張りながら聞く。

「また、雪のことを雪さんって呼んでます…」「あ、そうだった? ごめんな…」

「雪は…そんなつもりで言ったのでは…」「間違えた俺が悪いんだ。ごめんな…雪」

そうだよな、俺と雪は一緒になったんだよな。だから、呼び方も雪さんから雪にしたんだよな。

まったく、馬鹿だよな。こんなことを忘れるなんて…。

芋を食べ終わった後、雪をそっと自分の方に引き寄せる。

雪はそのまま体を俺に預ける。その顔は赤かった

ーENDー



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