「ほい、お返し。まずはみなも。次は恵。そして真琴」
子供達にお返しを渡す。子供達は嬉しそうに飛び跳ねる。
涼宮のおかげで助かったよな。子供達が何を欲しがっているか、さっぱり判らないからな。
「はい、バレンタインのお返し」「有難う御座います」
茜ちゃんは嬉しそうに受け取る。
「開けてもいいですか?」
黙って頷く。茜ちゃんはなんだろうって顔をしながら開ける。
「人形…」「やっぱり…茜ちゃんには、似合わないか〜」「それって、嫌味ですか…」
茜ちゃんはスポーツバックを構える。
「で、そう思っているんだったら、何でこれなんですか?」「それは…金が無くって…」
茜ちゃんはムッとした顔をしたあとで、ため息をつく。
「もう、仕方が無いですね。でも、来年は期待してますから」「あ、ああ…」
覚えていれば…だけど。
「涼宮、ちょっといいか?」「え、なに?」「はい、バレンタインのお返し」「わー、有難う」
涼宮は受け取り、にっこりと笑う。
「俺は孝之じゃないか、何が良いかわからなかったから…」「ううん、嬉しいよ。有難う」
涼宮の笑顔を見て笑う。
「大空寺…ほれ!」
大空寺に向かって投げる。
「うが!あにするさ!」「お返しだ!じゃあな…」「待つさ…有難う…」
大空寺は顔を赤くし、照れくさそうに言う。それを聞いて窓の外を眺める。
「大空寺が礼を言うなんて、こりゃあ…明日は猛吹雪だな!」「うがあああぁぁぁ…お前なんか猫のうんこ踏め!」
コンコン…
「はーい、どなたですか?」「俺です…」「あ、少々お待ち下さい」
しばらくして雪さんはドアを開けてくれる。
「何でしょうか?」「はいこれ。お返し…」「有難う御座います…雪はとても嬉しいです…」
雪さんは泣き始める。
「泣くほどじゃあ…」「すいません。嬉しくて…」
そんな雪さんを見て、ヤレヤレと頭を掻く。
「開けても良いですか?」「ああ…」
雪さんは開けてみて、そのまま固まる。
「雪さんってそんなに服を持ってないだろ? だから、雪さんに似合いそうな物を見つけたから…」
雪さんはしばらくその服を眺め、俺に抱きついて耳元で涙声で言う。
「有難う御座います。雪は…すごく嬉しいです…」
雪さんの頭をそっとなでる。そして、雪さんと一緒に中に入り、後ろを向く。
雪さんに肩を叩かれてゆっくりと振り返る。
「どうですか…」
雪さんは顔を赤くしながら聞いてくる。黙ったまま、雪さんを眺める。
「あの…そんなに見られると…雪は…」「あ、ごめん。あまりにも似合ってるから…つい見とれて…」
雪さんはさらに顔を赤くする。
「そんな、お世辞でも嬉しいです…」「お世辞なんかじゃないって、本当にそう思ったんだ」
それを聞いて雪さんは、倒れそうなくらいに顔を赤くする。
「それじゃ、俺はこれで…」「はい、これ有難う御座います」
雪さんは最後にくるりと一回転する。
「水月…」「え、何?」
髪を梳かしている水月が振り返る。水月にあの時に買った人形を渡す。
「これって…」「あの時に欲しがってたろ? だから、これにしたんだ」「でも…これ…」
水月は人形を見つめた後で俺の方を見る。
「これは高かったでしょ?」「まあな…でも、水月の喜ぶ顔が見たかったらな…」
顔を赤くしながら頬をポリポリとかく。水月はまた人形を眺め、俺の方を見つめる。
「もしかして…欲しくなかったのか?」「ううん。そうじゃないけど…嬉しくて…」
水月はそっと人形を撫でる。
「これ…大切にするね…」
それを聞いてふっと笑う。
「ねえ…」「ん? どうした?」
水月は俺に抱きついてくる。踏ん張ることも出来ずにベットに倒れこむ。
そして、水月は俺にキスをする。その後、二人だけの夜を過ごした。
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