ノートを見ながら電卓を操作する。
やっぱりこれだとギリギリか〜。今回、貰ったチョコの数は…10個。
「あ〜、どうしたらいいんだー!」
頭を抱えながら叫ぶ。
「どうかなされたんですか?」
雪さんが心配そうに俺のことを見ている。
「これだよ」
ノートを指差す。
「失礼します」
雪さんはノートを手にとって見る。
「それが今回貰った人だよ」「沢山の人に頂いたんですね」「そのおかげで、破産寸前になってるけどな」
苦笑いを浮かべる。
「そうですか…」「まあ、仕方が無いことだけどな。貰った以上はお返しは、するのは常識だから」
「雪は要りませんから」「え!」
雪さんの発言に驚く。
「雪は、あなた様と一緒に居られるだけで十分です…」
雪さんの目に、うっすらと涙が溜まっていることに気がつく。
「雪さん…」「すいませんでした。へんなことを言ってしまって…」
「大丈夫さ。雪さんにもきちんとあげるよ」「ですから雪は…」
雪さんの口に人差し指をあてる。
「これは俺の礼儀だ。だから、その時は受け取ってくれるよな?」「はい、喜んで」
雪さんは笑顔でそう答える。
えっと…これで何個目だ? 一つ、二つ…先はながいな。
空になった容器と未開封の容器を見比べ、溜息をつく。
「そんなに食べたら、鼻血が出るわよ」「そうだな…だけど、食べない訳にはいかないだろ?」
「それはそうだけど…あ!」
水月は何かを思いついたように手を打つ。
「ねえ、これ貰ってもいい?」「ん? 別にいいけど。これだけの量を一人で食べれないしな」
「じゃあ、貰うわね」
水月は貰ったチョコを持って台所へと消えて行く。
これで少しは楽になったな。それにしても、いったい何に使うんだろうな? ん?チョコを…?
その時あることが頭を過ぎる。
たしか、前に何かで聞いたことがある、カレーにチョコを入れると。まさか!
慌てて立ち上がり、台所へ向かう。
「水月!」「え、何?」
振り返って水月の後ろに、カレーの入った鍋が火にかけてあった。
遅かった…。
「どうしたの?」「いや…もういい…」
それだけ言うと台所を後にする。夕食にだされたのは言うまでもない
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