家に帰ると、子供達が走って俺のところにやってきた。
「おかえり〜、はい!」「どうぞ」「あげるね」
子供達からチョコを受け取る。
「ありがとうな」
そう言いながらにっこりと笑う。子供達はそれを見て嬉しそうに奥に消えて行く。
「ただいま〜」
そう言いながら居間に入る。それに茜ちゃんが気が付き、そばにやって来る。
「どうぞ」「ありがとう」
茜ちゃんからも受け取り、部屋に入って机の上にチョコを置いて、着替えをする。
コンコン…
「はい〜?」
ドアが開き涼宮が入ってくる。
「あのね…自信が無いんだけど…」
涼宮は恥ずかしそうに、箱を俺の前に差し出す。
「ありがとうな。これって、手作りか?」「うん…でもね、何度も失敗しちゃって…」「ふーん…」
箱を開け、一つ取り出して口に入れる。
「うん!美味いよこれ!」「え、本当!」「ああ…本当だ!」「これで安心して孝之君にあげれる」
涼宮は万年の笑みで部屋から出て行く。
まさか…俺は実験台…だったのか?
夕食を終えて一息ついていると、大空寺がやって来る。
「ほら、お前にやるさ!」「お、ありがとう…」
大空寺から貰えるとは思っていなかったので、驚きの表情で箱を眺める。
「ホワイトデーは、贅沢は言わなさ。ダイヤの一つや二つでいいさ」
それを聞いて箱を投げる。大空寺は慌てて落下地点に走って行ってキャッチする。
「あにするんじゃい!ボケ〜!」「誰が、そんな物を要求されてまで貰うかって言うんだ!え〜!」
「うがあああぁぁぁ…!泣いて頼んでも絶対に…」「誰が泣いて頼むか」「お前なんか、猫のうんこ踏め〜!」
大空寺はそう叫んで、何処かに行ってしまう。
ちょっと、悪いことしたかな〜。あとで誤っとくか〜。
頭をポリポリと掻く。
部屋に居ると、ドアが少し開く。水月はすばやく中に入ってくる。
呆れ顔でその光景を見る。
「何…やってんだ…?」「え!ううん。別に何でも…」
水月は顔を赤くながら誤魔化す。
「はい、これ」
水月は、一つの箱を俺に差し出す。箱を受け取ると、水月がじーっと俺の事を見てくる。
「何だよ?」「え、あ、別に…そうだ!お風呂に入らないと!」
水月はそう言って、部屋から出て行く。箱を開けて、一つ口に運ぼうとした時にある視線に気が付く。
そのままの格好で、そっとドアの方を見る。ドアが少し開いていて、誰かが中を覗いている。
覗いているのは、水月だとすぐに判った。
まったく、そんなに心配なのか? 自分が作った物だろ、少しは自信を持てよな…まったく。
ポイっとひとかけらを口に放り込む。
「うわ!まず〜こんなも食えたもんじゃない!」「何ですって〜!」「やっぱり、覗いてたのはお前か」
「あ…」「何が心配で覗いてたかは、だいたい想像はつくがな…」
そういったあとで、ひとかけらを口に放り込む。
「やっぱり、美味いや。最高だな!」「え、だって…さっき…不味いって…」
「バーカ、あれは冗談だよ。まったく、自分が作ったものだろ?」「うん…」
「だったら、少しは自信をもてよ。それに、俺が水月の作ったのを不味いって言うと思うか?」
水月は少し間を置いて首を横にふる。水月のそばに歩いて行き、そっと水月の方に手を置く。
水月は俺の顔をじっと見つめ、静かに水月の顔に近づけてキスをした。その時のキスはチョコの味だった。
「これは、チョコのお礼な」
水月は顔を真っ赤にして下を向く。部屋から出ると、そこには雪だるま方のチョコが置いてあった。
あ、雪さんかー。
そのチョコを持ち上げて、雪さんの部屋へと向かった。
「雪さん、ちょっといいかなー?」『はい…』
ドアがゆっくりと開く
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