「お帰り〜」「ただいま…」「ねえ、この前のお願いなんだけど…」「悪い、無理っぽい…」
そう言って、さっさと部屋へと入り、ベットに倒れこむ。
あ〜、疲れたー。そういえば、今日は節分か〜。たしか、先週の日曜日…。
「ねえ、今度の節分の時…」「嫌だ!」「何よ!まだ何も言ってないでしょ!」「聞かなくても判る!」
水月のふくれた顔を見ながら言う。
「どうせ、鬼をやってくれとでも、いうつもりだろ?」
水月は半歩後ろ下がる。どうやら、図星だったらしい。
「だいたい、なんで俺が。孝之も居るだろう?」「孝之は駄目なのよ」「どうして?」
「孝之は、スカテンの方を頼まれてるのよ」「俺より鬼に適任の奴が居るじゃないかー」「え? 誰?」
黙って水月を指差す。
「え! 私? そうね。私だったら適任かも知れないわねって言うわけないでしょう!」
水月に睨まれる。
「どうして、そう思ったのかしら? その訳を聞かせてもらいましょうか…!」
「やらせてもらいます」「宜しい!」
こんな感じで、無理やりやる事に決まったんだったな。だけど…何だか頭が重い。
「大丈夫?」
水月が心配そうに覗き込む。
「駄目かも…」「そう、薬でも飲む?」「ああ…」
ゆっくりと頷き、体を起こして座る。水月から体温計を受け取って脇に挟む。
「はい。お水と薬」「有難う…」
水月から水が入ったコップと薬を受け取って飲む。
「うーん…熱は無いみたいね」「そうか…」「でも、ゆっくりと寝た方が良いわね」
ベットに横になる。
「きっと、疲れが溜まってたのよ。最近、頑張ってたしね」「そうだな…」
水月は俺のそばに座り、そっと手を握る。
「今日の鬼は無理ね」「あはは…そうだな…」「あの〜。御粥をお持ちしましけど…」
「あ、有難う。そこに置いといて」「判りました。大丈夫ですか?」
雪さんが心配そうな顔をする。
「大丈夫だって。一日こうして寝れば、治るって…」「そうですか。何かありましたら、雪に言って下さい」
「ああ…そうするよ」「失礼します」
そう言って雪さんは部屋から出て行く。水月に御粥を食べさせてもらい、少し眠る。
「風邪ですか〜」「そうなのよ」
コーヒーをすする。
「水月先輩も大変ですね」「そんな事は、全然無いわよ。好きな人だから…」「大好きな人ですね」
「ま、まあね…」
顔を赤くしながら、コーヒーをすする。
「やっぱり、疲れでしょうかねー?」「そうだと思うわよ」「休みなしで働いてましたからね」
「そうなのよ。だから、今はそっとしといてあげましょ」「判りました」
ゆっくりと目を開けると、水月が俺の手を握ったまま眠っていた。
それを見てフッと笑い、そっと毛布をかけてあげて、また目を閉じる。
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