「起きて下さい! 水月先輩はもう行きましたよ」
茜ちゃんの声で目を覚ます。
ん? 何で体が動かないんだ? 気のせいだな。そうに違いない!
また体を動かそうとするが、まったくと言っていいほど動かない。
何でだ? 何で体が動かないんだ?
ゆっくりと下のほうを見ると、何故か縛られていた。
「うわ〜!」「どうしたんですか?」「どうしたも、こうしたも無い!何だ、これは!」
「あ、それですか!」
茜ちゃんはニッコリと笑いながら頷く。
「それは水月先輩に頼まれたんです」「はあ…水月に?」「はい! 2時間位前のことです…」
「茜〜、居る?」「あ、はい。何ですか?」「茜に頼みたいことがあるのよー」「私に頼みたいことですか?」
「そう!これは…茜にしか出来ない事だから!」「私にしか…できないこと…」
思わず生唾を飲み込む。
「頼みたい事って言うのは…」「はい…」「まずは…はい、これ」
水月先輩からロープを渡される。
え、ロープ…? 何でこんな物…?
「それで、彼を縛って欲しいの!」「彼って…あ!もしかして…水月先輩」
ニヤっと笑いながら水月先輩を見ると、顔を赤くしながら否定する。
「だ、黙って彼を連れて来てくれれば良いのよ!」「ベットにですか?」「茜…あの世ってどんな所かしら?」
「わ、判りました。絶対に連れて行きます!」「お願いね」
「ってことがあったんです」「へー、そうなのか〜」「だから、黙って来て下さい!」「嫌だ!」
「どうしてですか?」「俺はこんな事をされなくても、行くつもりだったんだ!」「本当ですか?」
茜ちゃんは、ずいっと俺の前に顔をだす。
「あ、ああ…」「そうですか…」
茜ちゃんはホッと肩を撫で下ろす。ゆっくりと俺の方に歩いて来る。
「早く行かないと始まっちゃいますよ! 急ぎましょう!」
茜ちゃんはそう言って、縛られた俺を車へと連れて行く。
「頼むから〜、ほどいてくれ〜!」
結局、そのまま会場に連れて来られた。
「今日は勝つと思いますか?」「買ってもらわないと…体がもたん…」「あ、あははは…確かにそうですね」
「あのさ〜、これほどいてくれない?」「駄目です!逃げるつもりですね!だったら、絶対に…」
「誰も逃げたりしないって。この格好ってかなり恥ずかしいんだぞ!」
茜ちゃんは辺りを見渡し、顔を赤くしながらほどいてくれる。
「ふ〜、助かったー。何か買って来ようか?」「結構です! ここに持参した物がありますから!」
茜ちゃんの側に包みと水筒が置いてあった。
「そうなんだ…」「はい。何か食べますか? 全部、雪さんの手作りですよ」
そういえば、朝は何も食べてないからなー。
「じゃあ、少しだけ」「どうぞ…」
それから少して、大会が始まる。司会は、前回の人とまったく同じだった。
「ほふつき〜!ふぁいんがれ〜!」「飲み込んで言って下さい!」
ゴックン!
「水月〜!頑張れ〜!」
そして大会は始まる。水月は特訓の成果なのか、かなりの調子良くこなして行く。
「この調子なら、優勝もいただきだな」「それは…あまい考えてみたいですよ…」「え?」
茜ちゃんは黙って指さす。そこでは、この世の出来事だと信じがたい光景があった。
な、なんだ…アレは? 本当に人間か?
運ばれてくるカレーを次々に平らげて行く。もちろん、水月が太刀打ち出るはずも無く…見事に負けた。
「あんなのが出てるんだったら、仕方が無いよな」「そ、そうですね。でも、人間なんでしょうかね?」
「たぶん…人間だろう」
茜ちゃんとそんな会話をしている時、またロープで縛られる。
「さ〜、帰って特訓のやり直しよう!」「頑張って下さい…」
茜ちゃんは、苦笑いを浮かべながら手を振る。
「と、特訓だと!今回はしても無駄だと…いやしない方…」「何をブツブツ言ってるの? 徹底的にやるわよ〜!」
「誰か〜…助けて…くれ〜」
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