日常
何時ものように雪さんに起こされて、雪さん手作りの朝食を一緒に食べる。

ピンポーン…。

「は〜い」

雪さんは箸を置いて、パタパタと玄関に向かって歩いて行き、しばらくして戻って来る。

「水月様がお迎えに来てますけど…」

それを聞き、時計を見る。

ま、まずい!

朝食を口に放り込み、大急ぎで部屋に戻って着替えをし、鞄を持って玄関に行く。

そこでは、水月が呆れ顔で立って居た。

「もー、何をやってるのよ〜? 雪さん、ちゃんと起こしたの?」「え、あ…それが…」

水月の問い掛けに、雪さんは顔を下に向ける。水月はそれを見て、ため息をつく。

「仕方が無いわね。それより、急がないと遅刻よ」「そうだな! 雪さん行って来ます」

大急ぎで家から飛び出し、学校に向かって走り出す。



「ふへー…ギリギリセーフ…」「よ!今日も夫婦揃って登校か?」「バーカ…そんなじゃねーよ!」

「ちょっと…孝之! 今の言葉、聞き捨てなら無いわね〜」「そうか? クラス中の噂だぞ」

「どんな噂なの?」「それは…速瀬達が一番よく判るはずだぞ?」

水月と顔を見合わせる。

「お前らー、とっくにホームルームは始まってるんだぞ〜。早く席に着け!」

ホームルームが終わり、孝之の所に行ってさっきの事を聞く。

「ん? さっきの事か?」「どんな噂なんだ?」「気になってね…」

孝之はプッと笑いだす。

「あのな『お前らが付き合ってるんじゃないか』って噂になってるんだ」

それを聞いた俺と水月は、ボッと顔を赤くする。

「お!その反応は、まんざら嘘じゃないのか〜」「ぜ、絶対に違う!ご、誤解だ!」「そ、そうよ!」

「はいはい…そうって事にしといてやるよ。それより、次の時間は教室移動だぞ。行こうぜ」

孝之は教材を持って、さっさと教室から出て行く。

「あ、待ちなさいよー」

俺と水月も教材を持って教室を出る。



鞄から雪さんの手作り弁当を探すが見つからない。

急いで出て来たから、忘れて来たんだ! ど、どうしよ〜。

「どうした?」「弁当を忘れてきた…」「それはお気の毒に…」

孝之は上手そうにパンを食べる。

「それは、俺に対するあてつけか?」「それは違う。モグモグ…」「はい」

水月は一つの弁当箱を俺の机の上に置く。

「お!愛妻弁当か?」「孝之…それ以上言うと、本気でぶっ飛ばすわよ!」

水月は拳を握り締め、孝之のほうに向ける。

「ところで…これは?」「雪さんから預かったのよ。お昼に渡してくれってね」「そうなのか〜。ありがとな」

早速、開けて食べ始める。さすが、雪さんの手作りだけあって凄く美味しい。

「俺は…」「何もやらんぞ!」「何だよ、けちだな〜」「けちで結構!」「卵焼きいただき〜!」

「あ、コラ!勝手に…返せ!」「夫婦喧嘩は他所でやってくれよ」「誰が夫婦ですってー! 一回死んで来〜い!」

水月の幻の右が孝之に決り、外まで吹っ飛ばされる。窓の所に行き、下を覗きながら声をかける。

「孝之…生きてるか〜?」「大丈夫よ。これくらいで死んだりしないわ」「やった本人が言うな、本人が…」


「ふへー…やっと終わったー」

授業が終わり机にへたれていると、水月が俺の所にやって来る。

「さ、帰りましょ」「そうだな」

鞄に荷物を詰めて、教室から出る。

「ねー、知ってる?」「ん? どうした?」「明日、英語のテストだって」「な、何〜!」

「知らなかったかの? 居眠りでもしてたんでしょう」「頼む!教えてくれ!」

水月はため息を付き、鞄から参考書を取り出す。

「あれ?」「どうしたの?」「無いんだよ」「だから何が?」「参考書が…」「え!」

鞄を逆さまにして振ってみるが出て来なかった。

「もしかしたら、学校じゃない?」「そうだな。取りに行ってくる」

学校に向かって走り出す。


さすがに放課後の校舎は、静まり返って不気味である。外ではクラブ活動が行われいる。

教室に行き、机から参考書を取り出して鞄に入れる。

教室から出る時、誰かにぶつかった。

「あいててて…」

目の前に尻餅を着いた女の子が居た。

「ごめんな…」「いいえ、私こそ…」「怪我は無いかい?」「はい、大丈夫です」

女の子はにっこりと笑う。

「そうか、なら良いけど…」「あの〜、こんな時間に何をしてたんですか?」「俺?」

女の子は頷く。

「俺は参考書を取りに来たんだ。君は?」「私は、委員会の仕事で、これを倉庫に運んでたんです」

その子が指差した先に、数個のダンボールが散らばっていた。

「ま、まさか。高い物は入ってないよな〜」「それはご安心下さい」「よし!俺が運んでやるよ」

「え、そんな…悪いです…」「良いって、これを運べば良いんだな」「はい…お願いします」

「任せろって」

ダンボールを抱えて、女な子と一緒に倉庫に向かう。その途中で色々と話をした。

彼女の名は『涼宮 遙』だった。

倉庫の前に来て、ダンボールを降ろす。

「有難う御座いました。後は…」「これを何処に運べ良いんだ」「あそこに…」「了解!」

その後、涼宮と判れて家に帰る

ーENDー



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