「雪さん!そっちお願い!」「はい!任せて下さい」「茜!」「判ってます!」
新年になると恒例の福袋を買いに来ている。俺はベンチに座り、その光景を眺める。
「それにしても、よく粘るなー」「そうだね」「あそこまでして、欲しいのかね〜?」「きっとそうだよ」
「ところで、涼宮は買わないのか?」「私は、買ったから」
涼宮はニッコリと笑いながら、二つの袋を俺に見せる。
いったい、何時の間に…。あの状態だと、とても無理だろうし。
「水月先輩!ゲットできました!」「さすがね!」「私もゲットできました」「それじゃ、本腰入れていくわよ!」
「はい!」「判りました!」
結局、この三人が福袋のほとんど買い占めたのは、言うまでも無い。
「は〜、疲れた〜」「さすがに…これは疲れますね」「そうですね…」
3人は、買い占めた福袋と一緒に玄関に倒れこむ。
まったく、そんなになるまで頑張るか…普通。
「お、遙。お帰り」「孝之君、ただいま」「何だ水月、そんな所に倒れて〜もう歳だな〜」
孝之のその言葉に、水月の触覚がピクと反応する。
「誰が、歳ですってー!」「うわ!落ち着け…水月…」「待て〜!」
水月は、逃げる孝之を追いかける。俺はそれを見て苦笑いを浮かべる。
「ところで、どんなの買ったんだ?」
転がっている福袋を持ち上げながら聞いてみる。
「それは、必要なのもです」
茜ちゃんが立ち上がりながら言う。
「それはそうだろ…普通な。俺が聞きたいのは…」「お洋服等ですよ」
何時の間にか、メイド服に着替えた雪さんが答える。
「ふーん、そうなのか。涼宮は何を…って居ない!いったい何処に…」「きっと、自分の部屋です」
「部屋で何を…」「きっと、今日の収穫分を選別しに行ったんですよ」
「これはいる、これはいらないって感じか?」「多分、そうです」
なるほどな。それしても、素早いな。
「孝之!何処に行ったの!」「まだやってたのか?」「当然よ!私のことを年寄りって言ったのよ!」
「まんざら、嘘でもないかも…」
俺の発言に水月はギロっと睨む。それを見て、惚けたた顔をしながら頬を掻く。
「それくらいで許してやれよ。孝之だって悪気が…あったかも…な」
そう言ってポリポリと掻く。結局、孝之は捕まりってツリー用の気に吊るされたらしい。
スカ!
「ほら、顔だせ」「タケルちゃん、強すぎ」「お前が弱いだけだ!」「武、このような時は…」
「そうだよ!こんな時は、女の子に花を持たせるのが普通だよ!」「それは、相手が女だったら…だろ?」
「う、うん…」「だったら、純夏は違うな!」「どうして?」「だって、純夏は男だからな!」
ガーン…。
「あれ、違ったのか?」「武、それは言いすぎではないか?」「そうだよ!タケルちゃんの…馬鹿〜!」
「馬鹿って言った奴が馬鹿なんだぞ!」「武、それくらいでやめておけ。鏡もだ」
「ブ〜!ブ〜!」「仕方が無い、私が鏡の変わりにやってやろう」
「冥夜さん、タケルちゃんなんかに、手加減なんか必要ないからね」「では、尋常に参る!」
テレビを見ていると、トコトコと俺の前に永遠がやって来て笑う。
「テレビが見えないだろ」
何を貰いに来たかは、一目瞭然だった。
「そこを退かないと、やらんぞ」「え!あ!」
それを聞いた、永遠は慌てて飛びのく。そして、俺の方をジーと見る。
「お前が欲しいのは、これか?」「うん、それ!」
小さな袋を取り出して、目の前で揺らす。すると永遠は尻尾を振って喜ぶ。
「ほれ!」
ポーンと投げると、飛び上がりキャッチする。そして、中身を確かめだす。
は〜…さすがに、きついよな〜。五千円は…水月は追加はくれないだろうし、どうやって過ごそう…今月。
今度は、服をクイクイと引っ張られる。振り返ると三人娘がにこやかに笑う。
ため息をついて、三つの小袋を取り出して、一人一人に渡して行く。
だが、どう考えてもおかしいのが混ざっている。
「おい!大空寺…何をやってる…」「見れば判るでしょ!」
ふにゅ
「あいだだだだ…」「何で、俺がお前にお年玉をあげるんだ〜!え〜!」
横に大きく引っ張る。
「はなへ〜!ほけ〜!」
しばらく引っ張って離す。
「お前にはこれで十分だ!」
玉を取り出し落とす。
「あん? 何なのさ?」「お年玉だ!受け取れ!」
「うがあああぁぁぁぁ…!ふざけるな〜!さっさとよこしやがれ〜こんちきしょがー!」
「お前には一銭もくれてやらん!」「そんな、酷いです…私にあんなことやこんなことをしたのに…」
「何時!俺が!お前に!あんなことやこんなことをしたんだ? え〜!嘘も対外にしとけよ!」
大空寺と睨み合う。大空寺はふてくされて、何処かに行く。
まったく、何を考えてるんだよ。ん? 何だあれ?
目の前を見るからにウール100%の物が通る。目をこすり、再度見てみるが見間違いではなかった。
な、何だ?! あれって、羊だよな〜。なんで、二足歩行してんだ?
唖然と眺めている間に、その羊は何処かに行ってしまう。
「武、これくらい止めておかぬか?」「タケルちゃんの顔、真黒だもんね」「お前が人のこと言えるのか?」
「私は、タケルちゃんよりましだもん!」「なら、こうしてやる!」「きゃ!止めてよ」
ペタ…。
「あ!」「あっ…委員長…」「ちょっと良いかしら? 何で私が墨を塗られるのか、説明して頂戴!」
「ぜ、全部。タケルちゃんが悪いんだよ」「そうよね。鏡さんがそんなことさせるわけ無いわよねー」
「ちょ、ちょっと待て!俺はだなー…」「問答無用!」
「鏡、あの者は何処からラクロスのラケットを何処から出したのだ?」「……謎だね」「本当だね…」
「白銀!待て〜!」
「雪さん」「はい、何でしょうか?」「さっき変な物を見たんだけど」「変な物ですか?」「そう!」
雪さんにさっき見た物を説明する。すると、雪さんはニッコリと微笑む。
「それは、雪です」「はい?」「お正月ですから」「は〜…」「ですから、羊さんの格好をしてみたんです」
「そう…なんですか…」「はい!」
そんな笑顔されたら、追求する気も無くなるぞ。まったく、正月そうそう何だかな〜。
「あ、ちょうど良い所に居た」「ん? 何だ?」「ちょっと外に出て欲しいんだけど」「何でまた?」
「良いから!」
俺は、水月に引っ張られながら外へと出る。
「いったい何をするんだ?」「写真よ!写真」「写真?」「そ、皆で撮るのよ」「何で?」
その返しに水月はむっとする。
「並んで〜」「うわ〜!」「写真をとるまでは判ったが、なんでカメラマンが涼宮なんだ?」
「やりたいってきかなかったのよー。でも、大丈夫よ。セルフタイマーだから」
俺はそれが一番、心配なんだが…。押すまでは良いとしても、こっちに来る間に転んでそれがそのまま…
「どうしたの? うかない顔して?」「何だか、物凄く嫌な予感がしてな…」
水月は不思議そうに首を傾げる。
「撮るね〜!」
涼宮は、セルフタイマーを押して、こっちに走って来る。そして、俺の予想は現実の物となのであった。
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