この前、撮った写真をテーブルに置き、水月の方を見る。
「あの〜…水月さん…」「どうしたの?」
水月は不思議そうな顔で俺を見る。
「ちょっと相談が…」「お小遣いの追加は、一切!受け付けません!」
ガーン…。よ、読まれてる。
「でもさ、今月はお年玉とか…」「それはそれ!これはこれよ!」
そ、そんな〜。
「大体、月初めにあげた中から出しても、十分にやって行けるはずよ」「それは…」
「でしょ? 第一、余分なお金を渡したら何に使うか…」「俺は子供か〜!」「あれ、違うの?」
水月は驚いた顔をする。
「いいよ…どうせ…どうせ…」
部屋の隅でいじける。
「水月先輩…あれ、どうしたんですか?」「お小遣いの追加くれって言うのよ」「あげないんですか?」
「もちろん!」「私はあげても良いと思いますよ」
その言葉に反応し、素早く茜ちゃんの手を取る。
「そうだよねー、少しくらいだったらいいよねー」「あ、はい…」
茜ちゃんは困った顔をする。俺はゆっくりと水月の方に振りかる。
「あげないわよ!」
水月は呆れた顔できっぱりと言う。それを聞いた俺は床に頭をぶつける。
「何をしても、追加は認めないわよ!」
水月はそう言って、何処かへ行ってしまう。俺は床に手をついて絶望する。その時、肩をやさしく叩かれる。
「どうかしたんですか?」
顔を上げると、雪さんが心配そうな顔でこちらを見ていた。雪さんに事情を説明する。
「でしたら、雪にお任せ下さい」
ドンと胸を叩き、そのまま何処かに行ってしまう。
いったい、何をしに行ったんだ?
「ね〜永遠」「ん〜?」「この前の約束、覚えてるわよねー?」
それを聞いた永遠は、そとくさと逃げ出す。
「あ、待て〜!」「待てと言われて、待つ奴が居るか〜!馬鹿〜!」
ふ〜ん。そんなこと言うんだ。だったら、こっちにも考えがあるわよ。
「あのこと、ばらされても良いんだー」
それを聞いた永遠の動きはぴたっと止まる。錆付いたロボットのように、ゆっくりこっちを見る。
「ま、まさか…あのことか?」「さてね、何のことかしらねえ。忘れてないと思うけど、こっちには…」
「すいませんでした!どうか、内密に!」
永遠は私の前でペコペコと頭を下げる。こんな時、相手の弱みをたくさん握っていると楽である。
「まこちゃん。どうしたの?」「あ、みなも。ちょうど良い所に」「ん?」「永遠がね〜、お年玉でね…」
そっと耳うちをする。
「え〜!そんな…」「大丈夫よ。ねー永遠〜」
不適に笑いながら永遠の方を見る。それを見た永遠は顔を青くする。
「皆で何をしてるの?」「あのね。永遠が何でも好きな物を、好きなだけ買ってくれるって!」
「な、何〜!」「あら、嫌なのかしら?」「うぐぐぐぐ…」
は〜…今月は、これだけで過ごさないといけないのか〜。
財布を見ながらため息を付く。
さすがにきついよな〜、この残金は…。仕方が無いかもな、この家の経理は、水月が仕切ってるからなー。
「本当に無いのねー」「どわ〜!み、水月〜!」「何よ、バケモノでも見たみたいに…」
「バケモノだけどな…」「何か言った?」
水月はギロっと睨みつける。
「いいのよ…私は、要らないんでしょ。これ」
水月は5万円を俺の前にちらつかせる。それを取ろうとするが、軽々と避けられる。
「これをあげても良いわよ!」「え、マジで!」「そう。でも、条件があるわ!」「条件?」「そう…」
水月はニッコリと笑う。その時の笑顔は、悪魔の微笑みに見えた。そして、コトとあるものが置かれる。
「特訓に付き合ってくれたら…」「やります!ぜひ、やらせて下さい」
これで5万って安いような…でも…これはさすがに。今はそんな事を考えてる時じゃない!やるぞー!
「で、何でまた特訓なんだ?」「これよ、これ」
水月は一枚のチラシをテーブルに置く。
「なになに…カレーの大食い…」「そう!今度は絶対に負けないんだから!」
水月は燃え上がる。
「でも、あの人が出て来るって決まった…」「ここよ!前回、優勝者に挑戦って書いてあるでしょ!」
「そうだな。でも、前回の優勝が…」「前回の優勝者も同じ人なのよ」
もしかして…調べたのか? 普通…そこまでするかー。
「だからこれは、私のリベンジなのよ!だからお願いね」「でも、本当にくれるのか?」
水月の持っている、5万を指差す。水月はため息を付く。
「いい、これは優勝賞金なの!」「な、何〜!」「だから、私に勝ったらあげるわ」「さっきと話が…」
「始めるわよ!」「2人とも準備はいい?」「涼宮。いったい何処から?」「始め!」
|