目の前にある、大きな注連飾りを呆然と眺めている。そこには、雪さんが引っ付いている。
「雪さん…また何かやったんですか?」「雪は何もしていません…」
ならなんで、そこに居るんだよ。また、水月の機嫌でも損ねることしたんだろうな…きっと。
「何もしなくて、そんな所に居るのは可笑しいだろ?」「ですが、雪はただ…」「ただ…何?」
雪さんはポッと顔を赤くする。
いったい…何をしたんだ? とりあえず、降ろしてやるかー。
雪さんを降ろして、初詣に行く支度をするように言う。しばらくして、後ろから水月が声をかけて来る。
「ごめんね。遅くなっちゃって」「それは別にいいけど…」「それじゃ、行きましょうか!」
「あ、ちょっと待った。茜ちゃん達も行くんだろ?」「うん、そうよ」「だったら、一緒にさ〜」
水月は少し考えて頷き、皆を呼びに行く。しばらくして、皆が出てくる。
やっぱり、雪さんの着物姿はいいな〜。でも、茜ちゃんも捨てがたい。
デレ〜っと見ていると、水月に耳を引っ張られる。
「ほら、さっさと行くわよ!」「あいててて…判ったよ」
「うわ〜。やっぱり込み合ってますね〜」「さすが、考えることは同じなんですね」
俺達は、凄い人込みの見て驚く。
「さっさと終わらして、帰りましょ」「そうですね」「はい、判りました」「子供達はどうするんだ?」
「それは、お兄ちゃんに任せます!」「お、俺にか!?」「それじゃ、行くわよ!」
人込みを掻き分け、何とか賽銭箱の所にたどり着き、賽銭を入れて手を合わせる。
その後は、お決まりのおみくじを引きにいく。すると、そこにはどこかで見た人影あった。
ん? あそこに居るのは。
「あ、遙じゃない」「あ、水月〜。それに、茜と雪さん」「お姉ちゃん、1人なの?」「孝之様は?」
「うん、さっきまで一緒だったんだけど、はぐれちゃって」
涼宮は照れくさそうに笑いながら、頬をポリポリと掻く。
「じゃ〜、俺達と一緒に居るか?」「そうね、その方が安心ね」「うん、そうだね」「じゃ、引いてみるか」
早速、おみくじを引いてみる。
「ねー、何だったの〜?」「俺か? 俺は中吉だ。水月は何だったんだ?」「私は、吉よ」
「わ〜、私も吉ですよ」「あ。私は、末吉です」「で、お姉ちゃんは?」「え、私は大吉…」
さすが、涼宮だな。見事に大吉を引き当てるとは。
子供達も、恵ちゃんが大吉を引き当てていた。
「お姉ちゃん、知ってる?」「え、何?」「大吉はねー、落ちるだけなんだよ」「え〜!」
「茜、あんまり遙をからかわないの!」「はい〜」「ねえ、今のって…嘘だよねー?」
涼宮は、おどおどしながら俺に聞いてくる。
俺に聞かれてもな〜。第一、俺もそんなこと聞いたことあるし〜。
「大丈夫よ。遙の強運は今に始まったことじゃ無いでしょ」「そうですね」「それは言えてるかもな」
涼宮はそれを聞いて、凄く複雑そうな表情をする。おみくじを結び付けて、お守りなどを買いに行く。
そこには、金髪のツインテールと猫の髪飾りをした巫女さんが居た。
「いらっしゃいま…うがぁ、あんでいんのさ!」「それはこっちの台詞だ!何でそんな格好をしてんだ?」
「はん!あんたには、関係ないさ!」「それはですね、先輩が…うぐうぐ…」
大空寺は慌てて、玉野さんの口を抑える。
「まさか、すかいてんぷるが休みだからって、それに乗じて巫女さんのバイトしてるんじゃー」
大空寺は小さく飛び上がる。
「そ、そんな事無いさ…」「あからさまに動揺してる奴が何を言う」「う、うっさいわ!ボケ〜!さっさと買えや!」
「心配するな。このことは、店長には黙っててやるよ。感謝しな」「はん!これは、健さんから頼まれたのさ」
「せ、先輩…自分でばらしてます〜」「うがぁ!」
馬鹿だ。こいつは大馬鹿者だ。
「あ、鳩が居るよ」「わ〜、本当だ〜」「餌、あげてもいい?」
ジーと俺のことを見つめる、みなもと恵ちゃん。餌を買ってやると、2人は嬉しそうに鳩の所に行く。
「わ〜、鳩さんがいっぱい」「お姉ちゃん、絶対に行ったら駄目だからね。前例があるんだから…」
涼宮は、茜ちゃんに釘をさす。
「うー…。もう大丈夫だよー。私だって、同じことは二度としないかもん!」「なら、あれはどう説明するの?」
茜ちゃんの指差した先で、恵ちゃんに鳩が群がっていた。何故か、みなもも巻き添えをくっていた。
「助けに行って下さい!」「ほら、さっさと行く〜!」
水月と茜ちゃんは、そう言って俺をその中に放り込む。
家に帰り、水月に手当てをしてもらう。
「あいててて…」「これくらい、我慢しないさいよ。男でしょ!」「痛いものは、痛いんだ!」
「そう!だったら、やめる?」
水月は勝ち誇ったような顔で俺を見る。
「こんな中途半端な状態でやめるのか?」「だったら、文句を言わないこと!」「判りました…」
手当てを終えて、水月が俺の横に座る。
「今日は…、有難うね」「なかば…強引だったけどな…」「だから、こうしてお礼を言ってるでしょ!」
水月は照れくさそうに言う。そんな水月は凄く可愛く見える。
「ねー、それより」「ん?」「お守りとかは?」「あ〜!」「もしかして…忘れたの?」
「あははは…」「そうなの? そうなのね…」「今から、行って来るから」「さっさと行かないと、打つわよ!」
水月は、自分の頭の毛に力をため始める。
「ま、待て。今から行ってくるから」
薄暗い部屋の中で、三枚の写真をじっと見つめる。
「去年は駄目だったけど、今度はうまく行くわよね」
不適に微笑みを浮かべながら、一枚ずつテーブルの上に置いて行く。
「最初は、孝之ちゃん。そして、次は武ちゃん。そして最後は…2人と一緒に暮らしてる…ふふふふ……」
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