280,000HIT記念品
ソファーに座って漫画を読んでいると、呼び鈴が鳴る。あたりを見回したが、誰も居なかった。

仕方がないので、玄関へ行き応対をして戻る時、物置から何やら物音がする。



「物置から、何か音がしたって?」「うん!永遠がそう言ってた」「何かが落ちたんだろー」

「でも、ドアに体当たりするような音だって…」「なら、確かめればいいだろ!」

みなもとそんな会話をしていると、後ろからため息が聞こえてきた。

「それが出来れば、わざわざ話しませんよー。ねー」「うん」「まったく、そんなことも判らないの?」

「悪かったなー」「ほら、さっさと行って確かめてくる」「俺が!」「当たり前でしょ!」

「そうですよー。まさか、か弱い私達に行けとでも言うんですか?」「誰がか弱いって?」

「遺書は書いてある?」「早く行った方が、身のためですよ」

二人は、ボキボキと指を鳴らしながら、じりじりと近づいてくる。急いで、みなもと一緒に物置に行く。


そっと、物置のドアノブにてをかける。みなもの方を見て小さく頷き、モップを構える。

開けようとした時、雪さんに止められる。

「何をなさってるんですか?」「いや、この中に泥棒が居るかもって」「先ほど開けましたけど、普通でしたよ」

「そうなんですか?」「はい」「でも、永遠が物音を聞いたって」「それは、何かが落ちたのでしょう」

雪さんがそうだって言うんだったら、間違いは無いだろうなー。


「ねー、永遠」「何だよ?」「物音を聞いたって、本当?」「何だよ、俺が嘘を言って言うのか?」

「そうじゃないけど…」「だったら何だよ!」「雪さんがね…」

さっきのことを永遠に説明する。

「何も無いかった?」「うん、雪さんはそう言ってたよ」「でもなー、間違いなく聞いたぞ」

「だったら、今から確かめに行く?」「そうだな。論より証拠だ」

二人で物置の所に行き、そっとドアを開ける。


鈴蘭ちゃんは元気よく、水月の作ったクッキーを食べている。

「これ美味しい」「ありがとう。沢山あるから遠慮しないでね」「もう少したら、雪さんも来るからな」

「おかわり!」「はいはい…」

雪さんに、こんな知り合いが居たのかー。しばらくして、雪さんがやってくる。

「あ、雪ちゃん!」「雪さんの知り合いなんでしょ?」「え!は、はい…」

ん? 何だ、今の同様は?

「ちょっと待ったー!」「その雪さんは、偽者よ!」「何言ってんだー。雪さんに本物も偽者もあるわけ…」

みなもと永遠の方を向くと、そこにはもう一人の雪さんが居た。

雪さん…。こっちにも雪さん、あっちにも雪さん。いったいどうなってるんだー!

「その人は、私の偽者です」「何だって!」「違います。私が本当の雪です」

「同じ人が二人、良くある展開ね」「それは無いと思うぞ」「そうかしら?」

何か、確かめる方法は無いかなー?

ふと、鈴蘭ちゃんが目に入る。 そうだ!これで、ハッキリとするはずだ!


「それでは、本当の雪はどっちだの時間が…あいた!」「馬鹿な事を言ってないで、早くやる!」

「はいはい…。雪さん、紙とペンは持ってますね?」『はい、こちらに』

その時、水月に突っつかれる。

『何だよー?』『これから、いったい何をするの?』『それは見てのお楽しみだ!』

水月はぶーとふくれる。

「この子の名前を、漢字で書いて下さい!」

鈴蘭ちゃんを二人の前に出す。一方は困ったようで、もう一方はスラスラと書き始める。

「雪ちゃんなら、判るよね。ボクの名前」「あ、当たり前すよ」「忘れるはずがありませんよ」

そして、二人に書いた物を見せてもらい、鈴蘭ちゃんに判定してもらう。

これで、ハッキリするはずだ。どっちが偽者か。

案の定、一人は書けていたが、もう一人は書けていなかった。そして、不適に笑い始める。

「まさか、こんなことるとは思っていませんでした」「何が目的だ!」「目的は一つですわ」

「一つ?」「ええ、タケルちゃんを取り返す!ただそれだけですわ」

白銀を取り返す? 何を言ってるんだ?

「あなたね、三人をあんなにしたのも!」「そうよ。だって、邪魔するんだから」

「だからって、やって良い事と悪い事があるだろう」「そうですね。今日の所は、素直に負けを認めます」

今日の所は?

「私は、タケルちゃん必ず取り返します。それまで、タケルちゃんを宜しく」

マナマナはそう言うと、眩しい光を放つ。目を開けていられず、目を閉じる。

目を開けた時は、マナマナは居なかった。

「今の、なんだったの?」「俺にもさっぱりだ」「白銀が狙いだって」「取り返すとも言ってたなー」


「へー、そんな事があったのかー」「でも、穂村さんがそんなことするなんて…」

「まー、歪んだ愛情表現ってやつだな」「なんだかすごく怖いね」「そうだな。まー、遙がそうなることは無いよな」

「それはそうだろう。あるとすれば家の方だよ」

いい終わりと同時に、水月の突き刺す視線に気がつき、冷や汗をかきながら苦笑いをする。

「また来るのかなー?」「だろうな、最後にそんなこと言ってたし」「そうなんだ…」

「こんな話は、これくらいにしましょう」「そうだな」「そうだね」

ちょうどその時、雪さんがティーセットと手作りのクッキーを持ってきてくれる。

「本物ですよねー?」「え!それは…」

後ろからスパンと水月に叩かれる。

「馬鹿な事を言わない!」「あいてててて…。軽い冗談だろ」「馬鹿を言うのは自由だが、なくなるぞー」

「何〜!」「ほれ、半分も無いぞー」「お前は〜、少し残すとか考えないのかー?」「食べたのは俺じゃない!」

「なら、誰なんだよー」

孝之は、自分の横に居る涼宮を指差す。涼宮は、美味しそうに食べながら不思議そうな顔をする。

おいおい…どこに入るんだよー。あれだけの量のクッキー。

何とか、食べることに成功した。

「やっぱり、雪さんのクッキーは最高だなー」「そうだな。これ食べてると、他のは不味くて食えないな」

「そうでしょうね!どうせ、私が作るのは不味くて食べれないでしょうね!」「孝之く〜ん。あの時のは、嘘だったの?」

「違うんだ遙。これは、もののたとえなんだ。なー」「そ、そうだぞ!好きな人が作ってくれる物が不味いわけ…」

「でしたら、雪のは美味しくないのですね」「雪さんのは、べつだよー。なー」「そうそう…」

あっちを立てれば、こちらが立たない。あー!自分でどんどんどつぼにはなっていく。

これから一週間近く、口さえも聞いてもらえず。三人にジーと見られ続けた。

俺達が悪かったから、もう許して〜…。

290,000HIT記念に続く

おまけ

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