幼児化!? |
いつものように起きる。だが何か違うような気がするが、それが何のかはハッキリとしない。 部屋の中にある鏡の前を通った時、信じられない物を目にした。 水月は俺の頬を引っ張ったり、持ち上げたりといろいろなことをしている。 「何で、そんなに小さくなったの?」「俺が知るか!」「何か、変な物でも食べてんじゃないの?」 「昨日、食べたもの…あ!」「何か思いあたることがあるの?」「饅頭だ!」「はい?」 「戸棚を見たら、上手そうな饅頭があったんだ。我慢できずについな」「あんただったのね!」 俺って、すごく不味いこと言ったかも…。 「アレはねー!私が楽しみに取っておいたのよー!」「最初はおかしいな〜って思ったんだぞ…」 「そうでしょうね!でも、食べたのよねー?」 黙って頷く。すると水月は、俺の頬をおもいっきり引っ張る。 「ひたい…ひたい…ひたいです…水月さん」 水月は、ため息をついてパッと離してくれる。 「まー、いいわ。食べちゃった物は帰ってこないしね」「だったら、最初から引っ張るなよ…幼児虐待だー」 頬を摩りながら、そうポツリと呟く。 「今、何か言ったのはこの口かー!」「ひたい…ごめんなはい…ほういいまへん」 呼び鈴がなったおかげで、開放される。頬を摩りがら玄関に行ってみると、茜ちゃんが居た。 「あれ? その子なんですか?」「あ、これ」「もしかして、二人の愛の結晶ですか?」 「ば、馬鹿なこと言わないでよー!」「たしかにな、馬鹿なことだよな」 そう言ってうんうんと頷く。茜ちゃんは、その光景を不思議そうなで見ている。 「なんだー、そうだったんですかー。そうなら、そうって言ってくださいよー」 「人の話も聞かなかったのは、どこのどいつだよ」 そう言うと、茜ちゃんに頬を引っ張られる。 「茜、あんまりいじめたらだめよ」「判ってます」 そう言うとはなしてくれる。頬を摩っていると、俺の前にジュースが置かれる。 黙ってそれを指差すと、水月がニッコリと笑い 「子供には、コーヒーはまだ早いでしょ!」「そうですね」 『俺は子供じゃないぞ!』と言うと思ったが、あえてそれを飲み込んだ。 「要するに。中身はそのままで、体が幼児化したんですね」「そうだ!」「だったら、鳴海さんと一緒ですね」 「孝之もなってるの?」「はい」「何で、茜ちゃんがそんなこと知ってるんだ?」「何でって言われても…」 喜んでいいのだろうか? まー、俺だけでないってことが判っただけでも、よしとしよう。 しばらくして、呼び鈴がなったので玄関に向かう。 「遙、いらっしゃい」「お邪魔します。ねー、その子どうしたの?」 兄弟そろって、同じ質問ですか。 ん? 涼宮が抱かれて、寝ているのは…孝之! 「詳しい話は中でしましょ」「うん」 「それにしても、チビ孝之って可愛いわねー」「どうせ、俺は可愛くないですよー!」 「そんなこと無いよ、十分に可愛いよ」 涼宮の同情が丸見えの言葉が重く圧し掛かる。 「これから、どうします?」「そうねー。しばらくはこのままじゃないかしら?」 「そうなんだー。でも、それでもいいよねー」「何で、俺の方を見るんだよ」 しばらくこのまま、それは非常に困るんだが…。 ちらりと孝之の方を見る、無邪気に寝息を立ている。 孝之は、このままの方がいいかもな。 「水月先輩」「何?」「シャワー借りてもいいですか?」「いいわよ」「お借りします」 茜ちゃんは、そう言うと俺を持ち上げる。 「さー、行きましょうか〜」「ちょっと待った!」「何ですか?」「何で俺まで?」 茜ちゃんは無言で歩き出す。水月に助けを求めるも、軽く手を振られた。 俺の服を脱がして、自分の服を脱ぎ始める。そーと逃げ出そうとするが、見事に捕まる。 「どこに行くんですか?」「やっぱり、これはまずいと思うし…」「水月先輩とは入れて、私とはだめなんですか? 「駄目!」「そうですか…」 茜ちゃんは、下を向く。何か悪いこと言ったかな〜? 「茜ちゃん…」「……」「今日は…」「いいんですね!」 パッと明るい顔になり、そのまま俺を連れ込む。また、はめられたー! シャワーを済ませて、二人が居る所に逃げ帰る。 「あ、お帰り」「孝之は、まだ寝てるのか?」「うん。なんだかすごく疲れてるみたい」 「見て判るのか?」「うん。だいたいわね」「そうなんだー」 ちらりと水月の方を見る。きっと、俺は気がついてもらえないだろうなー。 結局、元にもどるったのは、これから一週間後のことだった |
ーENDー |