270,000HIT記念品
気が付くと、ジーと水月が俺の顔を見ていた。

「ねー、聞いてるの?」「え? 何が?」「やっぱり、聞いて無かったのね」「ごめん…」

水月は、は〜とため息をつく。そして、俺の腕を引っ張りながら歩き出す。

「どこに行くんだよ?」「どこって、遙の所に行くんでしょ?」「え、涼宮の所?」

水月は立ち止まり、ため息をつく。

「自分が言い出したんでしょ!」「え!俺が?」「自分で言った事くらい、覚えててよねー」

覚えが無いんですけど。ここは誤っとくか〜。

「悪かったよ…」「まーいいわ、ささっと行きましょう」

二人で、涼宮の教室に向かった。教室の前に行くと、孝之がうろうろしていた。その光景を見て、水月と顔を見合わせる。

「何やってんだ?」「さー? 孝之〜」

水月が声をかけると、孝之は急いでこっちにやって来る。

「何やってんだよー。ささっと入ればいいだろ?」「それが出来れば苦労はしない!」「さては、遙のウエイトレス姿を…」

「ば、馬鹿言うな!俺はだな…」「なるほどな。仕方がない、ここは俺達が一肌脱ごう」「だから〜…」

騒いでいる孝之を二人で引っ張りながら中に入る。

「いらっしゃいませ〜。あ、水月〜」「遙、がんばってる?」「よ!涼宮。これ、土産だ」

そう言いながら、孝之を前に突き出す。涼宮は恥ずかしそうに顔を赤くする。

二人は見詰め合ったまま、ピクリとも動かなかった。

「なー」「なに?」「この二人、どうする?」「このままにして置きましょう」「そうだな」

そっと水月と一緒に教室から出た。 ゆっくりと目を開ける。

すごく懐かしい夢だったなー。何で、今ごろになってこんな夢を見るんだ?

そんなことを考えながら部屋から出ると、メイド服の水月とばったり出くわす。

「あ、おはよう」「……」「どうしたの?」「いや、その服…」「あ、これ。雪さんに借りたのよ」

しばらく水月を眺めて、頭を叩く。

「何するのよー!」「茜ちゃんだろ〜」「な、何で判ったんですか?」「判らない方がおかしいだろ」

「まー、そうですね…」

茜ちゃんは一回転して、元に戻る。

「絶対に気がつかれない、自信あったんですよ」「俺を甘く見るな!」「よし、今度は鳴海さんだ!」

茜ちゃんは一回転して、涼宮の姿になる。その後、孝之の部屋へと消えていく。

あの〜、茜さん…なんでバニーなんですか?


あー、眠い…。昨日は散々だったよなー。夜遅くにいきなり電話はかかってくるは、香月先生の車には乗せられるは

昨日は、間違えなく最悪の夜だったな。

そんなことを考えていると、雪さんがコーヒーを出してくれる。

「あ、どうも」「昨日は、大変でしたね」「いきなり、白銀を迎えに来いって言うんですから」

「でも、何か訳があったんしょうね」「そうですね。でも、帰りは妹さんの車は…」「雪は仕事ありますの…」

雪さんはいつも用に、テキパキと仕事をこなしている。しばらくして、孝之が部屋から這い出してくる。

「大丈夫か?」「遙が…壊れた…」「バ〜カ、アレは茜ちゃんだ!」「え、そうなのか?」

普通は気がつくだろー。涼宮が、あんな大胆な格好をする訳…………あるかも。

まったく、なりきりにはまるのはいいけど、迷惑にならない程度にして欲しいよな。

そんなことを考えていると、孝之が『本当だよなー?』と言いながら、俺にまとわりついてくる。

「だ〜!うるさい!そんなに気になるんなら、本人に聞けよ!」

待てよ、肝心の涼宮はどこにいるんだ?

その時、あるものが目に入る。それは恵ちゃんが二人、一緒に芋きんつばを美味しそうに食べている。

まさかな…。でも、可能性はあるよなー。もしそうだとして、どっちだ?

その間も、孝之は俺にまとわりつく。

「そこに居るから、聞いてみろ!」

二人の恵ちゃんの方を指差すと、孝之はそこに行って何やら話をしている。

はー、何とか開放されたな。

ホッと落ち着いてコーヒーを飲んでいると、すごい剣幕の水月がやって来て、いきなり殴られた。

「あいてててて…俺が何をしたんだよー?」「自分の胸に聞いてみなさい!」

自分の胸に手をあててしばらく考えるが、思い当たるふしがあるはずも無い。

「何のことだか、さっぱり?」「あえて、しらを切るのね!」「ちょっと待て、俺は…」

「問答無用!」「俺が何をしたって言うんだ〜……キラン☆」



「ごめんね」「だから、もういいって。誰にでも、間違いはあるって」

さっきほどから、こんな会話を数十回繰り返す。そして、水月はシュンと落ち込んでしまう。

そんな水月の肩に手を置いて、水月の顔をじっと見る。

「俺はもう気にしてないから、そんな顔をするのはやめよう」

水月は小さく頷き、俺に抱きついてきた。この後、皆に冷かされたのは言うまでも無い。



雪は、そっと鏡と武が居る部屋を覗き、不適に微笑む。その足元には、縛られたもう一人の雪がいる。

音をたてないように、そっとドアを閉めた後で、雪を物置へと連れて行く。

「ごめんなさいね、あなたには何の恨みも無いけど、タケルちゃんのためなの」「う〜!う〜!」

不適に微笑みながら、物置のドアをそっと閉める。

280,000HIT記念に続く

おまけ

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