「やった〜!打ったわ〜」
水月は、テレビ前で嬉しそうに飛び跳ねる
何が嬉しいんだか…たかが、野球中継だろ
「いけ〜!打て〜!」
しかも…何で白黒の縞模様のはっぴまで着て…何があるんだ?
そんなことを考えていると、ちょうど雪さんが前を通り過ぎる
「え!?水月さんの…行動についてですか?」
うんうんと何度か頷く
「あれは、トラーズが優勝すればセールがあるからですよ」「セール…?」「はい」
なるほどな…セールね〜女は好きだもんな。セールが
「雪さんも期待してるのか?」「え!?ゆ、雪は…」
少しは期待してるってことだな…この反応は
「え!?」「何を驚いてんだ?」「だって…これ」
水月は机の上の物をじーと眺める
「言っとくが、偽物じゃないぞ。正真正銘の本物だからな!」「な、誰もそんなこと言ってないでしょ…」
「さっきの目は疑ってたぞ…」「う…」
ま、このチケットは地元の人間でも手に入れるのは困難だって聞くが…真那さんはどうやって手に入れたんだ?
考えるだけ無駄な気がするな
水月はすっとそのチケットを手に取る
「これ…貰っても良いの?」
チケットの所に持ちながら、目を輝かせながら聞いてくる
「良いに決まってるだろ。それは、水月のために用意したんだから」「有難う!」
水月は飛びついて来る。当然、そのまま後ろへと倒れる。水月はにっこりと笑い、頬にキスをしてくる
そして、ゆっくりと立ち上がり嬉しそうに飛び跳ねながら部屋へと消えて行く
「凄くお喜びですね」「そうだな…真那さんに無理言って手に入れて貰ったかいがあったよ…」
水月が観戦に出掛けている日、家に帰ってくると雪さんが野球中継を見ていた
「雪さんが見るなんて珍しいなー」「ええ…水月さんが映らないかと思いまして」「映った…?」
雪さんは首を横に振る
だろうな…絶対に無理だもんな。ライト側スタンドだし…小さくて見えないだろう
「今はどうなってるの?」「えっと…7−5でトラーズが勝ってます」「へぇー」
先に寝ていると、ドアが開く音がする。そっと片目を開けて水月が入って来るのを確認する
水月は、いきなり寝ている俺の上に飛び乗り、にこ〜と笑う。手探りでスタンドの電気をつける
「たらいま〜」「お前…酒飲んでるな」「うん!」
水月は大きく頷く
「まさか…優勝を記念した酒盛りに行ったんじゃ…」「ピンポーン!正解!」
駄目だ…これは完全に出来上がってる
「悪いが…明日も仕事だから、寝るな」
そういってスタンドの電気を消す。すると水月が電気を付ける
何するんだよ…たく
スタンドの電気を消す。また水月が付ける
「だー何だよ…」「えへへへ…」
水月はニヤニヤと笑っていながら、体をゆっくりと左右に揺らす
「寝たらだ〜め!」「は〜?さっきの言ったこと…」
水月は俺の話など聞くかずに布団の中にもぐる…そして
「はふ…」
ドタバタ…ドタバタ…
「雪さん。何で起こしてくれなかったんだよ!」「昨日は…お楽しみだしたね…」
雪さんはにこやかに笑うが、その笑顔に恐怖を覚えた
「雪さん…怒ってる…?」「雪がどうして、怒るんですか?それとも、雪が怒るようなことでも?」
後ろに2、3歩さがりってそのまま玄関に向かって走り、会社に向かう
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