退院
電車を降りて、駅前の花屋で花束を買う。そして、病院に向かってゆっくりと歩きだす

「あら、速瀬さん」「あ、どうも…」

香月先生に軽く会釈する

「涼宮さんは医局に居るわよ」「あ、そうなんですか?」「行ってあげなさい。きっと喜ぶわよ」

香月先生はにっこりと笑う。香月先生に会釈して医局に向かう


医局の前にでじーと花束を眺める。ゆっくりとドアを開ける

中では、遙が窓の外を眺めような形で立っていた。そして、ゆっくりと振り返る

「あ!み、水月…」

ゆっくりと片手を挙げる

「水月…」

遙は目に涙をため始める。遙は、私が後ろに隠している花束に気が付く

「水月…それ…」「あ、これ…形が残ると嫌だから、花束にしたの」

苦笑いを浮かべながら遙に手渡す。遙は嬉しそうにそれを受け取り、しばらく花束を眺める

遙は、ゆっくりと花束を置いてこっちを向く

「水月…」「ん…?」「手をだして…」「え!?」

自分の手を見たあと、遙の方に手を差しだす。すると、遙はその手に自分の手を絡める

「は、遙…」「御まじないだよ…」「え!?」

驚いた顔で目をパチクリさせていると、遙から説明を聞く。そして、お互いに目を閉じる

「夜空に星が…瞬くように」

遙のあとに続ける

「溶けたこころは離れない」

ゆっくりと手を肩の高さまで持ち上げる

『たとえこの手が離れても』

お互いの手をぐっと握る

『ふたりがそれを……忘れぬ限り……』

ゆっくりと手を離す

「ところで何なの?これ…」「再会の御まじないだよ…私と孝之君のように、また水月に出会えるようにね…」

遙はにっこりと笑う

は、遙…そこまでしなくても大丈夫だと思うわよ

あははは…と苦笑いを浮かべる。ふと、医局の時計を見る

「私…そろそろ行くね」「え!?ど、どうして…もう少ししたら孝之く…」

遙の口に指を一本あてて、首をゆっくりと横に振る

「ど、どうし…」

遙は悲しそうな顔でこっちを見る

「あのね…。今、孝之と会うと私…」

横を向きながら下を向く

「そう…何だな…」

黙ったまま頷く


「え!?水月…この町を出て行くの…!?」「う、うん…」「どうして…。どうして、水月が…」

「私なりに気持ちの整理をしたいの…。孝之のこととかね…」

あはは…と笑う。遙は寂しそうな顔をしたあと、ゆっくりと頷く

「もう…決めたんだよね…」「うん…私、もう行くね」「うん…バイバイ」

遙は笑顔で手を振る。屋上のドアをゆっくりと開けて外に出る。中庭が見える側のフェンスの方に立って下を見る

すると、孝之達が歩いて来るのが目に入る。携帯を取りだして、二人に電話をして留守録に入れる

ため息をついて空を見上げる。しばらくして孝之達が出て来る

しばらくその光景を眺めたあと、ゆっくりと病院の中に入る


ドアが閉まり、席にも行かずに携帯を取りだす。携帯のメモリーは全部削除してある。たった一人を除いて…

電話をかけようとしたけど、やっぱり恥ずかしいのでメールにする。メールを送信し終わり席に行ってするわる

ーENDー



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