前日
「ただいま〜って言ったって、誰も居ないんだよな〜…」

そんなこと愚痴りながら、中に入る。

「お帰り〜!」

突然エプロン姿の水月が出て来たので、思わず後ろに2、3歩さがる。

水月はそれを見て不思議そうな顔をする。

「どうして居るんだ?」「え、どうしてって、それはね…」

水月はニッコリっと笑って、そのまま台所に消えて行く。

最近は水月が居ることが当たり前になりつつある。

着替えて部屋から出てくると、水月が駆け寄ってくる。

「どうした?」「出来たよ!」

水月はじゃ〜ん!って感じの動作をとる。確かにそこにはすごい料理が並んでいた。

「なんだ〜?今日何かの記念日か?」「ううん…明日は、孝之達に会う日でしょ…だから…」

だからって…、これだけの量を二人で食べるのか…?は〜…これは胃薬が必要だな。

ちょうど胃薬を見つけて取り出すときに、後ろからしばかれる。

「食べるが嫌なら、無理に食べてもらわなくてもいいのよ!」

「別に…そんなことはないんだけど…用心だよ、用心…」

「やっぱり、食べたくないのね…いいわよ!いいわよ!どうせ私が作ったのなんて…」

水月は両手を顔に当てて、後ろを向く。

「そんなことは無いって…何でも食べてやるから…」

「本当…?」「ああ!男に権利は無い!」

水月はゆっくりとこっちを向く、その時の顔は笑っていた。

「さっき言ったこと本当よねー!」「ああ…」

すごく嫌な予感が…。

その予想は見事に的中する。水月はカレーをニッコリっと笑いながら俺の前に差し出しす。

「これも食べてもくれるわね!」「それは…ちょっと…」

まさか、この料理は劣りか…。

「さっきのは嘘だったの?」「いや…あの…その……判ったよ!食べるよ!」

水月のカレーを食べ始める。予想通り、口から火が出そうなほど辛い。

「たくさんあるから、遠慮しないでね」

水月はニッコリと微笑みながら、鍋をテーブルの上に置く。

この時の水月の笑顔は、悪魔の微笑みに見える。

カレーを食べて、他の料理を食べてみる、こちらはすごく美味しかった。

どうしてカレーだけは辛いんだ…。アレはまさに料理兵器だな…。

結局、半分くらい残る。水月は残った物にラップをかけて冷蔵庫にしまっていく。

まさか、再会したあと…この残り物を食べさせるってことは無いよな〜…。

水月は鼻歌を歌いながら片付けをしているので、一人で風呂に入ることにする。

しばらくして、脱衣所の方から水月の声が聞こえた。

「ね〜、一緒に入ってもいいかな〜?」

思わず、湯船の中に隠れる。水月は返事も聞かずに入ってくる。

「わ!馬鹿…いいって言ってないだろ〜…」「駄目…?」

水月は軽く上目遣いで聞いてくる。仕方が無いといった感じで頷く。

「こうして、二人で入るなんて思ってもみなかったな…」

「そうね…。ね…」「どうした?」

「背中…流してあげる…」

水月のその発言に思わず溺れそうになる。

「な、なんだよーいきなり…」「やっぱり、駄目よね…ごめん。今の忘れて…」

「べ、別に…いいぞ…」

そして、水月に背中を流してもらい、終わった後は水月のを流してやる。

風呂から出て、二人でビールを飲む。

「明日…本当に大丈夫か?」「も〜…何を心配してるの?大丈夫よ!」

「だったらいいけどな」

水月はビールを5本飲んで酔いつぶれたので、水月を寝室に運んでやる。

まったく、弱いくせに…。 ふっと笑いながら部屋から出る。

ーENDー



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