チョコレート
うん、こんな物かしらね?

篭の中を見て中身を確かめる。そんな時、肩を叩かれる。

「水月も買い物?」「あ、遙。そうよ」「うわ〜たくさん買うんだね」「あ、これは…」

慌てて後ろに篭を隠す。

「遙はも、買いに来たんでしょ?」「そうだよ」「孝之も幸せよね〜。遙に貰えるんだから」

「え、どうして?」「いい、遙。学校には、遙から貰いたがっている人が沢山居るのよ!」

「え〜!そうなの? だったら、他の人にもあげないと駄目かな〜?」

遙のその発言に思わずこける。

「ちょっと、遙…」「え、違うの?」「まあ、どれだけあげようと遙の自由だけど…それはやめた方が…」

「そうなの?」「やっぱり、貰って勘違いしたら、面倒な事なるしね」「そうだね。二つだけにするね」

遙はニッコリと笑いながら言う。

二つ? 一つは孝之で決まりだけど、残り一個は誰にあげるのかしら?

「ねえ、遙? 二つって誰と誰にあげるの?」

遙は少し考える。

「私からより、水月からの方がいいよね」「え!」「彼は水月のは本命でしょ?」

遙のその発言にボッと顔を赤くする。

「ちょ、ちょっと…遙!」「え!違うの?」「それは…違うとは言わないけど…」

赤い顔をしながら俯く。

「さ、会計に行きましょ!」「あ、水月〜待ってよー」


「水月…怒ってる?」「別に…」「う〜。やっぱり怒ってる…」

遙はしゅんとする。それを見て頭をポリポリと掻く。

「ねえ、遙。こうしない?」「え? 私が孝之もにあげて、遙は彼もにあげるのよ!」

遙はキョトンとした顔で首を傾げる。

「どうしてそんな事をするの?」「いい、遙!これはね、不公平を無くす為の作戦なの!」

「不公平…?」「そう!不公平!」

遙は理解できずに困った顔をする。

「彼にあげて、貰えない孝之が可愛そうでしょ? だから、孝之にあげれば何の問題も無いって訳よ!」

「それって、水月が本命を誤魔化すためにする事だよねー?」

うぐぅ…さすが遙ね。痛い所をついてくるわね〜。

「いい、この事で二人の友情に亀裂でも入ったら大変でしょ!」「うん…」

「だから、二人にあげれば、亀裂も入らずに済むってわけ」

遙は少し考えて、小さくコクコクと頷く。

「でも、水月…孝之君がね…」「孝之がどうかしたの?」「うん…この前ね」


『え、速瀬の? そんなの辛くて食べれないって!』『でも…くれたらどうするの?』

『そうだなー。そのまま放置されて、最後にはゴミ箱ゆきかな』『えー、そんなの水月が可愛そうだよ…』

『大丈夫だって。これくらいで落ち込んだりしないって』


「って言ってたよ」

ふーん、そんなこと言ってたの〜。孝之…今度会ったら覚えてらっしゃい!


ブルブル…。

「どうした? 風邪か?」「身の危険を感じた…」「安心しろ。線香の一本くらいあげてやるって」

「縁起でもない無い事を平然と言うな!」


「さ、帰りましょ」「そうだね」「見てないさよ、孝之!目に物を見せてあげるわ!」

「うわ〜水月、燃えてるね」「当たり前よ!そんな事を言われた以上、一言ぎゃふんと言わせてあげるわ!」

ーENDー



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