手作り
うん!まずまずね。

ピンポーン!

「は〜い…」

玄関に行ってドアを開けると、茜が立っていた。

「茜じゃない。どうしたの?」「あの、水月先輩にお願いがあるんです」「え、私にお願い?」

「少しの間で良いんです。台所を貸して下さい!」「え? 自分の家が…」「家のはお姉ちゃんが…」

あ〜、なるほど。遙が占領してるって訳ね。でも…家もそれどころじゃあ。

「あ、水月先輩。チョコ作ってましたね!」「え、なんで判るの?」「だって、鼻の頭についてますよ」

「え、うそ〜!」

慌てて、玄関に置いてある鏡で自分の顔を確かめる。

「冗談です。本当に作ってたんですね。この前会った、あの人にあげるんですか?」

それを聞いて顔を赤くする。

「茜。借りたくないの〜?」「え!借ります!貸して下さい!」

「一緒に作りましょ。今、少し…あ〜!」

慌てて台所へと走って行く。

やっぱり…。

「水月先輩…どうしたんですか?」「焦げちゃったのよ…」

震える手で鍋を指差す。

「せっかく上手くいってたのに〜!」「だったら作り直せば…」

「もう、チョコが無いのよ。今から買いに行っていたら間に合わないし…どうしよう」

「私のチョコを少し分けてあげますよ」「え、本当!」「はい、沢山買いましたから」

茜の手を握る。

「茜〜、私は何ていい後輩をもったの…」「水月先輩…何も泣かなくても…」「さー、作るわよー!」

「は〜い!」

それから、茜と二人で手作りチョコを始めた。


「なんとか完成したわね。あとは、これを冷蔵庫に…」「この一番大きいのは本命の…」

「茜〜…それ以上は禁句よ!」「判りました…。でも、二つありますね」「あ、一つは孝之のなのよ」

「そうなんですか」

茜はなるほどっと頷く。

「本命の隠蔽のためですね!」

さすが姉妹ね、まったく同じ事を言ってる。図星なところが悔しいわ。

「べ、別にそんのじゃないわよ。遙からしか貰えない孝之のために…」

「好きな人から貰えれば、十分だと思いますよ。それに、お兄ちゃんが言ってましたが…」

茜は前に遙から聞いた事とまったく同じ事を言う。

孝之、遙だけならまだしも茜まで…今度会ったら覚悟しときなさい

ーENDー



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