手料理

ガチャ!

「どうぞ!」「お邪魔…します」

水月は買い物袋を持ちながら、家の中に入る。それをテーブルの上に置いて、腕まくりをする。

「テレビでも見てて、いいわよ!」「そうか?」「任せといて!」

水月は自信満々に言う。

「で、何を作るんだ?」「秘密」

水月は可愛く言う。

「ぶりっ子はやめろ!」

スコン!

お玉が俺の額にあたる。

「いいわのよ…別に。私はカレーでも!」「頼む! カレーだけは…」

水月に向かって手を合わせながら、頭をペコペコと下げる。

「今日買った材料じゃあ、作れないから安心して」「え!? そうなのか?」

水月は黙って頷く。それを見てホッと肩を撫で下ろす。

「これで安心したでしょ?」「おう! 後は水月に任せた!」

そう言って、雑誌を読み始める。しばらくして、日ごろの疲れからか、眠りに落ちる。

「キャー!」

ガバ!

「どうした?」「大丈夫だから、安心して」「そうか?」「うん! 大丈夫よ!」

それを聞いて、また眠る。


ゆさゆさ…

「出来たわよ!」「ん…」

ゆっくりと目を開け、目の前の水月を見て驚く。水月が世間一般で言う、裸エプロン姿だったからだ。

「ななな…なんて格好してんだ!」「あ、これ…さっきね、ちょっとこぼしちゃって…」

水月は照れくさそうに笑う。

「それにしても…その格好はどうかと思うぞ…」「二人きりなんだし…こんなの…嫌い?」

首を横に振る。

「そうなんだ…」

水月は顔を赤くして、照れくさそうにする。ふと、テーブルの上を見てみると、美味しそうな料理が並んでいた。

「これ…水月が作ったのか?」「そうよ! 美味しそうでしょ?」「ああ…」

水月は箸を手に取って、おかずを一つ摘む。

「はい…あーん!」

水月の行動に、部屋の隅まで逃げる。

「何で逃げるのよー!」「やっぱり…それは、まだ速いって言うか…」

水月は膨れながら、それを食べる。

「いいわよ! 嫌なんでしょ? だったら、最初からそう言ってくれれて結構よ!」

水月は膨れながら、次々におかずを食べて行く。

ドンドン…! ガチャ!

「水月先輩! 居ますか? あ、水月…せんぱ…い?」

いきなり入って来た茜ちゃんは、水月の格好を見て目をパチクリさせる。

「私の…水月先輩に、何て格好をさせてるんですか〜!」「ま、待て! これには訳が…それに私のって何だー!」

ドコン!

「水月先輩。大丈夫ですか? 変な事されませんでしたか?」「あは…別に何無かったわよ…」

水月は苦笑いを浮かべる。

「良かったー。さ、こんなケダモノが居る所なんて早くでも出ましょう!」

「茜…」「はい? 何ですか?」「これはね…」「はい?」

水月が茜ちゃんに事の成り行きを説明する。

「え! そうだったんですか?」「だから、この格好は言われてしてるんじゃないのよ…」「って事は…私は…」

茜ちゃんはゆっくりと、スポーツバックに潰された俺の方を見る。

「あは、あははは…そうなら、そうって早く言って下さい」「それを聞かなかったのは、何処のだれじゃあ!」

「えっと…。誰?」「涼宮茜! お前だよ!」「キャー」「はい、そこまで! 茜も一緒に食べる?」

「え! 良いんですか?」

茜ちゃんは目を輝かせる。

「ちょうどお腹がすいてたんです」「こんな奴に食わせなくても良いだろ!」

バキ!

「いい加減になさい! 茜、どうぞ」「頂きます!」

結局、俺と水月と茜ちゃんの三人で、水月の作った料理を食べることになった。

「あー! 俺のおかずを取りやがって!」「速いもの勝ちです!」

パク!

「このやろ〜!」「まったく、大人気ないわねー! おかずの一つや二つで…」「じゃあ、もらい!」

パク!

「何で私のを取るのよ! 馬鹿ー!」「おかずの一つや二つで騒ぐなって言ったのは誰かなー?」

結局、おかずの取り合いをする。

「ねえ。結局、茜は何をしに来たの?」「え!? 何でしたっけ?」「俺に聞くな!」

結局、茜ちゃんが何をしに来たかは、謎のままである


ーENDー



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