好きな人

「お姉ちゃんって、本当にお兄ちゃんのこと好きなの?」

茜はテレビを見ながら言う。

「え!?」

向かいのソファーに座り、一緒にテレビを見ている遙は、驚きの表情で顔を紅くする。

「ねえ、どうなの?」「う、うん…」「そうなんだ〜。で、何処が気に入ったの?」

「茜〜!」

遙は思わず大声で茜を怒鳴りつけるが、茜にはまったく効果がない。

「お兄ちゃんって、優柔不断だし、へたれだし。全然良いとこないと思うけど…」

「そんな事なよー! 孝之君にだって、いい所たくさんあるんだよ!」「たとえば?」

「たとえば…。えっと…えっと…」

遙は必死に孝之のいい所を言おうとするが、浮かんでこない。

「ないんだ〜!」

茜はニヤニヤと笑いながら言う。

「違うよー! たくさんありすぎて、どれから言ったら良いのか…」「はいはい…」

「あら、楽しそうねー。何を話してるの?」「あ、お母さん。えっとねー、お兄ちゃんの事だよ」

「鳴海さんの事を?」「うん!」

茜はそう言って頷く。

「さっき、お姉ちゃん。お兄ちゃんのいい所を言おうとして、自滅したんだよ」

茜は楽しそうに言う。

「そうね、鳴海さんはいい所が沢山あるわね」「そうだよねー!」

遙は味方が出来て、嬉しそう言う。

「鳴海さんの事、好きよ」『え〜!』

母の発言に遙と茜は驚く。

「お母さん…冗談だよね〜?」「冗談じゃないわよ。本当よ」

遙は、それを聞いて落ち込む。

「あら、茜も好きなんでしょ? 鳴海さんの事が?」「え!?」

母の問い掛けに、茜は顔を紅くする。

「別に恥ずかしがる事じゃないわよ。家族ですもの、好みのタイプが似てて当たり前よ」

母はニッコリと笑い。手を頬にそっとそえながら言う。

「茜も好きなんだー、孝之君のこと…」

遙は沈んだ声で言う。

「私は…私…」

茜は顔を紅くして、頬をポリポリとかく。

「ふぇーん、やっぱり好きなんだ〜」「好みタイプが、お兄ちゃんだってだけで…」

「好みのタイプだから、好きなんでしょ?」「も〜! 私は、鳴海さんの事をお兄ちゃんとしか思ってないから」

「え? そうなの?」「うん!」

それを聞いて、遙はパ〜っと明るい顔をする。

「さ、お茶にしましょう」

母は、ティーセットをテーブルの上に置く。その後、三人でお茶を飲んで過ごした


ーENDー



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