700,000HIT記念品

「ねえねえ…ここんなんてどうかなー?」

水月は楽しそうに旅行雑誌を見せる。

「そうだな…」

その雑誌をたいして見ないで答え、コーヒーを飲みながらテレビを見る。

「次はねえ……ここなんてどうかなー?」「良いんじゃないか?」

ギュー!

「きちんとこっちを向きなさいよ!」

水月はそう言いながら耳を引っ張る。

「イタタタ…判ったから、離してくれ…耳がちぎれる…」

水月はパッと耳から手を離す。耳がついているか確かめる。

「何も耳を引っ張る事ないだろ!」「話を聞かないからよ! 話、聞いてくれるのよね?」

水月はニコニコしながら言う。

「さっき、そう言ったわよねー? 判ったって」「さあな…」

ぷいっとそっぽを向く。

パシ! パシ!

この音は…もしかして。

「水月さん、ぜひともお聞かせ下さい」

そう言いながら頭を下げる。

「判ればいいのよ!」

水月はそう言ってソフトボールをしまう。そして、テーブルの上に数冊の雑誌を置く。

そのうちの一冊を手にとり、パラパラっと中を見てみる。所々に丸印がついている。

何だ? この丸印は?

「なあ…水月?」「いい所でもあった?」

水月は興味紳士で、俺の所にやってくる。

「いやな、この印が気になってな」

丸印を指差す。

「あー、それね。それは、私が目をつけた場所に記してるのよ」「そうか…」「だから、気にしないで」

それにしても、かなりの数あるぞ。この丸印…。

別の雑誌を手に取って中を見ると案の定、丸印がたくさん付いていた。

「なあ…」「ん? どうしたの?」「俺の必要性ってない気がするんだが…」

「え? そんなことないわよ。だってほら、一人で選ぶよりも二人で選んだ方が良いでしょ?」「まあな…」

そう言って雑誌を閉じる。

「で、これは何の計画だ?」「何って…ゴールデンウィークのに決まってじゃない!」

それを聞いて、テーブルの上に雑誌を投げ捨てる。

「どうしたの? 急に」「そっか…もうそんな時期か〜」「そうよ。だから…」

「俺はパス! 後は茜ちゃんか涼宮とやってくれ」

そう言って部屋に向かう。


「一人だけ…行けないのが、寂しいんでしょうね」「あ、雪さん! 行けないって?」

「え? ご存知なかったんですか? ゴールデンウィークの間も仕事なんです…」「え!? そうなの?」

「はい…」

水月は座ったまま、部屋のドアを見詰る。

「ところで、雪さん! 何でそんなこと知ってるの? 私ですら聞かされてないんですけど…」

「え、あ、それはですね…スケジュール管理も、雪の仕事ですから…」

水月はジーと雪さんを見る。

「雪はまだ仕事がありますので、これで失礼します」

雪さんはお辞儀をして、急ぎ足で消えて行く。

「あ、ちょっと…」


コンコン!

「どうぞー、開いてるよ…」

窓から外を眺めながら返事をする。

カチャ! パタン!

ドアが閉まり、少しして誰かに抱きつかれる。

「うわ〜! な、何だ?」「さっきは、御免なさい…あなたの気持ちも考えないで…」

水月は背中に顔を押し付ける。

「俺も、子供みたいな事して悪かったな」

そう言って水月の手をそっとどけて、水月の方を向く。

「あのね、私…ここに残ろうと思うの…」「え! どうして? 楽しみにしてたろ?」「うん…」

水月は力なく頷く。

「だったら…」「ううん、良いの。だって、一人で行っても楽しくないし…」「茜ちゃんだっているだろ?」

「そうじゃないの…」

水月はジッと俺の目を見詰る。

「あなたが居ないから…」「俺が…?」

水月は黙って頷く。

「そっか…」

そう言って水月の頭をポンと叩く。

「じゃあ、一緒に居るか?」「うん!」

水月はすごく嬉しそうな顔をして、抱きつく


710,000HIT記念に続く

おまけ

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