好きな人
「遙。孝之とは上手くやっての?」「うん!この前もね…」

そうなんだ〜。こんな幸せそうな遙を見るの初めてね。

そんな事を考えながらコーラを飲む。

「ねえ、水月?」「え…!」

気がつくと、遙が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

「あ、うん…ちゃんと聞いてるわよ。それで?」「うん、それでね。水月に聞きたいことがあるの?」

「私に聞きたいこと? いったい何?」

コーラを飲みながら聞いてみる。

「水月って…好きな人とか居るの?」

その問い掛けにコーラを吹き出す。

「ちょ、ちょっといきなり何を聞くのよー!?」「ねえ、どうなの?」

遙は真剣な顔で私を見ている。

「まあね…居ないって言ったら嘘になるわね…」「誰ですか?」「そこまではとても言えないわ…って茜!」

「茜〜!何でここに居るの?」「CDを探しに来たんです。その帰りに水月先輩が見えたんで」

「へー、どんなの買ったの?」「えっとですね〜って話をそらさないで下さい!誰か聞かせて下さい!」

茜は興味津々な顔で私を見てくる。

「それは…ねえ…あれよ…」「誰なんですか?」

遙と茜はジーっと見ている。

まずいわねー。このままだと確実に…。そうだわ!

「2人ともごめんね。私、約束があるから」

そう言って、走って店から出る。

「あ〜あ、行っちゃった」「そうだね。茜も食べる?」「え、いいの?」「うん。はい」


駅前のベンチに座り、空を見上げる。

言えるわけ無いじゃない。そんなの恥ずかしくて…。

「よ〜!速瀬。何やってんだこんな所で?」「え?」

声がした方を見てみると彼が立っていた。思わず顔を赤くする。

「どうした? 顔が赤いぞ?」「べ、別に何でもないわよ…」「ところで、そんな所で何をしてるんだ?」

「考えごとかな…」「速瀬でも考え事なんてするのか〜」

彼のその言葉を聞くなり、考えより先に殴る。

「何よ〜!その言い方わ〜」「何も殴る事は無いだろ…」「当然の報いよ!」

「あのな〜」「この人が、水月先輩の好きな人ですか?」「そうよ……え!」

「そうなんですか〜。この人が〜」「ちょ、ちょっと…」

茜は彼をあらゆる角度か見ている。

「誰だこの子?」

彼は茜を指差す。

「あ、はじめまして。涼宮茜です」「涼宮?って事は涼宮遙の妹か?」「はい、そうです」

彼はなるほど〜と頷く。

「茜…さっきのは…」「判ってます。誰に言いませんから、安心して下さい」「そうじゃなくって…」

「私はこれで失礼しますね。御二人の邪魔したら悪いですから…」

それを聞いて、私と彼は顔を赤くする。

「さようなら…」

茜は手を振りながら行ってしまう。私達はただ、手を振るだけだった。

「にぎやかな子だな。なあ、これから本屋に行くんだけど、一緒に来るか?」「え、あ、うん…」

本屋へと歩き出す

ーENDー



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