試食係 |
それにしても、よく茜ちゃんは我慢して食べてたものだ。俺の目の前には、涼宮が作ったミートパイが置かれている もちろん、試作品だ。今日はタイミングよく茜ちゃんが居ないので、俺に白羽の矢が立ったのだ。 ミートパイを作っているかというと、明日はミートパイ記念日だそうで、それで作っているらしい。 しかし、今までこの記念日てなんかあったんだ? それでも、上達しなってのどうかと思うぞ。 「どうかなー?」 涼宮は興味心身に、俺の方をじっと見てくる。ここは正直に言ったほうが、いいのかをすごく悩む。 やっぱり、正直に言ったほうがいいよな。これも、本人のためだもんな。 「うーん、そうだなー」「あー!塩コショウを入れてなかった」 何ですとー!そんなものを、俺に食わせたのかー! 「ごめんね、今から作り直すね」「いや、もうやめたほうが…」「楽しみにしててね」 聞いちゃいいねー。さて、俺は、あと何回こんなのを食べさせられるんだろうか。 結局、俺はそれから数十回も食べさせられた。 「今日はごめんね。変なお願いして…」「これくらいのことなら、いつでも言ってくれよな」 うぷ…。当分はパイ系は見たくも無いな。 「あのね、お礼にこれ食べて」 涼宮は小さな包みを俺に渡した。中身はだいたい推測がついた。 「ただいま〜!」「あ、お帰り〜。キャンプはどうだった?」「それがね、最悪なのよ!」 「俺は、帰るな」「うん、またね」「さようなら」「さようなら」 涼宮の家を出て、家に向かう。 テーブルの上の包みを、一人でじっと眺めている。 この中身は、ミートパイなんだろうなー。はー、開ける気にもならん。 また、一人でぼーと眺めていると、水月が帰ってくる。 「何やってるの?」「ん!」 包みを指差す。 「これでどうしたの?」「涼宮から貰ったんだ」「遙から?」「そうだ」 水月は早速その包みを開ける。俺は思わず視線をそらす。 「わー、美味しいそー。ねー、食べてもいい?」「どうぞ、ご自由に」 「貰うわね。言っときますけど、後からくれって言われても、あげないからね」 誰が欲しがるか。散々、食べさせられたものをさー。 「本当にいいの?」「いいって言ったらいいんだ!」「塩嶺無く貰うわね。やっぱり、遙の家のプリンは美味しい!」 「プリン!」「あら、いらないんでしょー」 水月は、しらーと俺のほうを見てくる。 「欲しいんなら、あげるわよ。ちょうど二個あるし」「いらん!」 「あれ、そうなの〜。でも、顔には欲しいくてたまらないって、書いてあるわよ」 なんですとー! 「もー、変な意地張らないで一緒に食べましょ」 水月は、プリンを俺の方に差し出す。それを黙って受け取り、一口食べる。 すごく上手い! 「ね、美味しいでしょ。だから、遙の所に行った時は、これを食べさせてもらうのよ」 「もっと無いのか?」「後は、全部私の!」 水月は、残りが入った箱を持って逃げる。俺は逃げる水月を、一生懸命に追いかける。 捕まるわけも無く。結局、残りはすべて水月に食べられた |
ーENDー |