先生
気持ちの良い風が窓から入って来る、昼前の時間帯。手際よく、書類などを片付けて行く

あらかた片付いた時に、椅子の背もたれにもたれながら大きく伸びをする

「うーん…」

そして、肩をコキコキと鳴らし作業を続ける。しばらくすると、チャイムが鳴ってお昼を告げる

廊下を生徒達がワイワイ言いながら通り過ぎて行く。その光景も、懐かしく感じる


昼も食べ終わり、作業の続きを始める。ドアがそっと開き、誰かが入って来るが作業に熱中していて、まったく気が付かった

その人物は、そっと後ろに立ってにこーと笑う。そして、いきなり抱きついて来る

「うわ〜!な、何だ…」「えへへへ…」「何だ…君か…」

俺の首に手を回しながら、楽しそうに笑っている。この子は、この学校に通う高校二年生の松本久美

学校に来る時に、偶然助けたことが縁でなつかれてしまった訳である

「先生…何をやってたの?」「この前の身体検査の結果を整理してんだよ」「へー」

久美は机の上に置かれている紙を眺める

「あら…ずいぶんと楽しそうね〜」「え!?」

後ろを振り向くと入り口で、水月がこっちをじーと眺めていた

「みつ…速瀬先生…何か御用ですか?」「楽しそうな声が聞こえたから、覗いてみただけよ」

水月は不適笑う。久美はギュッと俺を自分の方に引き寄せる

「速瀬先生…」「な、何…」

久美の目が怪しく光る

「先生も…好きなんですね!」「え!?」

水月は驚き顔で目をパチクリさせる。水月の要望で、俺たちが付き合っていることは秘密になっている

「駄目ですよ〜。先生は久美が大好きなんだから〜!」

久美は俺の顔を自分の胸に押してる。それを見て、水月はムッとした顔をする

「松本さん!もう、授業が始まるわよ!」

久美はぴょんと飛んで足早に入り口の所に行き、振り返って俺目掛けて投げキッスをしたあと、走って行く

「水月〜」「もーここだと、速瀬先生って呼んでて言ったじゃない…」「あ、そうだったね…。ごめんね」

水月は呆れ顔で頭をかく。涼宮がドアの影からひょっこりと顔をだして、手を振る

「何かあったの?」「うん。電話が掛かって来たから、探してたんだよ」「途中まで一緒に行こう」

涼宮はにっこりと笑う

「そうね…それじゃあ、仕事頑張りなさいよ!」

ポーと焦点のあわない目で何処かを見詰める。水月はソフトボールを投げる

「がはぁ…」「さ、行くわよ!」「う、うん…」

ピクピク…


仕事を終えて伸びをする

「う〜ん…」

荷物を鞄に詰め、白衣を脱いでロッカーにしまって外にでて鍵を閉める

鍵を職員室に持って行く時に、水月が壁に寄りかかりにながら立っていた

前を通り過ぎて、職員室に鍵を置いて出て来ると、水月がゆっくりとこっちに歩いて来る

「せんせ〜い!」

叫び声のあと、後ろから抱きつかれる

「一緒に帰りましょ〜」「お、俺は…」

チラッと水月の方を見る

「良かったわね。可愛い子が一緒に帰れて…」

水月はプレッシャーを与える笑顔でこっちを見る。思わず少し後ろに下がる

「さようなら!仲良くね!」

水月はそれだけ言うと、さっさと歩きだす

「み、水月…」

顔面にソフトボールが飛んで来てめり込む

「がはぁ…」「いや〜!先生…」「お大事に…ふん!」

ピクピク…

ーENDー



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