旅行券
これで終わりっと…。

掃除を終えて、使った道具を片付ける。急いで鞄を持って廊下へと出る。

「悪い…水月。遅く…なって…あれ?」

廊下には水月はおらず、水月を探す。

「あら、ちょうどいい所に居たわね〜」

この声は…。逃げるべきだな。

走って逃げようとするが、逃げれるはずもない。

「逃げようとしたわね」「いえ、そんなことは…」「いいのよ。私は、テストが0点なるだけだから」

「な…そんな卑怯ですよ!」「嫌なら一緒に来るのね」「判りました…」「よろしい!」


「で、ここで何をするんですか?」「コーヒーでも飲まない?」

何時ものように、ビーカーに入ったコーヒーが出てくる。

「この前の生物のテスト…」「もしかして、0点なんですか!?」「そうよ!」

嘘…かなり自信があったのに。

「フフフ…冗談よ。でもね、本当にそうなるかもね」「って事は…」

「今から言う指令を成功させないと、テストは焼却されるわよ」「で、指令って何ですか?」

何だよ、人の弱みに付け込んでよ。

「指令はこれよ」「何ですか…これ?」「まりもがね、福引で温泉旅行を当てたのよ」

「だったら…」「まりもね、年末はいろいろと忙しくてね」「そうなんですか…」

「だから、それ…あげるわ」「でも…」「テストがどうなってもいいのね?」「有難く貰っておきます」

「絶対に行きなさいよ。行かなかったら…」「判ってますよ。行けば0点は無いんですね!」

「がんばってね〜!」


と、貰ったまではいいけど…どうするんだよ〜。

封筒を開けてみる。中身は、宿泊券五人分が入っており、なぜか日にちまで指定されている。

な、何だよ…これ。クリスマスじゃないか! まったく、何を考えてるんだよー。

その券を持って歩いていると肩を叩かれる。

「何だ、涼宮か…」「どうしたの? 何かあったの?」「別にたいした事じゃないって…」

ん? 待てよ。結局はこの券を使って行かないと、俺のテストは0点なんだよな…だったら。

「なあ、涼宮」「え、なに?」「クリスマスって暇…じゃないよな…」「え、クリスマスがどうかしたの?」

「いや、何でも無い…忘れてくれ」

涼宮は首をかしげる。

「ねえ、その手に持ってるの…何なの?」「これか…」

涼宮に券を見せる。

「わー、温泉の宿泊券だ〜。どうしたの?」「香月先生に貰ったんだ」「そうなんだ〜」

涼宮はその券をじーと見つめる。

「一緒に行かないか? 皆で…」「え? でも…」「大丈夫だって。ほら!」

涼宮に券を見せる。

「五枚もあるんだ〜」「だから、俺と水月と涼宮と茜ちゃんと孝之で行けるだろ?」

「あ、こんな所に居た!何処に行ったのか心配したのよ…」「悪い…香月先生に連行されてて…」

「まあ、それだったら仕方が無いわね」「ねえ、水月も行くよねー? 温泉!」

「え!? 何のこと?」「これ!」

涼宮は券を水月に見せる。

「どうしたのよ…これ?」「香月先生に貰ったんだ」「そうなの…」「ねえ、水月も行くよね〜?」

「たまには良いわね。温泉も」「よし決まりだな。孝之と茜ちゃんの説得は涼宮に任せた!」

「うん、任せといて!」

は〜、何とかなったな。これで、多分俺のテストは無事だろう。

「さ、帰りましょう」「そうだな」「なんだか久しぶりだね。三人で帰るの」「そうだな」

旅行の事を話しながら帰る。

この時の俺は、まさかこの旅行が悪夢の始まりとは思ってもみなかった…

ーENDー



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