お見合い
「それでは…あとは、若いお二人に…」「そうですね…」

そういって、さっさと部屋から出て行く

私…何やってるんだろ?やりたくも無いことをして…

「あの…速瀬さん…」「あ、はい…何ですか?」

めいっぱいの作り笑顔で答える

「少し…外でも、歩きませんか?」「良いですねー」

苦笑いを浮かべ、そのまま外へと向かう


キョロキョロ…。スタタタ…

水月先輩はどこに居るんでしょうか?

仲居さんに見つからないように、隠れながら水月先輩を探す

そんな時、目の前を美味しそうな料理を持った仲居さんが通り過ぎる

「わ〜。美味しそう…」

だめだめ!今は、水月先輩を見つける方が大切なんだから!

そう自分に言い聞かせるが、目は料理を追っていた


「速瀬さん…」「はい…何ですか?」「今…好きな人などはいらっしゃるんですか?」「え!?」

好きな人…

一瞬、脳裏にある人の顔が思い浮かぶ

「居るんですね…」「え、居ませんよ…好きな人なんて…。あははは…」

「無理しなくて良いんです…。このお見合いは、親が勝手に決めた事なんですから…」


それにしても…水月先輩は、どこに居るんでしょうか?

キョロキョロ…

「あ〜!居た〜!」

中庭を並んで歩いている水月先輩が目に入る

うわ〜。良い男の人…


「親が決めたって…」「家の親は、俺に早く結婚して、安心させてほしいみたいなんです…」

安心…かー。家の両親もそう思ってるのかしら?

「だから、毎日のように見合い!見合い!僕は、もううんざりなんです!こんな生活!」

「そのこと…ご両親に言ったの?」「家の親は、俺の気持ちなんて…」

「私…思うんだけど。やっぱり、自分の気持ちを相手に伝えないと、だめだと思の…」「速瀬さん…」

「だから、両親に自分の気持ちをぶつけてみたあとで、それから事を考えても良いじゃないかな〜?」

「速瀬さん…」「あ、偉そうなこと云って…御免なさい…」「いいえ!ありがとう御座います!」

「え!?」「今日…家の両親に話してみます!」「そう…頑張ってね…」「はい!速瀬さんもお幸せに!」

そういって、走って行く

え!?頑張って…?

顔を紅くする

「えー!」


「本当に、水月はここに居るんだな?」「間違いありません!」「ありがとうな!」

そういって、水月の所に行こうとした時、茜ちゃんに襟を捕まる

「ぐぇ…」「待って下さい!」「何だよ?」

茜ちゃんは黙って、手を前にだす。

「何これ?」「あ〜!忘れるなんて、ひどいですよ〜!」「え!?」「報酬です!」「報…酬…?」「はい!」


『頼む!この通り…』『何で私なんですか?』『こんなことを頼めるのは、君だけなんだ!』『嫌です!』

『報酬はだすから』『本当ですか…?』『男に二言は無い!』『何でも…良いんですか?』『無論だ!』


「あ〜!」「やっと思いだしました?で、早速なんですが…ここの料理を奢って下さい!」「な、何〜!」

ふざけるな!ここは、料理は一流で価格は超一流なんだぞ!

「無理だ!そんな訳で…また!」

そういって水月の所に行こうとした時に、再度襟を捕まれる

「ぐぇ…」「大丈夫ですよ。お見合いは失敗ですから」「何でそんな事が?」

茜ちゃんはニヤニヤと笑う

「それは…ご飯を食べながら話します!」

ズリズリ…

「待て〜!鬼か〜!悪魔か〜!」「何とでも行って下さい。報酬はきっちり貰いますから!」

誰か…助けてくれ〜。

水月のお見合いが失敗したのは嬉しいが、そのかわり俺の財布がすこぶるほどに軽くなった

ーENDー



 戻る  本編へ