日常 -第五章- |
畜生。このままだと、あゆに先を越される。そうだ! 「おい! あゆ…靴紐ほどけてるぞ!」「え!?」 あゆは、その場にしゃがんで靴紐を確かめる。 「ば〜か、冗談に決まってるだろ!」 そう言いながら横を通り過ぎた 「あー! 嘘つくなんてひどいよ!」「騙される方が、馬鹿なんだよ!」 ポツポツ… ん…? 雨か? 「急ぐぞ!」「うん!」 急いで、家に駆け込む 「結局…濡れたな…」「うん…」 雨にびしょ濡れで玄関に立っていると、透がタオルを持って現る 「お帰りー! はい、タオル」「有難う…」 透からタオルを受け取る時に、水をかけられる 「冷てー! 何しやがる!」「あ、御免…でも、濡れてるんだし、同じでしょ?」 透からタオルを毟り取って、体を拭きながら中に入る 「しかし、驚いたよなー」「そうだね…いきなりだったもんね〜」「あれ? 天気予報見てなかったの?」 「誰が見せてくれなかったんだー? 誰が?」「私のせいだって言いたいの?」「そうだ!」 「それは、言いがかりよー!」「朝のドラマ見るとか言って、テレビを占領してたのは、何処のどいつだ! えー!」 透はそれを聞いて、そ知らぬ顔をする 「ねぇ…森本君って、こんなに小さかった?」「ん? 何言ってるんだ?」 「だって、ほら。ボクとそんなに背かわらないよ」「そんな馬鹿なことが、ある訳…」 鏡の前に行って愕然とする 確かに…縮んでる。服がぶかぶかだー そろーり…そろーり… 「待てコラー! 何処に居くー!」 逃げようとしている、透をひっ捕まえる 「テメー! 俺に何をしたー?」「そ、そんなに怒らなくても…」 「これが…怒らないで居られるかー!」「説明するから…きちんと、説明するから…」 透は必死にそう言って、小さな小瓶を取り出す 「あのね、この瓶に入ってる物…何か判る?」 透は、そう言って小瓶を揺らす 「水だろ?」「あまいわね! これは、ただの水じゃないのよ!」「はー?」 「これを降り掛けると、女になれるのよー!」 スパン! 「それでー! 俺で人体実験したってことかー! えー!」「そんなに怒らなくても…」 透はヒクヒクと泣く 「男がめそめそ泣くなー!」「違うもん! 女だもん!」「だー! もう良い! 元に戻せ!」 「それは無理!」 透はキッパリと言う 「何でだよ?」「戻し方、知らないから…」「何だとー! テメー! ぶっ殺すぞー!」 そう言って、透の胸倉を掴む 「まー落ち着いて…」「この状況で落ち着けるかー!」「ねぇ! お湯かけたらどうかなー?」 「漫画であったあれだね」 ジョボジョボ… ヒョイ! 「何で避けるのよ?」「おい…! それって、熱湯だろ…」「っち、ばれたかー」 「何だよ、今の台詞わー! それに、どっから持って来たんだ!」 「細かいことは、気にしない…気にしない…」 あゆは、にまーと笑う 「あゆ…」「何…?」「いい加減に、名字で呼ぶのやめないか?」「え!? 何で…?」 「この馬鹿だって、同じ名字だから紛らわしいだろ?」 透を指差す 「馬鹿だ何て…酷い…しくしく…」「そうだね、今度から何て呼んだら良いかなー?」 「つよちゃんが良いと思うわよ!」「テメーは、黙ってろ!」「酷い…せっかく、考えたのに…」 「剛君…。じゃぁ、ダメ?」「俺は別に良いぜ!」「あ! そう言えば、声まで変わってるね」「何ー!」 え!? 全然…気がつかなかった 「完全な女の完成ね!」「何だよ? 妙に嬉しそうな顔わー!」「私も試してみよー!」 「やっぱり、俺で実験したんじゃねーか!」 透の胸倉を掴む 「だって…ほら。副作用とかあったら怖いし…」「俺はどうなっても良いのかよ! えー!」 透の首を締め付ける 「それは、効果を確かめる…」「このまま絞め殺すぞー!」「御免なさい…」 パッと手を離す 「たく…。俺は風呂に入って来る」「あゆちゃん、夕飯作るの手伝って〜」「は〜い!」 本当に下は無いし…胸は大きくなってるし。まったく、何て事しやがるだんよ、あいつわー! 風呂からでると、あゆが興味津々といった顔で聞いて来る 「ねぇ? どうだった?」「何が?」「戻ってないんだね」「ああ、そうだ!」 ぶっきらぼうに答える 「戻ってないってー」 そんな事をいちいち報告するな! 「良い実験結果がでたわ」「やっぱり! 実験だったんじゃねーか! えー!」 「そんなに怒っちゃ…や〜ん!」「うるせー! いいから、早くもとに戻せ!」 「だから、戻し方が判らないの…」「俺は何時まで、このまま何だ?」「さぁ…」 「さぁって…このやろー! 殺されたいのかー!」「落ち着いて…」 「これが落ち着いてられっか! 明日は、学校があるんだぞ!」「休みば関係ないわ」 「俺は、出席日数が危ないんだよ! それに、行かなかったら、真琴が迎え来るだろうがー!」 「あ、それもそうね」 透は何気に納得する 「だから、俺は今日中に元に戻らないといけないんだよ! 判るか!」 「そんな事を言われても…今日はもう無理よ…」「じゃぁ、明日調べとけ! 判ったな!」「う、うん…」 「ねぇ、こうしたらどうかなー?」「却下!」「うー、まだ何も言って無いのにー」 あゆは半泣きで言う 「判ったから、泣くなって! で、何か名案でもあるのか?」 「あのね! 二人は双子兄弟なんだから、入れ替わっても判んないと思ったの」 ん? それもそっかー! 俺は女でも、透は男だ! 透はいそいそと小瓶を取り出して、自分にかけようとしてする。慌てて、その手を掴んで止めさせる 「テメー! いったい何をしてんだ?」「いや…実験の続きを…」「だまらっしゃい!」 「キャ!」「明日は、お前が学校に行く!」「えー! 何でー? そんなのいやー」 透はなよなよしながら言う 「テメーが蒔いた種だろうがー! それ位して、当然だろうがー!」 「でも…」「でも、へったくれも無い! 明日はお前が学校に行け!」「何だか、凄く楽しみー」 「何が?」「透さんと一緒に学校行くなんて、初めてだから」 あゆは凄く嬉しそうに言う 「仕方がないわね…」「だけど…着る物が…」「ここは、この姉に任せなさい!」 「誰が姉だ!誰が!」「細かい事を気にしたらダメ!」 透は笑顔で言う 「普通、気にするだろ?」「私は、気にしないよ!」「お前は、黙ってろ!」「うー…」 「とにかく! 明日はこれを着て行きなさい!」 透は女生徒用の制服を取り出す 「どっから持って来た?」「そんな事は、些細な事よ!」「そうじゃないと思うが…」 「とにかく、明日は事を着て行きなさい!」「ヤダ! 俺は、自分のを着て行く!」 それを聞いた透の目が怪しく光る 「あー、今日は疲れたから、もう寝る…」 そう言って、部屋に入る 「あ、待って…私も!」「あん? 何であゆが来るんだ?」「一緒に寝よ?」 あゆは枕を抱えて言う 「はー?」「女の子同士だし。問題ないよね!」 あゆはそう言って、俺をベットにひっぱて行く。添い寝をする 「おやすみ」「ああ…おやすみ」 さて、明日は無事に過ごせるかなー? |
ー第六章に続くー |