日常 -第四章-
ジリリリリ…… カチッ!

「すー、すー」

やっぱり来てるよな…まったく、気持ち良さそうに寝やがって

あゆを起こさないように部屋をでる

「おはよー」「おはよ!」

透は笑顔で振り返る

「今日のは、よく似合ってわねー」「何がだよ?」「うふふふ…鏡を見ればよく判るわよ!」「は〜?」

鏡の前に行って見て、小刻みに震える

「……」「どう? 似合ってるでしょ?」「お前は、いったい何を考えてんだー! えー!」

透の胸倉を掴む

「良いじゃない。可愛いし」「そんな問題じゃねぇー! こんなじゃぁ、恥ずかしくて外も歩けないだろうがー!」

「そう? 別に平気だけど…」

透はあっけらかんと言う

「お前と一緒にするな!」「あー、酷い言い方…」

あゆが目を擦りながら部屋から出て来る

「おはよ〜」

あゆに見られたら…物凄くまずい!

逃げようとすると、透が俺の肩を掴んであゆの方を向かせる

「あゆちゃん。どうかしら?」「あれ〜? 何で森本君が…?」「えっとね、したいっていうから…」

「誰が言ったー」「あれ? 覚えてないの?」「じゃぁ、何時だよ?」「昨日の夕食の時!」

「このやろー! いい加減なこと言いやがって…」

そう言って、透の胸倉を掴む

「いい加減とは、失礼ねー」「可愛いからいいじゃないと思うよ」「あん! 何か言ったか…」

そう言ってあゆをギロッと睨みつける

「そうだー! 二人で、出かけて来たら?」「いいんですか!」

あゆは目を輝かせる

何でそこで、目を輝かせる

「俺は、部屋で着替えてくる」「そうそう、部屋の服は隠してあるから」

「何だとー! 何てことするんだよ!」「もー、自分がしたいって言っといて…」

「俺は言ってないって言ってるだろうがー!」「仕方がないわね。これを聞いても、まだ言えるかしら?」

透は一つのカセットを取り出す

「まさか…昨日の…」「そうよ!」

透はカセットをセットして再生する

『わ〜たよ、何でもしてやるよ』

俺の声だ…間違いない。しかし、覚えが無いんだが

「ね! はっきり言ってるでしょ?」「言ってるね」「判ったよ、行けば良いんだろ! 行けば!」

「いってらっしゃ〜い」

透は手を振りながら、俺達を送り出す

知った奴なんて、いないよなー?

「何処行く?」「何処でも…」「じゃぁ、服屋さん行こー!」

あゆは楽しそうに腕を上に上げる

「勝手にしてくれ…」

二人で服屋に向う

「なー、変じゃないか?」「ぜんぜん、そんなことないよ」「そうか…?」「女の人、そのものだよ」

あゆはニコニコと笑いながら言う

「それは誉めてるのか? 貶してるのか? どっちだ?」「もちろん! 誉めてるんだよ!」

うれしくねぇ

「あれ? 嬉しくないの? 綺麗だって言ってのに?」「言っとくが、俺はオカマじゃない!」

「それは知ってるよ」

あゆはあっけらかんと言う

「でも、本当に好きでしょ?」

スパン!

「いったい…」「で、透とどっちが可愛いんだ?」「う〜んと…森本君!」

喜んでいいのだろうか?

結局、何も買わずに店をでる

「次はねぇ…」「勝手に行って来い!」「えー! 一緒に行こうよー」

あゆはそう言って、俺の腕を引っ張る

「俺は、絶対に嫌だ!」「どうして?」

こんな格好で、恥ずかしくて入れるかよ

「ねー! 行こうよー」

あゆはグイグイと俺の腕を引っ張る

「絶対に嫌だ!」「ぶー!」「そんな顔してもダメだ! 俺は行かない!」「行くの!」

いきなり、あゆが凄い力で俺の事を引っ張り、そのまま店の中に入る

あゆってこんなに力あったのか…怒らせると怖いかもな

「いらっしゃいませ〜!」「見てくるね♪」「勝手にしろ」

無愛想にそう言って、シッシと手を振る

「どうして『いっしょに選んであげる』の一言が出てこないの?」「選んでほしいのか?」

「それは…」

あゆは紅い顔で、もじもじとする

「判ったよ!」「え!? 本当に!」「ああ…」

知った奴いないよな?

キョロキョロ…

うん! 誰もいない

あゆの服を選んやる

「これ何かどうだ?」「子供が着そうな奴だよ」「あゆには、似合うと思ったけど…」

「ボクは、そんなに子供じゃないよ!」

あゆはぶーと膨れる

「え!? そうだったのか? 気がつかなったぜ」「もしかして…ずっとそう思ってたの?」

「当たり前のことを聞くな!」「違うもん…胸だって、ちゃんとあるもん…」

「俺が悪かったよ…そんなにすねるなって…」「いいもん…いいもん…どうせ、私は子供だもん…」

あゆはいじけて、指で地面をいじいじとする

「だー、俺が悪かった。今度は本気で選んでやるから…」「本当!?」

あゆはぱーと明るい顔をする

さてと、どれが良いかな?

「これなんかどうだ?」「わー、いい感じだね」「着てみろよ」「うん♪」

あゆは試着しに行く。しばらくして、あゆはカーテンの間から顔をだす

「ねぇ…」「どうした?」「あのね…」「何だよ? 早く言えよ」「変じゃないかな?」

あゆはそう言って、ゆっくりとカーテンを開ける

ジー

「そ、そんなに見ないでよ…、恥ずかしいから…」「うん! 似合ってる」「本当に!」

ニッコリと笑いOKサインをだすと、あゆは凄く嬉しそうな顔をする

「じゃぁ、これ買うね!」

何で、いちいち報告するんだ?

「次は、森本君だね」「はい!?」「だって、せっかく来たんだし…」「ちょっと待て…俺は男だぞ…」

「知ってるよ」

あゆはあっけらかんと言う

「だったら…」「今は、女の子だよ」

あゆはニッコリと笑いながら言う

「だから。全然おかしくないよ」「わーたよ! 今日だけだぞ! 良いな!」「やったー♪」

あゆはすごく嬉しそうに服を選ぶ

何でこうなるんだ?

「ねぇねぇ…」「決まったか?」「これ!」

げっ! まじで選んだのかよこいつ

「嫌だった?」「べ、別に…。ちょっと待ってろ!」「うん♪ 楽しみに待ってる」

更衣室に入って着替る

「これで、満足か?」「わー。やっぱり、似合うね」「そ、そうか?」

照れくさそうに笑う

「そうだよ、次はこれ!」「まだあるのか!」「うん♪」

こうなったら、やけくそだー!

あゆが差し出す服を、手当たり次第に着てみせる

「どうだ! これで満足か…?」「うん!」「じゃぁ、帰るぞ!」「あ、待って…」

「これ、買わないの?」

あゆは服を持ち上げないがら言う

「はい? 何で俺が買わないといけないんだ?」「だって、気に入ってたんでしょ?」

「誰が気に入るか!」

「えー! じゃぁ、さっきに笑顔をは嘘だったの?」「はい!?」「さっきは、すごく嬉しそうだったから…」

「お、俺が…?」「ほかに誰がいるの?」

それもそうか

頭をポリポリと掻く。結局、全部買うはめになった

「ありがとうございました」

店を出て。ファーストフード店に入る

「よかったね」「何が?」「これで、またその格好ができるから」

あゆの頬を引っ張る

「そんなことを平気で言うのは、この口かー! えー!」「ひたいよ…」

パッ!

「じゃぁ…もうしないの?」「誰がするか! もう、二度とごめんだ!」

あゆはそれを聞いて、残念そうな顔をする

「初歩的な質問するが…」「何…?」「こんな格好する俺と、しない俺どっちがいいんだ?」

「するほう!」

ガン!

机で頭をぶつける

「何で…そうなるんだよ…」「だって、こっちの方が可愛いから!」

「可愛いって…」「嫌なの?」「嫌だ!」「どうして?」「聞くな!」「教えてよー」

あゆは俺の腕を引っ張る

「ねぇ、教えて…」「ねぇねぇ…」「だー! 煩い!」「じゃぁ、教えてくれる?」「判ったかよ!」

「どうしてなの?」「今は言えん!」「えー! どうして? どうして?」

あゆはさっきにまして、腕を引っ張る。

「だー! 鬱陶しい!」「じゃぁ、教えて?」「ヤダ!」「ぶー!」「今は言えないが、帰ったら教えてやる」

「本当…?」「本当だ…」「じゃぁ、急いで帰ろ!」

あゆはそう言って、俺の腕を引っ張る。そして、家についてあゆが興味心身といった顔で、俺の顔を見る。

「何だよ?」「教えて?」「何を?」「あー! もう忘れてる!」

「何のことだ?」「アレだよ!」「アレ…? あー、アレか。あゆが子供服が似合うって話だろ!」

愉快そうに笑いながら言う

「違うよー! あそこで、教えてくれるって言ったよ!」「だから、何のことだ?」

「本当に忘れてるの?」「だから何のこと?」

あゆは少し膨れ面になる「あの事だよ…」「あの事か…」「そうだよ、あのことだよ」

「あゆが毎朝、俺のベットで寝てる…」「違うよ! ねぇ…もしかして、わざと言ってる?」

「さてな…」「あー! やっぱりそうなんだー! いいもん、このこと皆に話すから」

あゆは半泣き状態で言う

「皆…? 皆って誰だよ?」「学校の皆だよ! 『森本君は、女装が趣味だって』言ってやるもん!」

「げっ! それは困る…」「なら教えて♪」

あゆは、さっきとはうって変わって、ニコニコと笑う。この時のあゆは子悪魔に見えた

「この格好は、好きじゃないからだ」「え!? それだけ…?」

あゆはポカーンと俺のことを見る

「ああ…それだけだ!」「却下!」

ズル…

「何で却下! 何でだよ?」「まともな理由じゃないから」「なら、何て言えば良いんだ?」

「納得できる、理由を言ってくれたら良いよ」「納得ねぇ…」「うーん…」

理由を考えている間も、あゆはジーと俺の事を見てくる。結局、あゆが納得しそうな言い訳は思いつかなかった

結局、たまにするってことで、あゆを納得させる

「ねぇ…」「今度は何?」「その格好してる時くらい、男言葉はやめない?」

「何で? 男なんだからおかしなこと無いだろ?」

「でも、やっぱり外見と言葉遣いが違ったら、違和感があるよ」

「俺は別にかまわん!」「いいでしょ、少しだけでも…ね?」「何で、そこまでこだわるんだ?」

「だって…」

あゆはもじもじとする

「もしかして、可愛いからとか言うのか?」「うん♪」

やっぱりか

「これだけは絶対に譲らん!」「えー! 良いでしょ…少しだけ」「理由なんて聞くなよ、聞いても答えんがな」

「ぶー!」「俺はあいつみたいには、なりたくないからな!」「ぶー!」

「そうやって、すぐにはぶてるところ。まだまだ、子供だな!」

そう言って愉快そうに笑う

「違うもん! 大人だもん!」「はいはい…大人ね…」

「あー! 今どうでもいいとか思ってた!」「そうだ! 何が悪い、小学生…」「違うもん! ちゃんと胸あるもん!」

あゆは胸を突き出す

「へー、どれくらいあるんだ?」

あゆは小声で言う

「聞こえないぞー!」

あゆは黙ったままで下を向く

「何だ。結局、言えないじゃんか」「う〜」

そんなあゆの顔を見て笑う

第五章に続く


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