日常 -第三章-
ジリリリリ……

時計…時計…

カチ

うーん…

うっすらと目を開けて、横を見ると予想通りあゆが眠っていた

「すーすー」「あゆ…朝だぞー」

ゆさゆさ…

「ん? おはよ…」「また、起しに来て一緒に寝たのか?」「うん…」

あゆはゆっくりと頷く

「これ何本に見える〜?」

三本指を立てて、あゆの前にだす

「6本…」

ダメだ…完全に寝ぼけてる。それか、寝てるのか

「すーすー」「だから…寝るなー!」「ふぇ…?」「ほら! 学校行くぞ!」

「今日は、休みだよ…」

あゆは布団に潜る

「そうだよ、だからおやすみー」「ああ、おやすみ…って違うだろ!」「すーすー」

たくっ! もう寝やがったか

部屋を出てる

「おはよ〜」「う〜す!」「今日も、就職試験なのか?」「そうだ! かったるいよな〜」

透はめんどくさそうに言う

「頑張ってこいよ!」「任せとけ!」

透はグッと親指を立てる

「そうそう、朝飯そこに置いてあるからな」「これ、どっちで作ったんだ?」「もちろん、こっちだ!」

透は自信満々に言う

「なら、食わん!」「何でだよ?」「死にたくないからな」「あのなー、言って良いこと悪いことがあるだろがー」

「それより、時間はいいのか?」「あ! まずい!」

透は慌てて出て行く

朝っぱらから、騒がしいやつだな

コップに麦茶を注いで飲みながら、テーブルの上に置いてある朝食を眺める

せっかく作ってあるんだし…食べてやるか

部屋のドアが開く

「おはよ〜、良い匂いがするね」「あゆも食べるか?」「何を?」「これ!」

テーブルの上の物を指差す

「朝ご飯! 食べる食べる…」「ほい!」

あゆの前にそれを置く

「有難う」

あゆが朝食を食べ始める。一口食べて、顔色がサーと変わる

「上手いか?」「まずいよ…」

あゆは涙目で言う

「それはそうだろうな、男のほうで作ったんだからな…」「もしかして、ボクに毒味させたの?」

あゆはウルウルとしながら、俺の顔をみる

「よく判ったな」「うー、ひどいよー」「少し待ってろ、簡単な物ならできるからな…」「うん、判った…」

食パンをトースターに入れて、目玉焼きを作る

「醤油とってー」「醤油つけるのか?」「そうだよ」

あゆはさも当然といっ顔をする

「変わってるなー」「そうかな…?」

チン!

「ジャムはなんにする?」「イチゴ!」「了解!」

冷蔵庫を開けてイチゴジャムを探す

えっと…。苺…イチゴっと。お、あったあった

「さてと、コーヒーと紅茶どっちがいい?」「紅茶!」「了解」

確かこの辺りに…あった!

「お待ちどうさま」「いただきます!」「いただきます」「今日は何し来たんだ?」

「ほのへー」

あゆはもごもごしながら言う

「口の中身を飲み込んでから話せ!」「ほかった」

「それで…休みなのに男の部屋に忍び込んで、添い寝する理由を聞かせてもらいましょうか…」

「あのね。今日は、真琴が家にいないから寂しくて…」「だからって。普通…添い寝するか?」

「ダメ…?」

あゆはジーと俺の方を見てくる

「別に構わないぞ…」「じゃー! 明日も来るね♪」「お、おい…。明日もって」

「真琴ね、出かけて帰って来ないんだ〜」「何でまた?」「知らない…」「なら、家に泊まるか?」

「いいの!」「ああ、両親はいないし」

変な奴は居るがな

「森本君の両親て、海外にいるんだよね?」「そうだ、子供のことなんて考えもしない、最低の親がな」

「だめだよー! そんな言いかたしたら」「良いだろ。俺の両親なんだから」「そうだけど…」

あゆは暗い顔をする

「そっか…あゆの両親は」「うん…」「悪かったな…」「ううん、気にしなくていいよ」

「今日は、来るのか?」「良いんだったら…」「良いぞ!」

そう言ってニッコリと笑う

「本当に!」「あぁ…。そのかわり、襲われても文句言うなよ!」「大丈夫だよ!」

あゆは自信たっぷりに言う

何でそんなに、きっぱりと言えるだ?

「何で、そう思うんだ?」「だって! お兄さんは間違いなくし無いし!」「それは…そうだな」

「ね! 安心でしょ」

あゆはニコニコと笑う

「俺は、どうなんだ?」「森本君なら全然OK!」

OKって

「真琴って、何時から帰ってるんだ?」「昨日の、夜からだよ」「夜?」「そうだよ」

「どうしたの? 何かあったの?」「嫌…別に何も…」

昨日、来た時はそんなことを一言も言ってなかった

「着替えとか、取りに行かないのか?」「そうだね」「これ片付けたら、一緒に行くか」「うん♪」

食べ終わって食器を片付ける

「終わったぞ」「早く行こうよ♪」「そうだな」

あゆと一緒に真琴に向う

「お兄さんって、二重人格なの?」「ど、どうした急に!?」

「この前、男の時にあったんだけど、感じが全然違うから」「まぁ、そうかもな…」

そのまましばらく、歩いて真琴の家の前にやって来る

「取りに行って来るね」「一人で大丈夫か?」「大丈夫だよ」

あゆは玄関に向って行き、しばらくして戻って来る

「どうした?」「鍵が無いよ」

あゆは今にも泣きそうな顔で言う

「何…! どうするんだよ?」「どうしよー?」「どっかに置いてないのか?」

「あるんだけど…」「もしかして、それを忘れたとか…」

あゆは涙目で頷く

まったく、こいつは

「探すしかないな」「うん…」

玄関の所に行く

「どのあたりに置いてあるんだ?」「あの辺…」

あゆが言った所を探してみるが、何も見つからなかった

「ここであってるのか?」「間違えないよー!」「一つ聞いてもいいか?」「何?」

「あゆは、どうやって家を出たんだ?」

「玄関から出て…鍵を閉めて…」「確かに閉めたんだな!」「う、うん…」

「『鍵持てたー』とかってオチだったら…しばくぞ!」「ちょっと待ってね」

あゆはポケットを探し始める

「あ! あったー!」

スパン!

「なんで殴るの?」「前もって言った筈だ。俺は、そんなオチはいらないと…」

「うー、痛いよー」

あゆは半泣きで俺の方を見る

「さっさと着替えを持って帰るぞ!」「うー」

あゆは、鍵を開けようとしてあと、驚いた顔で様子こっちを見る

「今度は何だ?」「あのね…」「『鍵が開いてるー』とか言ったら本気で殴る!」

「それはやだよー」「判った。殴らんから言ってみろ」「うん…鍵が開いてる」

ガン!

「さっき、殴らないって言ったのに…」「殴ったんじゃない! 叩いたんだ!」

「真琴が、帰って来てるんじゃないのか?」「それだと、御泊りできないよー」

あゆはすごく残念そうな顔をする

「それは残念だな」

全然そんな風に聞こえなように言う

「すごく…嬉しそうだよ」「気にするな」「すごく、気にするよ」「さーて、中に入ってみるか」

あゆと一緒に中に入ってみる

「あー!?」「ど、どうした?」「真琴の靴がある」「はー。それはそうだろ…ここは真琴の家なんだから」

呆れた顔で言う

「違うよー。昨日は、これを履いて行ってんだよ!」「だとしたら…帰って来てるってことか?」

「お泊り中止…」

あゆはがっかりして、肩を落とす

「真琴だって鬼じゃないから、言えば許してくれるさ」

あ、鬼だったか

「そうだね」

あゆはニコニコと笑いながら言う

「さてと、真琴を探すか」「たぶん、部屋に居ると思うよ」

真琴の部屋の前に来た時、中から何か聞こえて来る事に気がつく

「何だ?」

ドアに耳をあてて、聞こうとした時ドアが開いて、顔面をぶつける

「いったー!」「何やっての?」

真琴は馬鹿にしたような顔で言う

「うおおおおお…! 誰のせいでなったと思ってるんだ!」「誰?」

「お前だよ。お前!」「私?」

「そうだ! それに、いきなり出かけて帰って来ないで。何をしてたんだよ?」

「何だって、別に良いでしょ?」「あゆが話があるってさ」

あゆを前にだす

「あのね…今日ね…。お泊り…したいの…」「誰の所に?」

あゆはゆっくりと俺を指差さす

「ふ〜ん。私が帰ったこないと思って、そんな話してたんだー」

真琴はシラーと俺の方を見る

「なんだよ…その疑いの眼差しわー! これは…あゆが一人で寂しいって言ったから…」

「いいわよ」「え!?」

あゆと二人で目をパチクリさせる

「何なの? その顔…」「いや…すんなりとOKしたから…」

あゆもウンウンと頷く

「私は、これから行かないと行けない所があるから」

そう言って、真琴は家を出てって行く

「ま、許しもでたんだ! 良かったな」

そう言ってあゆの頭をポンと叩く

「うん♪」「着替えとって帰るぞ」「そうだね♪」

あゆはご機嫌に部屋に消えてゆく

そんなに嬉しいのか?

しばらく待っていると、あゆが荷物を持って来る

「おまたせー♪」「ちょっと待て、なんで旅行鞄なんだ?」「おかしいかなー?」

あゆは鞄を見て首を傾げる

「いったい何日、泊まるつもりなんだ?」「真琴が帰って来るまで!」

あゆはキッパリと言う

「すぐに帰ってくるだろ?」「そうだね…」「だから、もう少し荷物を少なくしろ!」

「これでも…めいっぱい減らしたんだよ…」

あー、そうですか

「信じてないでしょ!」「その鞄を見せられて、信じろって方が無理がある! とにかく行くぞ!」

そう言って先に家から出る

「あ、待ってよー!」

あゆも一生懸命に、旅行鞄を抱えてついてくる。だが、途中で転んだりしているので、結局持ってやった

「しかし、かなり重いなー。何が入ってるんだ?」「着替えだよ」

あゆはニコニコと笑いながら言う

「何日分の?」「一週間!」

思わず、あゆに蹴りを食らわせる

「いったいー! 蹴らないでよ!」「そんなに長く居るつもりなのか?」「そうだよ!」

「何で、そんなに長くなるんだよ?」「これ」

あゆは、手紙を差し出す

「何だこれ?」「読んでみて」

荷物を置いて見てみる

『あゆのことよろしくね〜、用事でしばらく留守にしま〜す! by真琴』

「な、何だよ、この手紙わー」「だからね…」「たく…仕方がねーなー」「やったー♪」

あゆは嬉しそうに飛び跳ねる

「まさか…これ、あゆが書いたんじゃないだろうな?」「いくらなんでも、そこまでしないよ」

疑いの眼差しであゆを見る

「少しは考えたよ…」「ん? 今何か言ったか?」「別にー。家に向ってレッツゴー!」

「はいはい…」

あゆは元気良く走り出す

「早くー! 遅いよー」「あのなぁ…こっちは荷物を持ってるんだぞ」「そうだったね」

「忘れてたのか?」「すっかり!」

あゆはテヘっと舌を出して、自分の頭をコツンと叩く

「自分で持て!」「ヤダ! だって、重たいんだも!」

自分で判ったるのか…なら、詰め込むなよ

「それより。教科書とかはどうしたんだ?」「中に入ってるよ」

そうか…だから、重たいのかーってこの重さは、それだけじゃないと思うが



「ドア開けてくれ」「ほい!」

中に入って荷物を置く

「疲れたー」「お疲れ様」「どうも…」「なんか、怒ってる?」「別にー」

「怒ってるよねー?」「そうね、怒ってるわね」「うわー! 帰ってたのか!」

「何よー。化け物でも見たように驚いて! まったく、失礼しちゃうわ!」

透はぷ〜と膨れる

「そうだ、しばらくあゆをあずかるから」「もう知ってるわよ」「え!? 何で?」

「真琴ちゃんから、電話があったもん!」

あのやろ、俺には何も言わないで

「あゆちゃんちょっと、良いかしら?」「何でですか?」「良いから着いて来て」

透はあゆを一つの部屋の前に連れて行く。

「さ、ここがあゆちゃんのお部屋よ!」「わー! すごい…」

ん? 確かここは物置として使ってはずだが。それにこの家具はどっから?

「細かい事を気にしたらダメよ!」「お前…いったい、何をした?」「え!? 部屋の飾りつけ位…」

「そうじゃなくって…これを何処で仕入れてきたかって聞いてんだ!」「それは教えられない!」

「あっそ。俺は、もう寝るよ」

そう言って部屋に入って、そのまま眠る

第四章に続く


戻る