猫 |
「それでね…茜がなんて言ったと思う?」 水月が、台所で昼飯を作りながら楽しそうに話す。 「さあ…」 雑誌を読みながら、水月の問いかけに答える。 ピンポーン! 「俺がでるよ」「お願い…」 雑誌を手近な所に置いて玄関に行く。ドアを開けると、帽子を深くかぶり下を向いた涼宮が立っていた。 「よう、涼宮」 涼宮は、ゆっくりと顔をあげる。そして、俺の顔を見るなり泣き出す。 「お、おい…どうしたんだよ…」 訳も判らず慌てふためいていると、水月やってくる。 「どうしたの?」「水月……」 涼宮は泣きながら水月に抱きつく。その時、涼宮がかぶっていた帽子が床に落ちる。 涼宮の頭には、猫耳があった。それを見て、水月は小刻みに震えだす。 泣いている涼宮+猫耳=俺が無理やりつけた。まずい…物凄くまずい…これは何とかしないと。 「み、水月さん…俺はこれに関しては無関係…」「この…変体が〜!」 バコン! 「やっぱり………キラン☆」 「で…なんでそんな格好をしてんだ? まさか、コスプレか?」 ガン! 「いってな〜!」「馬鹿な事を言わないの! それで、どうしたの?」「うん…」 涼宮はゆっくりと語りだす。 前から欲しかった絵本が買えて、喜んで帰る時に一匹の猫さんがいるのに気がつく。 「あ、猫さんだ…おいで…」 その猫さんはトコトコと私の方にやって来て、私の指をペロペロとなめる。 「くすぐったいよ〜」「ニャ〜!」「もしかして、捨てられたの?」「ニャー」 猫さんは悲しく鳴く。 「その体…貰った!」「え…? キャー!」 「へー、そんなことがあったのか…」「で、ここに来たって訳ね」 涼宮は黙ったまま頷く。 「きっと、猫に取り付かれたのね」「え〜!」「でも、その猫が何を望んでいるかわからないと…」 「そうだな。この世に未練があるから残ってるんだし、満足すれば成仏するだろうし」 「猫は何も言ってこないの?」「えっとね…」 涼宮は顔を赤くする。 「どうしたの?」「……して欲しいって」 涼宮は最初の方を小声で言う。 「え、何て言ったの?」「もっとはっきり言ってくれよ…」「抱いて…欲しいって…」 それを聞いて、俺と水月は固まる。涼宮は顔を真っ赤にする。 「仕方が無いな、それが望みなら俺が…」 そう言って服を脱ぎ始める。 しばらくお待ち下さい。ただいまボコボコにされています。 「とりあえず、孝之に電話してみるわ」「お願い…」「もしもし…私。今大丈夫? 遙がね…」 電話を切って遙の方を見る。 「すぐ来るって」「遙〜! 大丈夫か!?」「孝之君…」 遙は孝之に抱きつく。 ちょ、ちょっと…嘘でしょ。今電話したのよ…恋は国境も越えるって訳? 呆れ顔で二人のその光景を眺める。 「で、これからどうするの?」「俺はそのままでも良いと思うぞ。可愛いし…いだだだだ…」 にやけた顔で言うと、水月に耳を引っ張られる。 「馬鹿なことを言わないの!」「とりあえず、俺の家に連れて帰るよ」 孝之は、自分の膝の上で丸くなっている涼宮を見ながら言う。 「それが一番かもね」「俺は…」 水月に睨まれ小さくなる。 「孝之。後はよろしくね」「ああ、任せてくれ。遙、帰るぞ」 孝之は涼宮を連れて帰って行く。 「これで良かったのかしら?」「良かったんじゃないか? 俺達じゃあ何も出来ないし」 「それもそうね」 その後、水月と一緒に昼食を食べる。この後、涼宮がもとに戻ったかは謎のままだである |
ーENDー |