戻らない記憶 -第三章- |
恵に起された 「お兄ちゃん、起きてよ〜」 だー!煩いな〜 「お兄ちゃん!」 ピョン! 恵がベットに乗るのが判ったので、慌てて起きる 「やっと起きた〜!」「何だよ…こんな朝早くに…」 不機嫌顔で恵を見る 「お弁当!」 恵はにっこりと笑いながらそう答える 「は〜?」「だ・か・ら!お弁当を作って!」「何言ってんだよ。学食があるだろ?」 「あるけど…美味しくないもん…」 あ、さようですか… 「自分で作れよ…」「ぶー!作れたら、頼まないよ」 それもそうだな 「早くー!」 恵は飛び跳ねるようなそぶりを見せる 「わー!判ったから部屋から出てろ…」「どうして…?」「着替えをするからだ。判ったら出て行ってくれ!」 「うん!判った。でも、急いでね」 恵は部屋を出て行く これでまた寝れる。おやすみ〜 ゆっくりと目を閉じる 「お兄ちゃん!」「どわ〜!まだ居たのか…」「居たのかじゃないよ!早く作って!」 さすが恵…飯に関してはかんが鋭いな 「あ、そうだ…桜いや宮本さんに頼めよ…」「桜さんはもう居ないもん!」「はい…どうして?」 「バイトに行ったんだよ…」 宮本さんがバイト… 「何のバイトしてんだ?」「接客業だって言ってたよ」 客をぶっ飛ばしてなければ良いが… 「そんなことより…は〜や〜く〜」 恵は服を引っ張る 「判ったよ…着替えるから出て行ってくれ…」「今度は本当…?」 恵は疑いのまなざしで見てくる 「この目が嘘を云ってるか?」 恵は真剣に目をみる 「本当だ。早く来てね♪」「おう!任せとけ!」 恵が部屋から出て行くのを確認して、ドアに鍵を掛けて寝る 「お兄ちゃん!」 ドス!ドス! 「ぐぇ!」「嘘をつくお兄ちゃんなんて…こうしてやるー!」 ドス!ドス! 「ぐぇ…どうやって入って来た…ぐぇ!」「お兄ちゃんもまだまだね」 恵は鍵を見せる 「ま、まさか!」「そうだよ!この部屋の鍵だよ」「よこせ!」 取り上げようとした時、恵が飛び跳ねる 「ウギャー!」 「弁当箱はどれだ?」「これ♪」 ドン! 「ちょっと待て!これって…」「お弁当箱♪」 ニッコリと笑いながら、常識はずれのこと良く平気でいえるな〜 変な事に関心する どうみても重箱だろ 「本当にこれなのか?」「そうだよ♪」 あはははは…。あの食欲を満たすには、これ位ないと足りないな…たぶん 「希望は無いのか?これは、絶対に入れて欲しいとか。これは入れないで〜ってのは無いのか?」 「何でも食べれるから大丈夫だよ!」「そうか…今から作ってやるからな…」「わ〜い♪わ〜い♪」 「だから、あっちでテレビでも見てろ」「はーい!」 恵は、テレビの前に走って行く さてと始めるか 料理を始め、1時間程で作り上げる 「出来たぞ!」 あ〜疲れた… 「わー」「どうだ…すごいだろ〜」「うん!次は、朝ご飯だね!」 な、何〜!それまで、俺が作るのかー! 「味噌汁とご飯と漬物で良いか?」「それじゃあ…少ないよ〜」 「味噌汁は鍋で、ご飯は炊飯器ごめだ。これで文句無いだろ?」「お漬物は…?」 「いるだけ持って行け…」「わ〜い♪わ〜い♪」 恵は、家中の漬物を抱えて持っていく 良く持てるなー。それにしても、あれが一瞬で消えるんだよな… 炊飯器に米をセットして…スイッチぽん! 次は味噌汁っと…。玉ねぎと味噌と豆腐っと…これくらいかな? バリボリ… もう、食べてるんですか…恵さん 味噌汁の鍋を抱えて恵のところに行く 「出来たぞ〜!」 この時には、漬物は影も形もなかったことは、言うまでもない… 「ご飯は?」「待ってろ、今持ってきてやる」 大急ぎで、炊飯器を取りに行って、急いで帰る 「ほら!」「終わったら言えよ…」「は〜い♪」 すぐに、終わるかもしれないけど… 台所に戻ろうとして2、3歩進んだ時に恵が後ろから 「終わったよ〜♪」「ごちそうさまは…?」「ごちそうさまでした…」「学校、頑張れよ」 「頑張るよ!あ、晩御飯はカレーが良いなー」 恵はぶりっ子みたいに言う 「はいはい…」 ヤレヤレ…何でこんなに疲れるんだ? 「絶対だよ!」「だー!判ったから早く行け!」「本当に…?」 恵は疑いのまなざしで見てくる 「ぐずぐずしてると、遅刻するぞ!」「大丈夫だよ♪」「え!?」「足速いから!」 あ…そうですか 「早く行かないと、今晩のカレーは無しだぞ!」「え〜!それはやだよ〜」 「嫌なら、どうしたら良いか判るな?」「うん…行って来ます!」「行ってらっしゃい…」 手を振りながら送りだす さ〜て…寝るか 部屋に入ってベットに横になって、目を閉じる ドタドタ… 何だ…この騒音は…? 部屋から出てみると、恵が自分の部屋の中で何かをしていた 「何してるんだ〜?」「お兄ちゃん、知らない?」「何を…?」「アレだよ〜」 アレって言われてもな〜。さっぱり判らんが 「どんなのだ?」「四角いやつ…」 四角? 「色は?」「赤!」 四角て赤い物ねー。まさか…アレのことか? 「もしかして…自分の弁当箱か?」「そうだよ。アレが無いと、死んじゃうよー」 「大げさな奴だなー」 ん…?もしかして、居間ににあるかも 居間に行ってみると、しっかり机の上に置かれていた 「あったぞ…」「本当に!」「こんなことで、嘘をついても意味無いだろ?」 「そうかな〜?お兄ちゃんだったら…」「ほーそんなことを言うのか?教えてやらんぞ…」 「あーそんなこと言わないでー」「居間にあったぞ。中身は空だがな」 「それは無いよ!」 恵はきっぱりと言い切る 「どうして…?」「お兄ちゃんだと、食べきれないから!」 それも…そうか 「時間は大丈夫なのか?」 恵は、時計をじっと眺めて、ゆっくりとこっちをみる 「お兄ちゃん…」「どうした…?」「これって9時だよね?」 「そうだろ〜、短針が9を指して長針が12を指してるんだからな…」 「うわー!遅刻だよー」「たまには遅刻くらい…」「恵はたまにじゃないよ…」「は、はい…?」 「毎日だもん!」 あははは…毎日ですか。あれだけ足が速いになぜ? 「とにかく急げ!」 恵の背中をおして玄関まで連れて行く 「めいっぱいぶっ飛ばせば、それなら何とかなるって」「ならないよ〜」 まともに返すなよ 「1時間目も、受けれなくなるぞ〜!」「それはやだよ〜」 「ここは、陸上部の部長さんの脚力の見せ所だな」「行ってきま〜す…」 恵はすごい勢い出って行く。後を追って出てみると、何処に姿形は無かった さすがにすごいな…。アスファルトから煙がたってる さてと、目もすっかり覚めちまったな。仕方がない…朝飯でも作るか〜 中に入って、台所に行きあるこのとにきがつく 「だ〜!空っぽじゃんか〜」 冷蔵庫の中はものけのから、漬物なども全部食べられている これじゃ〜どうし様もないなー。しょ〜がない、あれでも探すか〜 「カップ麺や〜い!」 ガサガサ… そう言いながら、戸棚をあさって…。あれ〜?昨日は、ここにあったんだけどな〜 あ!もしかして、恵が…。あのやろ〜俺を餓死させるつもりか〜? 帰ってきたら、覚えてろよ…。食べ物の恨みは怖いからなー グ〜 腹減ったな〜 「恵の馬鹿やろ〜」 買い物にでも行って来るか。財布を持って家を出る さて、どっちに行けば良いんだ? キョロキョロ よし!こっちに決めた 決めた方に向かって歩きだす こっちで、あってるんだろうか?心配だなー そんことを考えているうちに、スーパーにつく 何とか、無事についてたな 中に入って、カレーの材料とカップ麺少々とその他いろいろと、かごに入れてレジに行く あれ?あれって宮本さんじゃないか? 「元気か〜?」「隆弘!どうしてここに居るの?」 「いちゃ〜悪いのかよ?お前のバイト先の売上げに貢献してやってるんだから、感謝しろ!」 「はいはい…」 そう言って、宮本さんはレジを打ち始める 「今日は、カレーなんだ〜」「恵の要望だからな〜」「そうなんだ〜」「8万5千円になります!」 財布から言われて分だけ出そうとしてやめる 「ちょっと待て…そんなに高いのか?」「孝弘だから!」 宮本さんはあっけらかんと答える 「ちゃんとした、額教えろ!」「判ったわよ…」 清算を済ませて家に帰る 「ただいま〜」「お帰り〜!」 恵が飛び付いて来る 「うわ〜!」 思わず尻餅をついた 「学校はどうした?」「今日は、休みだったの〜」 休みは覚えてるだろ…普通 「休みの日に、俺はたたき起こされ、弁当を作らされたのか?」「うん。そうだよ!」 恵はニコニコ笑いながら答える 「お兄ちゃんは、何処行ってきたの?」「買い物だよ…」 買い物袋を恵に見せる 「一人で行けたの?」「俺は子供かー」「え…!?違うの?」 絞め殺したろうかー 「俺はこれから、これ食べるが…やらんぞ!」「え〜!意地悪しないで、ちょう〜だい…」 「朝飯食べたろうが〜」「走たら、お腹がすいた!」 スピード食い、そしてスピード消化てか。変人だな… 「絶対にやらんからな!いるんだったら、自分で買って来い!」「うん。行ってくる」 恵はまた勢いよく飛び出して行く さてと…頂きますか〜 お湯を注いで3分待つ そろそろだな 蓋を開けて食べ始る 「たっだいま〜!」「ほかえり」 ドン! 恵はかなり大きな買い物袋を机の上に置く 「そ、そんだけも…買ったのか?」「そうだよ。足りないもん!」 さようですか〜 ズルズル… ズズズズ… 「ぷは〜!ごちそうさま」 あれ、やけに静かだな? 恵のところに行って見ると、すでに全部食べ終わって眠っていた よく寝て、よく食べる奴だな〜。それにしても、起きてる時は食べてるんじゃないか? 仕方がない、運んでやるか 恵を抱えて部屋まで運んぶ あれだけの量を、片付けろのは骨だな ごみ袋片手に片付けをする 「ふ〜やっと終わった〜」 ごみを台所の隅において、自分の部屋に入って漫画を読んで時間をつぶす 時計を見てみると、12時を指していた 恵は、まだ起きてないようだった 腹もすいてないし…別に良いか そのまま、漫画を読み続ける しばらくして、また時計を見る 1時か〜そろそろ起きるだろうな 台所に行き、カップ麺にお湯を入れて待っていると、恵がふらふら〜っと部屋から現れる 匂いにつられたか…それとも条件反射か…どっちだろ? 「美味しそうな匂いがする〜」 恵は目を瞑ったままこっちにやって来る 「ちゃんと起きたら、食わせてやる」 すると、恵の目がカッと開く 「おはよう。良く寝れてか?」「あれ〜?何でここに居るの?」 恵は首を傾げる 「俺に聞くな。少しは自分で考えろ」「う〜ん…」 恵が答えをだす間に3分がたつ 「答えはでたか?」「う〜でない…」「なら、これはおわずけだな…」 そういってカップ麺をさげる 「え〜!酷いよ。鬼だよ。悪魔だよ。人でなしだよ」 酷い言われようだな〜 「答えは、出てないんだろ?」「う、うん…」「なら、これは俺の物だ」「ダメー!」 恵はすごい勢いで突っ込んで来るが、それをひらりとかわして、食べ始める ズルズル… 「おいち〜」 わざとらしく祝福の顔で恵を見る 「恨むんだったら、自分の無能さを恨むんだな」 恵は冷蔵庫の前に行く 「中の物を食べてもいいが、晩飯はなくなるぞ!」「え〜」「少しは、我慢ってこと覚えた方が身のためだぞ」 「そんな〜このままだと、お腹と背中の皮が引っ付いて、死んじゃうよ〜」 古典的な例えをする奴だなー 「人間は、一食や二食抜いたからって死にやしない」 恵はじーと俺のカップ麺を眺める 「自分で買ってきたのはもう無いのか?」 恵は黙って頷く マジですか…。30個はあったと思うが…それがもう無いとは…やっぱり化け物だ 「一個くらいなら、恵んでやらんこともない!」「本当に!」 恵は目を輝かせながら近づいて来る そんな喜ぶ事か?たかが、カップ麺だろ。ま、恵にとってはたかがではないかもしれんが… 「条件がある!」「何?条件って…?」「これからは、俺の眠りを妨げるな!」 「恵がいつお兄ちゃんの睡眠の邪魔したの?」 今日の朝だ!都合よく忘れてやがる 「判ったか?」「うん!判ったから、早く頂戴!」 恵は手を前に出しながらピョンピョン飛び跳ねる これは、絶対に判ってない! 「早く〜」「ほら!」 恵にカップ麺を投げてやる。恵は嬉しそうにそれを受け取る 「わ〜い♪わ〜い♪」「それだけだからな!」「え〜」「何だよ、一個って言ったろ」「でも〜」 恵は軽く上目遣いで見てくる 「だーめ!」「う〜」 恵は半泣きの顔でこっちを見てくる 「そんな顔してもやんら!」「う〜」 恵は今にも泣き出しそうな顔をする 「…わ〜たよ!あと、いくつ欲しいんだ?」 それを聞いた恵は猫のように反応する 「う〜んとねぇ…20個!」「あほか、そんなにあるか!」「え〜無いの〜」「5個ならやる…」 「ちょ〜だい!」 恵はニコニコ笑いながら手を前に出す。その手にカップ麺を乗せてやる 「ほれ!」「わ〜い♪わ〜い♪」「後は、俺のだからな!」 恵はジーと残りを見つめる これは、どこかに隠しとかないと、俺の非常食が無くなる 残りをも持って自分の部屋に行く ここだったら、さすがに大丈夫だろ。部屋に夜這いかけてまで、これを食べたがると思うしな 部屋を出る時にも、鍵を閉めといた方がいいな 鍵を閉めて台所に置いてある、食いかけのカップ麺のところに行く 「無い!俺の食いかけのカップ麺が無い!」 慌てて辺りを探していると、恵がやって来て 「美味しかったよ〜」「た、食べたのか…」「うん!」 恵の頬を掴んで引っ張る 「この口か〜俺の昼飯を食べたのわ〜!」「ひたいよ〜」 しばらく引っ張ッた後で手を離す。恵はグスンとぐずりながら頬をさする 恵に常識を当てはめようとした、俺が馬鹿だったのか? 「凄く痛かった!」「あ〜悪かったよ…」「ん!」 恵は手を前に出す 「何だよ…この手は?」「慰謝料!」「は〜?」 まさか、慰謝料に俺のカップ麺を取り上げるつもりなのか? 「うん!そうだよ!」「かってに人の心を読むなー!」「えーそんなこと出来る人なんて居るの?」 居るだろ…俺の目の前に 「わーたよ。少し待ってろ…」「うん!」 部屋に行ってカップ麺もって帰って来る 「ほら!」 恵にカップ麺を渡す。恵は一生懸命に数えはじめる 「数が足りないとか言うなよ…」「足りない…」「はい…?」 恵は疑いの眼差しで、じっとこっちを見てくる 「だして!」「は〜?もう無いって…それで全部だ。俺の部屋を探しても良いぞ」 まずい…完全に疑ってる。たしかに、2、3個は隠したけど 「とにかく!それで全部だ。何と言われようが、無い物は無い!」「判った…」 ほ…何とか信じてくれたかー 部屋で本を読んでいると、恵が入って来る 「お腹すいた…」 シラーと恵を見る 「嘘こけ!」「本当だよ〜」 人の非常食まで食べて、お腹すいただと…ふざけるなよ 「たく…少し待ってろ、カレー作ってやるから〜」「カレー♪カレー♪」「だーそれ位で騒ぐなー」 台所に行って、カレーを作り始める 「辛さは、どれくらいが良いんだ?」「う〜ん」「超甘口とか言ったらぶっ飛ばす!」 「え〜、ぶっ飛ばされるの〜」 本気にするな…本気に… 「どれ位あれば足りるんだ〜?」「う〜ん…鍋一つ!」「ご飯は、どうする?」「う〜ん…炊飯器一個!」 なるほど…。ところで俺のは? ピンポーン 「はーい」 恵は玄関に向って行く 誰だ…こんな時間に? 「桜さん。どうぞ〜」「え!?」 いったい…何しに来たんだ? 「う〜ん…良い匂い」「宮本さんも食べる?」「そうね、ちょうどお腹もすいてるし」 宮本さんはお腹を抑える 「量が減るけど、我慢しろよ!」「え〜!」「わがままを言うな!」「う〜」「よし!出来た!」 皿に盛り付けて宮本さんに渡しす 「有難う」「恵のは〜?」「少しくらい待てね〜のか?」 自分のをついで、残りを恵みに渡す 「あと、これもな」 ジャンボサラダを恵に渡す 「え〜、お野菜いらないよ〜」「好き嫌いは無いんだよな?だったら、黙って食え!」「う〜」 「これは、宮本さんの分」「有難う」 片付けをして椅子に座る 「いだたきま〜す!」「あんまり急いで食べると、体に良くないぞ…」「大丈夫だよ〜」 「宮本さんは、何で自分の家で食事しなの?」「え!?」 「ここに来るより家で食べた方が、楽しいのにな〜と思って…」 宮本さんは下向く 俺…やばいこと聞いたかな? 「お兄ちゃん、それは言っちゃ駄目なことなんだよ…」「え!?」「良いのよ。記憶が無いんだから…」 「判るように説明してくれよ…」「お兄ちゃん…桜さんの両親は…」 恵は悲しそうな目でこっちを見る 「もしかして…」 恵は静かに頷く 「すまない…とんでもないこと聞いて…」「気にしないで、孝弘は悪くないんだから…」 「でも…」「それより食べよ〜」 宮本さんの目には涙がたまっていた 「ほ〜ら、ささっとする〜」 宮本さんは笑いながら、俺の背中を思いっきり叩く その後も、いろいろと会話して楽しかったが、何処となく空気が重く感じれた 食事を終えると、宮本さんはすぐに家に帰っていった 「お兄ちゃん…」「俺って、馬鹿だな。記憶が無いからって、なんでも許されるって勝手に思ってさ…」 机に手を付く 「お兄ちゃん…」 恵は心配そうにこっちを見る 「俺が、変なこと聞かなかったら…」「お兄ちゃんは悪くないよ〜」「え…」 恵の顔を見る 「だって!お兄ちゃんは、思ったこと言っただけだもん!だから…お兄ちゃんは全然悪くないよ…」 「それがいけなかったんだ。俺は、相手のことも考えないで…」「それはそうだけど…」 「俺は、宮本さんに酷いことしたよな〜。宮本さんは、それを必死で堪えていたのに… それを、俺が無意味にしたんだからな…」「お兄ちゃん、自分をそんなに攻めないで…」 恵は俺の方に近づこうとして、それをやめる 「攻めたくもなるさ、記憶さえはっきりとしてれば…」「もうやめよ、誰も悪くないんだから…」 恵の目には涙がたまっていた 「それは違うな、悪いのは俺だ。そう…この俺なんだよ!」 そう言って机を叩く |
ー第四章に続くー |