戻らない記憶 -第二章-
俺が投げるんだよな?確かこのボタンだったな…

画面の中のキャラがボールを投げる

よし!

だが、あっさり打たれる

「孝弘、変化球を使わないと…」「それって、どうやってやるんだ?」「教えたらダメ!」

「それも、そうね」

おい…納得するなよ!

「頼む!教えてくれ!」「お兄ちゃん…早く!」「畜生!この鬼!悪魔!」「早く!」

恵は服をグイグイと引っ張る

「わーたよ!」

確か…このキーをこうやって。その後は、このボタンだったよな?

ピッチャーは変化球を投げる。恵は見事に空振りをする

「あー!」「やったー!なるほど…こうやってやるのか」

「う〜、いきなり使うなんて酷いよ…」「恵ちゃん、勝負の世界は非常なのよ!」

あなたがそれを言うんですか?

「もう一丁」

スパン!

「判れば、簡単だな」「う〜、お兄ちゃんが急に強くなった。何かずるしなかった?」

「ズル?もともとの素質だ!」「孝弘って、記憶が無い方がまともよね」

それって、誉めてるのか貶してるのどっちですか?

「そうだね。前のお兄ちゃんだったら、こんなことすらしてくれなかったもん」

俺って何やってるんだ?

「恵は、今のお兄ちゃんの方が好きだなー」「私も、こっちの方が良いなー」

記憶が無くなる前の俺って、そんなに悪かったのか?

「それより、早くやってあげた方が良いんじゃない?」「あ!そっか!よし…これでもくらえー!」

「そうは、いかないもん!」

カキーン!

「お主…なかなか出来るな!」「お兄ちゃんの、妹ですから!エッヘン!」

威張ることじゃ無いと思うけど

「これならどうだ!」

スパン!

「あー!それ、反則!」「え!?そうなの?」「反則使ったから。お兄ちゃんの負けー!」

「俺の負けなのか?」

宮本さんが呆れ顔でこっちを見て来る

「何を間に受けてるの?」「え!?だって、反則負けって…」

「そんな訳、無いでしょ」

宮本さんが呆れ顔でこっちを見て来る

「え!?そうなの?」「桜さん、ばらすなんて酷いよー」「恵もセコイこと、考えないで実力でやりなさい!」

「だって…それだと勝てないもん…」

恵は半泣きになる

「いいよ、俺の負けで」

そう言ってニッコリ笑う

「え!?」「孝弘!」「本当に良いの?」「ああ…良いぞ」「やっぱり!こっちの、お兄ちゃんが良い!」

恵はそう言って飛びついてくる。そっと、恵の頭を撫でる

「そんなに、前の、俺って嫌だったか?」「うん!」

これまた、はっきりと言いうなー

「そうか…」

頭を撫でてやる

「嬉しい!」「兄妹でよくやるはねー。前のときには、絶対に考えれな光景だったけどね」

宮本さんはふっと笑う

俺って、そんなに人の反感を勝ってたのか?

「ところで…何時まで引っ付いてるの?」

頭を掻きながら宮本さんの方を見る

「それが…寝ちゃってるんだよ…」

ゆっくりと、恵を指差す

「恵ちゃんが?」「そう…」「まったく、しょうが無いはね…」

宮本さんは恵を抱えて『恵の部屋』と書かれて札が下がっている部屋に、運んで行った

「紅茶でも飲むか?」「うん!」

紅茶は…何処だ?

「紅茶の場所、判った〜?」「いや…」「確か、一番奥の棚の三段目の引出しの中よ」

えっと…これか?

開けてみると、確かに紅茶が入っていた

何で紅茶の在り処まで、知ってるんだ?恐ろしき…宮本さん

紅茶をいれて、宮本さんの所に行く

「お待たせ!」「本当に、やったの?」

宮本さんは驚いた顔でこっちを見る

「え!?前の俺は、こんなことしなかったのか?」「うん!」「前の俺って、何にもしなかったんだな」

「そうだよ!」

宮本さんはそうキッパリと言い切る

「わー。美味しい!」「そ、そうか…」「初めてとは思えない!」

よかった、自信なかったんだよなー

「飲まないの?」「そうだな」

カップを手にとって飲んでみる

うん、確かに美味い!

「なー。この前…言ってたあの日って、何のことだ?」「あの日…」

不味いこと、聞いちゃったかな…

「ごめんな、変なこと聞いて…」「ううん。気にしないで良いよ//」

やっぱり、まずかったよな

黙って紅茶を飲んでいると、後ろから恵が声をかけて来る

「お兄ちゃ〜ん!」「ん?どうした?」「ジャーン!」

振り返って見ると、コスプレをした恵が居た

ブー!

思わず、飲んでいた紅茶をふきだす

「お兄ちゃんきたな〜い」「はい!これで拭いて!」「お、おぅ」

布巾を受け取り拭いた

「お兄ちゃん!これ、好きだったんだよ」

恵はくるりと一回転する

俺がねぇ…どんな趣味してるんだか

「お兄ちゃん?」「ん?」「これ、何だか判る〜?」

判るわけ無いだろ

「もしかして、判らないの?」「記憶が無いからな…」「えー!そんなー!」

なんだよ…その反応は…

「それって、兔関係か?」「そうだよ!」「なんて、名前なんだ〜?」「え〜とねぇ…」

恵は顎の下に指を当てて考え始める

「何だっけ?」

ズコ!

あはははは…忘れるか?普通…

「そんな格好は、もうやめろ…」「やだ!」「いいから、早く脱げ!」

「お兄ちゃんのスケベ!」「誰もここでとは、言って無いだろ…」

「とのかく…自分の部屋に行って、着替えて来なさい!」

そう言って、恵の部屋を指差す

「これ、気に入らなかったの?」「だーかーら…!そんな問題じゃないって!」「判った…。普通の着てくる…」

恵はトボトボと部屋に戻っていく

はぁ…なんでこんなに、疲れるんだ

「孝弘も、大変だね」

宮本さんは、ニヤニヤ笑いながらこっちを見る

「これで良いかなぁ?」

今度はどんなのだ?

「それって…」「うん!そうだよ。メイドさんだよ!」「それが普通なのか?」

「うん♪」

あー、頭が痛い…

「お兄ちゃ〜ん!」「どうした?」

誰のせいだよ…まったく

「あ!もう…お昼だね」「ああ…そうだな」「何か作って!」「は〜?な、何を言いだすんだよ!」

「だって、前は作ってくれたよ」

前ねぇ…今の俺にはたぶん無理だろ。でも、宮本さんにやらしたら…

ちょっと想像をしてみる

大変なことになるな。仕方がない、俺がやるか!

「私が、作ろうか?」「桜さんの手料理を食べれんですか?」

恵は目を輝かせる

「却下!」「どうして?」「体が、それだけは阻止しろと言ってる」「どうせ!私は、不器用で!どじで!マヌケですよー」

宮本さんはベーっと舌をだす

「ちょっと待て…そこまでは言ってないぞ…」「え!?そうだった?」「そうだ!」

「お兄ちゃ〜ん…」「どうした?」

見てみると、恵がお腹を抑えていた

「お腹の皮と背中の皮が、くっ付きそうだよ〜!」

子供の例え話か…

「わ〜たよ、作ればいいんだろ?」「さすが、お兄ちゃん!」

恵はさっきとはうって変わって元気になる

「味は保証しないぞ…」「えー!美味しく作ってよ…」

無理を言うなって

「たぶん、無理だ…」「やっぱり…」

恵は目をうるうるさせながら、こっちをじっと見てくる

「わ〜たよ!できる限り努力はしてみるから…」「やったー!」


さて…何をるか。適当で良いよな

「お兄ちゃん、適当じゃぁいやだよー」

早速、言われたか…。仕方がない。記憶の片隅にある物でも、作ってみるか。確か、これとこれだったな?

後は…これが入れるんだったな?

「お兄ちゃん、何を作ってくれるの?」「俺にも判らん!」「えー!」

判るわけ無いだろが!

何かが出来上がる

「出来たぞ!」「わー!焼きうどんだ!」

これってそんな、名前だったのか

「私のは?」「ちゃんとあるよ。ほら」「有難う!」

さて…食べてみるか

パク!

うん…美味い!

「美味しい!さすが、お兄ちゃんだね」「おだてても、何も出ないぞ!」「え〜!」

何か貰える思ってたのか?やっぱり、恵のペースにはついていけない

気がつくと、宮本さんは焼きうどんを眺めていた

「ん?どうした、食べないのか?」「え!?食べるわよ…」「ん?どっか悪いのか?」

「べ、別に何処も悪くないわよ…」

宮本さんは顔を紅くしながら言う

「なら…良いけど…」「お兄ちゃん!御代わり!」「無い!」

「えー!これだけじゃぁ足りないよー」

確か…得盛にしといたはずだぞ。それで足りないって、どんな胃袋してんだ?

「判ったよ、ちょっと待ってろ!」「ほ〜い!」

恵はそう言いながら手を上げる

「手は上げなくていいから…」「ダメ…?」

あははははは…。俺に聞くな、俺に…。はぁ…疲れる

台所に行って、また焼きうどんを作る

「ほら、出来たから皿持って来い!」「やった〜!」

恵は皿を持て走って来る

「ほら!」

皿に載せてやると、喜んで帰っていた

少し残ったな、置いとくか。また、吠えられて作るのも面倒しな

戻ると宮本さんは食べ終わっていたので、自分の皿と一緒に片付ける

皿を洗っていると、恵が皿を持って来た

「もう無いの?」「これだけだったら、あるぞ…」

残りを見せる

「え〜!それだけ…」

だから、どんな胃袋してんだって…

「これしかないんだから、仕方が無いだろ?」「判った…」

皿に残りを載せてやると、恵はそれをじーと眺める

「少ない…」

このままだと、冷蔵庫の中身を全部食べられるぞ

「わがままを言うな〜!」

恵はしょんぼりして、戻って行く

それにしても、食べるの早いよな〜

「お兄ちゃん!はい!」「うわ!もう食べたのか?」「うん!夜は、期待してるよ!」

勝手に期待をするな

「何が食べたい?」「う〜ん…」「頼むから、高級なのはやめてくれよ」「え〜!」

「え〜!じゃない!」「ふみゅ…」「簡単なものにしてくれ〜」

「じゃぁ!すき焼き!」「え!?」「だから…す・き・や・き」

恵はニコニコ笑いながら言う

「確か…鍋物だよな?」「うん!そうだよ!」「でも…今は夏だぞ…」「食べたい物って言ったから」

「わ〜!判ったよ…作るよ…」「だから、お兄ちゃん大好き!」

恵が飛び付いてきたので、素早く避ける

ガン!

見事に冷蔵庫にへばり付き、ゆっくりと床へとすべり落ちる

「大丈夫か?」

恵は鼻の頭を抑えながらこっちを見る

「避けるなんて、ひどいよ…」「体が勝手に避けたんだ…。それより、大丈夫か?」

「平気だよ。慣れてるもん!」

こんなのに、慣れとかあるのか?

「鼻の頭が、赤くなってるぞ!」「大丈夫だよ…」

恵はそう言って立ち上がると、その瞬間鼻から赤い物が流れる

「孝弘、これ!」

宮本さんがティッシュの箱を投げる。それを受け取りティッシュを引き出して、丸めて恵の鼻に突っ込む

「苦しいよ…」「我慢しろ…」

抵抗する恵に何とか詰めることに成功する。ティッシュの箱を持って、宮本さんの所に良く

「さっきは、有難うな」「こっちだって、慣れてるから…」

いつも、こんなことやってのか?

「とまったか?」「うん…」「もう、あんなことしたら駄目だぞ…」「は〜い!」

「よし!良い子だ」

頭を撫でてやる

「もっと撫でてー!」

恵は頭を指差すしながら言う

「もう、おしまい!」「え〜!もっと!」「俺は、これを片付けるんだ!」

「う〜」

軽く上目遣いで、こっちは見てくる

「そんな顔をしてもダーメ!」

しょぼくれて行ってしまう

ちょっと、罪悪感…だな。さてと、ささっと片付けるか

急いで洗物を片付けて、部屋に入る

はぁ、疲れた

ベットに倒れこむ

少し寝るかな



しばらくして、誰かの声で目が覚める

「お兄ちゃ〜ん!起きて〜!」

なんだ、恵か…

「ぐふ!」

恵がいきなり、俺の腹の上に乗ってきた

「起きて〜!」

そう言って、腹の上で飛び跳ねだした

「ぐふ!げふ!…わか…ぐふ!」「起きて〜!起きて〜!」

「おき…ぐふ!」「あ!やっと、起きた!」

恵は俺の腹の上で、ニコニコと笑いながらこっちを眺める

「殺す気かー!」「違うよ、起こしに来たんだよ!」

さっきのは、絶対にそうだろ!

「ならもっと!普通の起し方があるだろ?」「何時もこうだったんだよ。なかなか、起きなかったし…」

「いつもって…」「うん!毎日!」

死ぬ…何時か、こいつに殺される

「今度から、普通に起こしてくれ」「えー!」「もしかして、楽しんでたか?」

恵はギクと小さく飛び上がる

図星だな

「今何時だ?」「六時だよ!」

俺が寝たのが…たしか二時だよな。だとすると、四時間も寝てたのか

「早く〜!」「どうした?」「あー!忘れてる」「だから、何を?」「ぶ〜!」

恵は顔を膨らませる。そして、また飛び跳ねる準備に入る

「あ!すき焼きか?」

慌ててそう言う

「そうだよ〜」「悪かった。頭の片隅にも無かった!」「あー!酷いよ〜」

「悪かったよ〜、それよりいい加減降りてくれ…」「え〜!楽しいもん!」

恵は、そう言ってまた跳ねる

「ぐふ!げふ!…」「わー!楽しい〜」

俺は全然…楽しくない!

「降りろ!」

恵を払い除ける。

「ぶ〜!楽しかったに!」

恵は、はぶてて部屋を出て行く

起きるか…そうじゃないと今度は何されるか、判ったもんじゃないしな

頭をかきながら部屋から出て、台所に行く

さてと、これとこれがいるだろ

冷蔵庫から、必要な物を出す

こんなところの記憶は、比較的早く戻るんだな。さて、やるか

包丁を取り出して調理を始める

順調…順調…。後は鍋だな。で…どれを使うかだな…

目の前には、数十個の鍋がある

恵に聞いてみるか

コンコン

「恵…居るか?」

シーン…

ゆっくりとドアノブを回す

開いてる!

中に入ってみると、恵は気持ち良さそうに、寝息を立てていた

寝てるのかよ。これじゃぁ聞けないな

そっと、部屋を出る

宮本さんも居ないし…。自分で考えるか

台所に戻って鍋の集団と一時間程、睨み合う

これに決めた!

一つの鍋を手に取る

「お兄ちゃん、おはよ…」「起きたか、鍋ってこれで良いのか?」

恵は中途半端に開いた目でこっちを見る

「それ違うよ〜」「違うのか?」「これだよ〜」「そうか、有難うな!」「頑張ってね〜」

恵はふらふらしながら歩いて行く

「そこで、寝るなよ…」「大丈夫…」

恵がそう言った瞬間、糸が切れたように倒れ始める

「うわ〜!」

慌てて、受け止める

寝やが…仕方が無い運んでやるか

恵を抱えて部屋まで運び、そっとベットに寝かせて部屋をでる

さっきのは、半分寝て動いてたのか?一種の特技だな

そんなことを考えながら台所に戻る


よし!出来た。後は恵を起こしに行くだけだな

コンコン

「出来たぞー!」

まだ、寝てるな…絶対に。さっきのお返しをしてやる!

そ〜と部屋に入る

うしししし…寝てる、寝てる

そ〜とベットに近づいて覗き込んむ

よく寝てる、この頬を引っ張ってみるか

ふに

「んんんん…」

それほど伸びないな。さすがに、腹の上で跳ねる訳にいかんしな。どうしてくれよー?

部屋の中をゆっくりと見渡す

本当に、それにしても衣装ばっかりだなー。こっちはナース!こっちはバニーガール!よく集めてらっしゃる

少し揺すってみるか

ギュー!

「お〜い、起きろー!」

しかし、一向に起きる気配は無い

駄目だ、起きない。今度はもっと強くやってみるか

さっきより強く揺すってみた

「起きろ〜!」

恵は少し目を開ける

「御飯だぞ!」「……」

恵は何か言ったが、よく聞こえない。その後、いきなり抱きしめらる

「うわー!離せー!」「やだ〜…」

こいつまだ寝ぼけてやがる

「はにえるく〜ん…」「俺は、そんな奴じゃ無い!」「はにえるく〜ん…」

恵はそう言いながら、徐々に締め付けてくる

こうなったら、最後の手段だ!

「起きろ〜!」

耳元で大声で叫ぶ。恵はパッと目を開けた

「お兄…ちゃん?」「そうだ!だから、離してくれ…」「ヤダ!」

「何でだ?」「恵は、お兄ちゃん大好きだから!」

理由になってない気が…

「大好きで良いから。離してくれじゃないと、すき焼きが食べれないぞ…」

「すき焼き…」

恵はそう言って大急ぎで、部屋を出て行く

まずい!俺の食う分が無くなる!

急いで行ったがもう遅かった

「ごちそうさまでした…」「全部…食べたのか?」「うん!美味しかったよ〜」

「別に、味を聞いてるんじゃ無い!」「何を聞きたいの?」

恵はきょとんと俺の方を見る

「俺は、何を食べれば良いんだよ…?」「また、作れば〜」「『作れれば〜』じゃない!」

「ふぇ?」「材料が無いんだよ!材料が!」「買って来れば〜?」「俺は、この辺の地理は持ち合わしていない!」

「そうなの〜?」

当たり前だろが〜、記憶喪失なんだから

「桜さんに、何か作ってもらえば!」「それは、絶対にヤダ!」

真剣な顔でそう言う

「え〜、桜さんの料理。美味しいよ〜」

体が嫌だって言ってるんだから、しかたが無いだろ

「何か無いか、探してみる…」「私のも〜!」「もう十分に、食べたろ〜!」

「ぶ〜!」「限度を考えないと、太るぞ〜!」「今まで、太ったこと無いよ」

世間の人が聞いたら、さぞや反感を買うぞ

「今までは、そうだったかも知れないが、今からは違うかもな!」

ニヤリと笑いながら言う

「それは困る…」「なら、それくらいで止めとけ!」「うん…判った…」

台所に行き食べ物が無いか捜索する

これなんだ?

「これ、なんだ〜?」

見つけた物を恵みに見せながら聞いてみる

「あ〜!それ私も、食べた〜い!」「さっきと、言ってることが違うぞ!」

「気にしない…気にしない…」

恵は手を上下に動かしながら笑う

普通は…気にするだろ

「何か教えてくれ」「カップ麺よ!」

ふーん。カップ麺か

「って何で居るんだよ!」「さっきから、ずっと居たわよ」「ところで、カップ麺なんか持ってどうしたの?」

「すき焼きを作ったけど、恵に全部食べられたんだ」「恵ちゃんにねー」

宮本さんは恵の方を見て、しらーとこっちを見てくる

「な、何だよ…その疑いの眼差しは…本人に聞いてみろ!」

「恵ちゃんが大食いで、太らないってことくらい、知ってるわよ!私は大食いで、すぐにふとりますよ!」

「誰も、そこまでは…」

苦笑いを浮かべる

「桜さ〜ん、お兄ちゃんが手料理食べたいって!」

ば、馬鹿!何を言っただすんだ!

「任せといて!」

宮本さんは胸をドン!と叩く

やな予感が…逃げるか!

「台所、借りるわね!」

宮本さんはそう言って、何処からとも無くエプロンを取りだす

そ〜と、部屋に向かう

ガシ!

「孝弘〜、何処行くの〜?」「いや、ちょっとトイレに…」

苦笑いを浮かべながら、ゆっくりと振り向く

「もう少しで、出来るから〜待てってね〜」

宮本さんはにこーと笑う

「それは…楽しみだな…あははは」「私には、全然そうには見えないけど!」

「きっとお兄ちゃん、桜さんの料理を食べたく無くって、逃げようとしてるんだと思うよ」

「ば、馬鹿余計なことを言うな!」

あ!しまった…!

慌てて口を手で抑える

「そうなんだ、尚更食べてもらいましょうか!」「顔をが…怖い…」「恵ちゃん、孝弘が逃げないように抑えといて!」

「判りました!」「ヤダ〜!」

走って逃げるが、あっさり捕まる

「これでも、陸上部のなんだから!」「な、何〜!」

道理で、足が早いわけだ

「桜さんは、空手部のOBなんだよ」「な、何〜!……判った、もう抵抗はしない」

「判ればよし!」

誰か〜、助けてくれ〜

「ところで、俺は何部だったんだ?」「もちろん!」「……もちろん?」「帰宅部よ!」

ガックシ

やっぱり…

「出来たよ!」「何これ?」

目の前に置かれている物を指差す

「もちろん!ご飯と味噌汁よ!」

味噌汁って…普通こんな色してないと思うんだが…

箸が前にだす事を体が食べるのを拒否する

「どうしたの?」「お兄ちゃんの体が、食べるのを拒否してるんだと思いますよ」「ば、馬鹿!」

「そうなんだ〜」

宮本さんがしらーとこっちを見てくる

やな予感…

「恵ちゃん!」「はい」

ガシ!

やっぱりか〜!

「さ〜、あ〜んして〜!」「うぐ!」

断固として口を閉ざす

「口を開けないさ!」

首を横に振る。宮本さんは、無理やり口を開けて味噌汁を流し込んむ

ま、マズ〜!

「美味しいかった?」「不味かった」「ふ〜ん」「お、脅しても…あ、味はかわらないぞ!」

「それもそうね」「ここは、お世辞でも美味しいって言ってあげないと!」

「恵ちゃん、今さらりとひどいこと言わなかった?」「何のことですか?」

さすがに、本人が認識してないと、攻めることもできないよな

「俺は、寝る!」「どうしたの?急に…」「気分が悪いからだ…」「きっと、桜さんの料理のせいですね!」

「また言った!」「だから、何をですか…?」

二人のやり取りを無視して部屋に入る。そのまま、ベットに横になる

うげ〜、まだ気持ちわる…。ひどいもんだな、よくあれで作ろうとか思うよな…。今日は、気分が悪いから寝よ〜

ゆっくりと目を閉じる

第三章に続く


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