認めたくないこと
病室の前まで来て、ドアを叩こうして止める。

私…どんな顔して会えば良いの

グッと手を握り締めて、ドアを叩く。しかし、中からは何も返事が無かった

あれ? 居ないのかなー?

そっとドアを開けると、お姉ちゃんはボーと窓の外を見ていた

「お姉ちゃん!」「キャ!」

お姉ちゃんは小さく飛び上がり、ゆっくりとこっちを向いて笑う

「茜ー! 脅かさないでよー!」「御免…でも、ノックしたのに返事をしないから」「え!?」

お姉ちゃんは驚いた顔で私を見る

「したの?」「ちゃんとね!」「そう…なんだ…」「もー、確りしてよー。はい、着替え!」

お姉ちゃんに着替えの入った鞄を手渡して、横の椅子に座る。

色々と話をするが、お姉ちゃんは『うん…そうなんだ…』と言いながら頷きながら、窓の外を見ている

「お姉ちゃん!」「うん…そうだね…」「もしかして…鳴海さんと水月先輩のことを考える?」「え!?」

お姉ちゃんは驚きの顔で私を見る

「やっぱり、そうなんだね…」「ち、ちがうよ…。私は…」「お姉ちゃん。昔から隠し事が下手なんだから…」

そう言って、小さく溜息をつく

「お姉ちゃんは、まだ鳴海さんのこと好きなの?」「うん…」「じゃぁ…」

お姉ちゃんは少し下を向きながら、首を横に振る

「孝之君が決めたこと何だから、仕方がないよ…。それに…」「そんなの…」

立ち上がり体が小刻みに震わせる

「茜…?」「何で! お姉ちゃんが、先に付き合ってたんだよ! それなのに…後から出てきた…あの人が…」

「茜!」

お姉ちゃんはキッと私を睨む。

「茜も好きだったんだね。孝之君のこと」

お姉ちゃんがそう言い終わると同時に、椅子に座って頷く

「だったら、私の気持ち判るよね?」

お姉ちゃんはジッと私を目を見ながら言う

「判んない! 私には全然…」

そう叫ぶと、お姉ちゃんはそっと私を抱きしめる

「茜…もう良いんだよ…」「お姉ちゃん…私…」

お姉ちゃんの胸で泣く。そんな私の頭をそっと撫でてくれる。

この時のお姉ちゃんは、凄く大きく感じれた


「香月先生。どうなされたんですか?」「ちょっとね…」

ちらりと一つの病室を見る

「人間。泣きたい時には、泣いた方がいいのかしらね…」

そう言って医局に向かって歩き出す


「私、帰るね。お母さん達に伝える事とかない?」「何もないよ…」

それを聞いて、手を振りながら病室を出る。電車に乗って柊町に戻って来て、家に向かって歩き出す

気がつくと、鳴海さんの家があった通りを歩いていた。立ち止まり、ゆっくりと上を見上げる。

そこには、鳴海さんと水月先輩が居る家があった場所があった。そして、またゆっくり歩き始める

どうして、こんな所を歩いてるんだろ。鳴海さんには、もう会えって判ってるのに…どうして

立ち止まり、家に向かって走り出す。家に帰って部屋にへと駆け込んで、ベットに飛び込む。

「どうして…鳴海さん。どうして…」

そう言いながら、ベットに顔を埋めながら一人で泣き続ける

ーENDー



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