クリスマス
「水月?」「え!」

慌てて顔を上げると、そこには遙の顔があった。

「何だ…遙じゃない。脅かさないでよ〜」

そう言ってフ〜っと肩を撫で下ろす。

「何か作ってるの?」「え!」

遙は私の手元を見ながら言う。それに気がついて、慌てて机の中に隠す。

「あははは…何でもないわよ」「そうなの?」「そ、そうよ。別に何でも無いのよ」

顔を赤くしながら言う。

「そうなんだ〜。私はてっきり…」「お! 速瀬、また何か悪巧みか?」「何ですって!」

「孝之君、ちょっとこっちに来て…」「ん? 何だいったい?」

遙、ありがとう! もし、孝之にばれたら秘密でやってる意味が無くなるじゃない。

そっと、机からそっと取り出して、続きを始める。


「ねー、今日でどれ位出来たの?」「え、何でそんな事を聞くの?」「気になっちゃって…」

辺りを見渡し、誰も居ないことを確認して、鞄から取り出す。

「うわ〜、水月って上手だね」「そんな事…無いわよー」「ううん。そんな事無いよ」

遙のその言葉に、照れて顔を赤くする。

「これ、貰える人ってきっと幸せだろうな〜」

遙はそう言いながら、空を見上げる。



「うわ〜!水月先輩、上手ですねー」「もー、茜まで。誉めても何もでないわよ」

「別にそんなつもりで、言ったんじゃないですよ。そう思ったから、言ったんです」

「あ、ありがとう…」

顔を赤くしながら頬をポリポリとする。

「私に作り方教えて下さい!」「あ〜ずるい!私が先に教えてもらうんだよ!」「ちょ、ちょっと待って…」



「完成!」

完成品を持ち上げながら立ち上がる。そして、用意しておいた袋に詰め、リボンを付ける。

これ渡されたら、どんな顔するか楽しみ。

貰った時の顔を想像して笑う。


「水月、おはよう」「おはよう、遙」「出来たの?」「え、ああ…アレね。もちろんよ!」

「凄いね、私なんて、まだぜんぜん…」「大丈夫よ。きっと出来るわよ」「そうかなー?」

「遙なら出来るわよ。完成したら、孝之にあげるの?」

それを聞いて、遙は顔を赤くしながら手を横に振る。

「隠さなくても、良いわよ」「うー。でも、絶対に内緒にしててね…」

「判ってるわよ!」

遙は心配そうな顔で私を見てくる。

あははは…私ってそんなに信用が無いのかしら。


「う〜…やっぱり外は寒いなー」

鞄から袋を取り出して、彼の前に差し出す。

「ん? 何だこれ?」「プレゼント…」

顔を赤くしながら、軽く下を向く。

「ありがとう。開けてもいいか?」「うん…」「お!マフラーか。これどうしたんだ? まさか、手作り?」

「うん…下手糞でしょ…」「いや、そんな事は無いぞ!」「え!」

彼は顔を赤くしながら言う。私はそれを見てくすっと笑う。

「ほい、俺からな」「え?」

彼から、小さな袋を受け取る。

「開けても…いい?」

彼は黙って頷く。袋の中身は、手袋だった。

「イルカ…好きだろ。その何だ…」「ありがとう…」

そう言って、彼の方に自分の体を近づける。

「こうしてると、凄く暖かい…」「そうだな…」

彼は、そっと私の肩を持って、そのまま歩きだす

ーENDー



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