君ラヴクエスト -第拾二章-
「私、行って来ます」「気よつけてな」「はい!」「あ、私も一緒に」

カガミとハルカは船室を出て行く。それを見送って、テーブルに地図を広げる。

「現在地がここだ!で、ハルカが言った場所がここだ!」「すぐそこじゃない」「地図の上ではです」

「え!それって…」「もう少し行ったら、海が凍ていて船が入れないのさ」

アユの説明にマユは黙って頷く。

「だとすると、一番近い…コルラドから歩くしかないのか?」「そうさ!」

それを聞いて、改めて地図を見る。そして、指で進む場所をなぞる。

「かなり遠回りになるわねー」「あ!このガンデス湖ってのを抜ければ…」

ハルカの発言に、俺とミツキとアカネはハルカを睨む。

「ハルカ…本気で言ってるの?」「だってね、海が凍るほど寒いんだったら…」

「寒いんだったら、ここも凍ってる言うの?」「うん…」「さすがね。ここを通るのさ」『え〜!』

俺とミツキとアカネは驚く。ハルカは『だから言ったのにー』と小さく呟く。

「ここを通ると、かなり距離が縮まるわね〜」「はい!ですが…ここを通るには…」

マユは真剣な顔になる。

「ここを通るには、ある物が必要なんで!」「そうさ。ここをただ歩いてると氷が割れてお陀仏さ」

「じゃ〜!ここは通れないじゃない」「ですから、そこである物が必要になるんです」

「犬ぞりだね」「よく知ってるわね。犬ぞりが必要なのさ」「で、その犬ぞりは何処から?」

「知らん!」「はい? 知らんって…。マユは?」「申し訳ない…何処にあるかは…」

はあっとため息をつく。

「なー、アユ…」「あん?」「お前は、どうやって渡って来たんだ?」「それはアレを使ったのさ」

「それは何処にあるんだ?」「ん?」「そうよねー。乗って来たんなら、あるはずよね〜」

「そうですよ!で、何処にあるんですか?」「無い…」「あんですって〜!」

「ここに来る時に、壊されたのさ…そう、奴によって…」

アユは窓の外を見つめる。

「奴って?」「お前達が探してる奴を動かしてる奴のことさ」「名前は何て言うんですか?」

アユはゆっくりと振り返る。

「そいつの名は…」


「ちょっと!かってに何処に行くのよー」「何処に行こうが俺の勝手だ!」「そんな事したら、孝之様に…」

「はん!そんなこと知ったことか。俺はある物を探しに行くんだ」「ある物?」

「そう。お前だって知ってるよな〜奴が持っている剣の秘密を…」「もちろん…まさか!」

「そうさ、そのまさか!俺はあいつの持つ剣と対になる剣を探しに行く!」「私も、一緒に行くわ!」

「それは駄目だ!いきなり、2人も居なくなったまずい」「でも…」「いいから、お前はここで待ってろ」

そう言って、唇にキスをする。そして、静かに歩き出す。

「やっとその気になったか」「た、孝之様!これは…」「ああ…判ってる。奴ならきっと見つけるだろう」

「はい…」「一緒に行かないのか?」「宜しいのですか?」「俺は何も見ていない…」

孝之は静かに目を瞑る。それを見て、走って追い返る。

「まったく、お前も役者だな」

物陰から、タケルが姿を現す。

「な〜に。奴が手にしても扱える代物ではないさ」「ふ、そうだな」


え〜と、ここに居るかな〜?

酒場に入って中を見渡す。

「メイヤさんって、どんな方なんですか?」「剣を持たないで、刀を持ってるからすぐに…あ!」

酒場の隅に座る、メイヤが目に入る。

居たー!でも、本当に居るなんて

同じ席に座り、適当に注文をする。

「カガミ、どうしてここに?」「それは、こっちの台詞だよ」「そうだね。あなたがメイヤさん?」

「いかにも、私がメイヤだ。そなたは?」「始めまして、ハルカです」

そう言って手を差し、握手を交わす。

「メイヤ、タマセのことなんだけど…」「もしや!見つかったのか?」「居場所は判ったんだけど…」

「で、何処に居るのだ?」「それが〜…」

顔を見合わせる。

「タケルちゃんのペットになってるの…」「なんと!それはまことか?」「うん。間違いないよ」

「そうか…」「メイヤさんは、これからどうすの?良かったら…」「お気持ちだけ、受け取っておく」

「そう…」「私はまだ未熟者…あのように簡単に洗脳されたのがいい例だ…む!危ない!」

メイヤは刀を抜き、飛んできた小刀を打ち落とす。

「さすがですね。そう簡単にはいきませんね」「そなたは…アカネ…」

「覚えててくれんですね、光栄です!」「何故、このようなことを!」「それは、あなたが邪魔だから!」

アカネはそういって、小刀を投げつける。メイヤはテーブルを盾にして防ぐ。

「2人とも、ここではまずい。ひとまず外に参るぞ!」「うん…」「判った」

走って出口へと向かう。そして、誰も居ない草原へと逃げる。

「人を巻き込みたくないみたいですね」「それは、当然のこと!」「そんなこと、どうでもいいですけど」

「そうさ。こんな所を死に場所に選ぶとは、馬鹿な奴らよね」「あ、アユさん!」

「私から、やらせてもうさ!」「何を言ってるんですか!最初は私から」「あに生意気な事を言ってるのさ」

「やりますか〜!」「やったろうじゃない!」「やっぱり、あの2人は犬猿の仲なんだね…」


「ねー、飛行船ってのはどうかな〜?」「そんなのがあるの?」「うん、確かこれに…」

「で、それを誰が作んですか?」「え、それは…技術者ですよ…」「その技術者さんは、何処に居るんですか?」

「え…それは…」「あ!あったよ。ほら、ここ!」

ハルカは本をテーブルの上に置き、書いてある場所を指差す。

「ん? 何か挟まってるぞ…これは…!」



「私は、あの剣士をやります」「勝手にすれば良いさ!残りは、もらうさ」「どうぞ!」「来るぞ!」

アユは大きく飛び上がる。

「一発で決めてやるから、ありがたく思いなさい!」

アユの背中に羽が現る。銃を前に構えて、スミカ達に狙いを定めて、引き金をゆっくりと引く。

物凄いエネルギー砲が、スミカ目掛けて飛んで行く。スミカは走って逃げるが、逃げきれる大きさではない。

その時、まったく同じエネルギー砲が飛んできて、それを打ち消す。

「誰!」「まったく、人の真似するんだったら、もっと上手くしなさいよね」「あんですと〜!」

「その技は、コピー人形なんかに扱える代物じゃないのさ!」「ハルカ!ちょっと力を貸すさ!」

「え!う、うん…」

ハルカは驚きの表情のまま頷く。

「さて、私達も始めましょうか?」「いざ…尋常に…参る!」

メイヤは姿勢を低くして、そのまま突っ込んで行き、素早く相手の懐に入る。

「は、速い!」「覚悟!」

メイヤは刀で切りかかるが、アカネは後ろに飛んで避ける。

「ふ、たいしたこと無いわねー」

髪の毛がパラパラと地面に落ちる。慌てて、はねている髪の毛があるか確かめるが、無くなっていた。

「次は…無い!」「よくも…私の髪の毛を〜!」

アカネは見事にメイヤの策略にはまる。

「ば、馬鹿!落ち着くさ。相手の思う壺さ」「よそ見してる暇があるの?」

アユがアカネの方を見た、一瞬の隙をスミカは逃さず、コンビネーションを叩き込む。

「ハルカ〜!」「うん!雷よ…」

飛び上がっているアユ目掛けて、雷が落ちる。

「技って物は、こうやって使うのさ!くらえ〜!サンダー…カノン!」

さっきのエネルギー砲に雷がプラスされ、アユ目掛けて飛んで行く。

「うがあああぁぁぁぁ…!」

アユは地上に降りるなり、その場に座り込む。

「や、やったさ…」「上手くいったね」「はん、私の計算に待ちがいわないさ…」

アユはバタとその場に倒れこむ。2人は駆け寄ると、アユは眠っていた。

「あなたは、どうします?」「ま、まずいわね〜…」

第拾三章に続く


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