君のぞRPG〜プロローグ〜
体を起こして、額に手をあてながら左右にふる。

ここは何処だ?

ゆっくりと辺りを見渡す。

この消毒臭い匂い…ここは病院か何かだな。俺は何でこんな所に居るんだ?

考えようとすると、頭に激痛がはしる。

くそ!どうなってんだ? たしか…俺は…


君のぞRPG〜プロローグ〜新たな旅立ち


「今日でやっとテストも終わりだな」「そうね。やっと開放されたって感じね」

「ところで、水月は自信はあるのか?」「え、私? まあ、人並みにはね…」「いいよな、自信がある奴は」

「え、もしかしてまずいの?」「ギリギリって感じだ」「そうなんだ…」

水月はなるほどーと頷く。

「私、買い物があるから。またね」「またな…」

水月は手を振りながら行ってしまう。水月を見送り、一人で歩き出してしばらくしてのことだった。

「ちょっと、そこのお兄さん」

辺りを見渡し、驚きの表情をしながら自分を指差す。

「そう、あなたです」

そこに居たのは、見るからに占い師っと言ったお婆さんが座っていた。

「あの〜、俺に何か用事ですか?」「あなたに頼みたい事がありまして…」「俺に?」「はい…」

俺に頼みたい事? 俺にできる事と言ったら、たかが知れてると思うが…。

「簡単な事ですよ。この水晶球を見ててくれさいすれば良いですから」「え、それだけ?」「はい…」

何だ、そんな事なら簡単だな。

「良いよ。それくらい」「有難う御座います。この歳になると、どうも…」「ゆっくりで良いですから」

そのお婆さんは、よたよたしながらトイレに向かって行く。

大丈夫か? 途中でこけたりしないよな〜? それにしても、綺麗な水晶だな〜。物凄く高いんだろうな〜。

珍しそうに水晶を眺めていると、突然水晶が輝き始め、眩しい光が辺りを包み込む。


そうだ!俺は水月と判れ、変な婆さんに水晶球の見張りを頼まれて…。あれ? 何でこんな事で寝てただ?

そんな時、部屋の外で誰かが話をしている事に気がつく。

『大丈夫よ。彼はあと少しで目を覚ますわ』『そうですか…』『さ、中に入りましょ』『はい…』

ドアを開けて中に入ってくる。

「あら、目が覚めたのね」「あ、本当だ…」

水月…なのか? 何でそんな格好をしてるんだ?

部屋に入って来た水月によく似た女性は、見たこともない格好していた。

「もう、凄く心配したんだからね…」「え、あ、悪かったよ…」

「まさに、奇跡ね。あんな高さから落ちて、それだけの怪我ですんだだから」

え、何を言ってんだ? 俺は…水晶の光を…。

「どうしたの?」「なんでもない…」「きっと軽い記憶障害ね。すぐにもとに戻るはずよ」

あの高さ…いったい何のことだ? 俺にはさっぱり判らない。

「俺はどうして、ここに居るんだ?」「え、覚えてないの?」

水月によく似た女性は、驚きの表情で俺のことを見てくる。

「ああ…」「そうなの…」「君は、彼女をかばって崖から落ちたのよ」「え!俺がですか?」

白衣を着た人は黙って頷く。

「その後、私が行った時には正直、もう駄目だって思ったわ…」

「傷はたいした事は無かったのよ。でも、君はそのまま三週間も目を開けなかった…」

「さ、三週間もですか!」「そう。その間も彼女は毎日ここに来て、君の側についてたのよ」

水月によく似た女性の方を見る。白衣を着た人は溜息をついて頭を掻く。

「良かったわね、彼が目を開けて」「はい…これも先生のお蔭です…」

水月に似たその女性は目に涙をためる。俺は黙ったまま二人の顔を交互に見る。

「どうしたの? まさか、ご飯はまだかって言わないでよ…」

白衣の人はそう言って笑う。

「そんな事は聞きません!そうじゃなくって…」

二人の顔を交互に見る。白衣を着た人が何かを悟ったように口を開く。

「私はモトコ。この町で小さな診療所をやってるわ」「私はミツキ。覚えてないの?」「ごめん…」

ミツキに頭を下げる。

「目が覚めて何よりね。今日はゆっくりと休みなさい。それに…積もる話もあるでしょ?」

そう言ってモトコ先生は病室から出て行く。

「でも…本当に良かった〜。もう二度と開けてくれないんだと思ってたから…」

「心配かけて…ごめんな…」「ううん。こうして、目を開けてくれただけで十分だから…」

ミツキの目から涙が零れ落ち、抱きついてくる。

「お帰りなさい…」「ただいま…」

そう呟き、ミツキを抱きしめる。

こうして、俺の世にも奇妙な物語は幕を開けてのだった

第一章に続く


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