君のぞRPG〜第四章〜
「それでは、しばらくの間こちらでお待ち下さい」

メイドさんはそう言い、軽く会釈して部屋から出て行く。

「あ、私達のほかにも沢山人が居ますよ」「どうせ、花嫁候補で集められた人でしょ」

「こんなに沢山の人がですか…」

「こんな大それた事をするんだから、よほどの面食いか、よほどの馬鹿かよ!」「はあ…そうなんですか…」

どうせ、こんなことをするのはぶさいくってオチなのよね…絶対。



「もう!何してるんですか!」「うっせ〜!何で男の俺が、こんな格好をしないといけないんだよ…」

「良いですか、ここは男子禁制なんです!だから、男がうろうろしてたら不自然でしょ」

「まあな…だからって、鬘に化粧まですることは…」「身だしなみ大切ですから!」

「何でアカネがこんな所に居るんだ?」「それは…」

アカネが理由を言おうとした時、後ろから声が聞こえてくる。

「あなた達。そこで何をやってるの?」「あの…姉が、トイレに行きたいって言って…ね!」

「俺は別に…」

尻を摘まれる。

「ね!そうよね?」「……はい」「そうなの、だったら早く控え室に戻りなさい」「はい…さ、行きましょ」

「そ、そうね…」

と裏声で言って歩き出す。

『もっと女らしい声を出せないですか?』『仕方がないだろ…俺は男だ!』

「ちょっと待ちなさい!控え室はそっちじゃないわよ」「あ、すみません…広いので、わからなくなって…」

「仕方がないわね。こっちよ」「ご迷惑をおかけします…」

兵の跡について行く。しばらく歩いて、一つの部屋の前で立ち止まる。

「ここよ」「ご迷惑をおかけしました」

軽く会釈をして中に入る。

さて、ここにミツキ達も居るはずだけど…。

控え室の中を見渡すが、それらしい人物を見つけることは出来なかった。

何処に居るんだ?

「私は、武器を探してきます」

アカネはそう言って部屋から出て行く。

「あなたも連れてこられたの?」

この声は…。

ゆっくりと声がした方を向く。

あれ? ミツキじゃない…。声はそう聞こえたのになー。

「どうしたの?」「ミツキ…」「そうよ。どうして私の名前を知ってるの?」

ウソ!これがミツキ…。これは何かの間違いだよな。

「ねえ、どうして私の名前を知ってるの?」「俺だ!俺!」「え!?その声…まさか!」

うんうんと頷く。

「オカマさん!」「ミツキさん!」「あははは…冗談よ…冗談。で、何でそんな格好をしているの?」

ミツキに理由を説明する。

「なるほどね。それなら仕方がないわね」『皆様、王子の登場です!』

壁が動いて、ステージが姿をあらわす。その上に誰かが座っていたが、逆光で顔までは見えない。

「あれが…そうなのか?」「そうみたいね…」『一列に横一列にお並び下さい!』

言われた通り横一列に並ぶ。

『しばらく、そのままじっとしてて下さい』

はぁ…何で俺まで。

『はい…わかりました。只今、王子が婚約者を御決めになりました』

まさか…俺は選ばないだろうな。

『そちらの方』

ステージ袖のメイドが俺を指差す。

え!俺ですか!

『おめでとう御座います。王子があなたを花嫁にと申しています』

「ちょ、ちょっと待って!俺は…」『はい…何でも望むものは差し上げると申しております』

「だから、そうじゃなくって…」

ステージの上で座っていた人物が、おもむろに立ち上がりこっちに来る。

「そこで止まれ!いいか…俺は男だ!」「それがどうかしたのかね?」「はい…!?」

「僕は君が好きになった。だから結婚したい…」

そう言いながらにじり寄ってくる。

バッと服を脱ぎ捨てる。もちろん何時も格好に戻っている。2、3歩後ろに下がって逃げる。

「待ってくれ〜!」「来るな〜!俺にはそんな趣味はね〜!」「何をしている〜!捕まえなさい!」「は!」

部屋中を逃げ回る。ミツキとユキは、その光景をあきれた顔で見ている。

「あの…私達っていったい…」「良いんじゃない、あれはあれで…」「もうやめてくれ〜!」

第五章に続く


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