君のぞRPG〜第拾四章〜
先を走る、ユキの跡について走る。しばらくして立ち止まる。

「さて、茶番はこれくらいにしないか? 俺とミツキをこんな岩山に連れて来た目的は何だ?」

「何時から気が付いてたんですか?」「さっきな…」「え! 何がどうなってるの? 説明してよ?」

ミツキは俺とユキを交互に見る。

気にしない…気にしない…。

「まったく、もっと早く気が付くべきだったぜ! ユキは海が苦手なのにあの時は平気そうにしていた」

剣を抜いて構える。

「あの時、すでに入れ替わってたんだろ?」「ふふふ…そうですよ」

「ユキになりすまして、いったい何を考えてる!」「それも…すでに判ってんるのでしょ?」

ユキはゆっくりと振り返る。

「ああ…俺達の戦力を分散させるって作戦だろ? マナマナさんよ!」「そうです。全てお見通しですね…」

「ねえ、マナマナって何?」「ハルカをさらった張本人さ!」「え!?」

マナマナは不適に笑う。

「おかしいですね。私と貴方は初対面のはずですよね〜?」「ああ…俺とお前はな…」

ミツキは訳が判らずに困惑の表情を浮かべる。

「そうですか…貴方は前世の記憶をお持ちなんですね」「まあな…」「確か…前世では…」

「そうさ! てめいに殺された…だろ?」

ミツキは驚きの表情で俺のことを見る。

「殺されたって…いったい…」「後でゆっくりと説明してやるよ」

水月は黙って頷く。

「これまで、行動を起こさなかったって事は…その時に受けた傷が癒えてないみたいだなー!」

「お蔭様で、かなり回復しましたよ。ですが、力は前の半分以下ですけど…」「本物のユキは何処だ!」

「丁重にお預かりしてますよ」

マナマナは不適に笑い、ハルカとユキのマスコットを取り出す。

「ごらんの通りです」「そろそろ、話にも飽きて来たなー」「そうですね。始めましょうか…」



「はん! 口ほどにないわねー!」「まったくです!」

アユとアカネは横たわる黒騎士を見下ろす。

「どんな顔をしてるんですかね〜?」「見てみましょう!」

サユリが兜を外すと、アカネは驚ろく。

「そんな…嫌です…こんな事って…」

アカネは後ろにゆっくりと下がる。

「あん? どうしたのさ?」「どうして、タカユキさんが…こんな事を…いや〜!」

「だ、大丈夫ですよ。まだ死んでませんよ…」

マユが胸に耳をあてて心音を聞こうとするが、何も聞こえてこない。

「さっきの一撃でとどめをさした」「何て事を!」「やらないと、こっちがやられてた」

アカネはその場に座り込む。

「う…」「え!?」「魔物のこいつは死んだ」「あれ? ここは?」「良かった〜!」

アカネは泣きながらタカユキに抱きつく。

「あんた、いいところあるじゃないさ!」

マイはアユに剣を構える。

「……魔物」「あんですと〜!」「私は魔物を狩る者だから!」「ちょっと待て〜! コラ〜!」「討つ!」

マイはアユに切りかかる。アユは、辛うじてそれを交わす。

「次は外さない! 覚悟!」「あ、あんですと〜! 少しは人の話を聞けー!」

走って逃げるアユの跡をしつこくマイが追いかける。

「あははは…すごく楽しそうですね。マイー! サユリも仲間に入れて下さい!」

マユは辺りを見渡し、アユの跡を追いかけて行く。


「あちらは決着が付いたみたいですね」「そうですね。もう、私達が戦う必要はないようですね」

二人は高台から、その光景を眺める。

「家に寄りませんか? 美味しいジャムがあるんですよ」「お邪魔じゃないかしら?」

「大丈夫ですよ」「お言葉に甘えさせてもらいます。秋子さん、貴方は腕が訛りましたね」

「貴方もそうですよ」「お互い、歳には勝てませんね」

二人は手をそっと頬に沿えながら笑う

第拾五章に続く


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