君のぞRPG〜第拾一章〜
「出血はなんとか止めました。でも、きちんと治療しないと…」

ユキさんは寝たままの彼を見下ろす。

「有難う…それだけで十分よ…疲れたでしょ?」「え! ユキは別に…」「御免なさいね、私には…」

そう言って岩を殴る。

「私は…何も…何も…出来なかったから…」「そうね。好きな男を自分の目の前で見殺しにしたんだから」

「アユさん! 少しは…ミツキさんの気持ちを…」「いいのよ、ユキさん…その通りなんだから…」

「でも…」「もう良いって言ってるでしょ!」

ユキさんを睨みつける。

「御免なさい…少し、一人にして…」

一人で歩き出す。

「何かあったんですか?」

偵察から帰ってきたアカネがユキさんに聞く。

「またですか! あなたって人は…」「ふん!」

アユはそっぽを向く。

「あなたは…人の気持ちってものを少しは考えた事があるんですか?」「あん!? あにが言いたいのさ?」

アユはアカネを睨みつける。

「もうやめて下さい。今はもめてる時じゃ無いはずです。少しでも早く、街に運ばないといけないんですよ」

アカネとアユは下を向く。



「……て!」

ん…? 何だ?

「……きて!」

誰だ? この声、どこかで聞いたような気がする。

「維持でも起きないつもりね! だったら、こっちにも考えがあるわ!」

ガス!

え! うわ〜!

ドタバタ…

「いててて…」「やっと起きたわね!」

え…? 制服のミツキ?

キョロキョロ…

学校? 何で俺はここに居るんだ? 俺は確か…。

ガン!

顔面にモップがあたる。

「いった〜!」「ぼさっとしない! さ、掃除始めるわよ!」「判ったよ!」

しぶしぶ、掃除を始める。

俺は今まで、黒騎士と戦って…それで刺されて…うーん…さっぱり判らん!

ガン!

「いったー!」「サボらない!」「さっきから、ボコボコ殴りやがって! 馬鹿になったらどうするんだ!」

「それ以上、馬鹿になりようが無いでしょ?」

ポン!

「それもそうか…ってちょっと待て〜!」「口を動かすより、手を動かして!」

あれ? 何で俺と水月しか居ないんだ? 他の奴らは何処に行ったんだ?

「なあ、他の奴らは何処に行ったんだ?」「え! 何を言ってるの? 他なんて居ないでしょ?」

「え!? 水月…何を言ってんだ? 居るだろ…クラスの皆がさあ…」「そういえば、居たかもね」

居たかもねって…なんだよその言い草は!

「覚えてないの? 皆、あなたが殺したんじゃない!」「え!? 俺が…」「そうよ。あなたがね」

「俺が…皆を…嘘だ…そんなの嘘だ!」「嘘じゃないわ。だってほら、私だって…」

水月の口から血が滴り、首が床に落ちる。その首は不気味に笑う。

「う、嘘だ…こんなの…俺は絶対に認めない」

突然床が消え去り、漆黒の闇の中に落ちて行く。


「あらあら…それは大変でしたね。一命は取り留めたわ。何時目覚ますか…」

「そうですか…ご迷惑をお掛けしました」

アカネは深々と頭を下げる。

「そうだわ。目を覚ますまで、家に泊まりませんか?」

家主は、にこやかに微笑みながら左手をそっと頬に添える。

「でも、迷惑なんじゃ…」「そんなことはありませんよ。どうします?」

「ミツキさん、どうしますか?」

ミツキはボーとその場に立ち尽くす。

「こいつは使いものにならないさ! お前が決めればいいさ!」「ユキが…ですか!」

ユキは驚いた顔をしながら自分を指差す。

「どうしますか?」「それでは、お言葉に甘えさせてもらいます」

「今日は、沢山のお客さんですから、張り切って料理をしないといけませんね」「あ、ユキも手伝います」

「私も!」「あらあら…すみませんね」

家主は申し訳なさそう顔をしながら、左手を頬に添えてる

第拾二章に続く


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