君のぞRPG〜第拾章〜 |
「はぁ…はぁ…」 こっちの方から声が…あ! その時、自分の目を疑う。 う、嘘…そ、そんな…。 目の前で、黒騎士が彼を貫く。 「ふ、一足遅かったな。こいつは死んだ!」「嘘…そんなの…嘘よー!」 黒騎士が剣を抜くと、彼は膝から地面について、そのまま倒れる。慌てて駆け寄り、彼を持ち上げて揺らす。 「ねえ、返事してよ…お願いだから…」 手に生暖かいものを感じ、ゆっくりと手を見てみると、手は血がついていた。 「イヤー!」「まずは、一人!」 黒騎士は剣をしまい、その場から立ち去ろうとする。 「待ちなさいよ…あんた! 許さない…絶対に許さない…あなたは私が殺す!」 「それは何の冗談だ? 俺を殺すだと? 冗談はもっとマシな物を言うんだな!」 彼をゆっくりと地面に置いて立ち上がる。 「そうか…貴様、そいつの事が」 「そうよ! だから…あなたは絶対に私が倒す!」 黒騎士を睨みつける。 「な、何! この背筋が凍るような気配は?」「あっちさ!」 気配を感じられた場所にかけて行く。 「あそこです!」「いったい何が、どうなってるのさ?」「あ、あそこで寝てるのって…」 「それに…ミツキさんの気配が…いつもと違います」「何でしょうか? あの黒騎士は?」 「ミツキ…さ…ん?」「彼の事…よろしくね!」「え!?」「よろしくって…いったい…あ!」 寝かされている彼の周りの雪が、血で赤く染まっている。 「手当てを…」「手当て? そんなことをしても無駄だ! そいつは死んだ! 俺が殺したのさ!」 『え!?』「あんですと〜!」「まことか!」 ミツキ以外はみな呆然と立ち尽くす。 「誰も手をださないで。こいつは、私が…」 こいつだけは、私の手で…。私から…一番大切な物を奪った、こいつだけは…。 「今のお前と戦っても、勝負は見えている。それでもやるのか?」「当然! でや〜!」 無数のパンチを繰り出すが、どれも紙一重で交わされる。 「な!? どうして…?」「簡単なこと、今のお前では俺にかする事すら出来まい!」 「なめないで!」「何度やっても同じ事! 正気失った貴様ではなー!」 今度は、蹴りとのコンビネーションを繰り出すも、紙一重で交わされる。 な、何で? こうも簡単に…交わされるの? 私は…確実にこいつを捕らえている。 「今のお前では、俺には勝てない。こんな戦い何時まで続けても意味が無いな」 黒騎士は飛び上がり、崖の上に降り立つ。 「待ちなさい! まだ勝負はついてないわよ!」「勝負ならもうついている、さらばだ!」 くそー! 私って何て無力なの…彼の仇すら取れないん何て…。 地面を何度も殴りつけ、突き刺さったままの彼の剣を取りに行く。 待ててね…私もすぐに行くから…。 剣を自分目掛けて突き刺そうとする。その手をアユが止める。 「あんたが死でも、こいつは生き返らないさ! 悔しかったら、あいつを倒してみろさ!」 剣から手を離して、その場に泣き崩れる |
ー第拾一章に続くー |