消えた人 |
「速瀬…水月?そんな奴いたか?」「またまたー、冗談はよしてくれよ」 孝之はおかしなこと言うなーと、不思議そうな顔をする。 「涼宮なら、知ってるよなー!」「え!私…」 涼宮はしばらく考えて、申し訳なさそうな顔をする。 「ごめん…知らない…」「親友だった人だぞ!」「知らないって言ってるんだから、それでいいだろ!」 「茜ちゃんは知ってるよな~!茜ちゃんの目標の人だった人だぞ!」「そんなこと言われても…」 「本当に知らないのか?」 三人は黙って頷くのを見て、後ろに2、3歩下がり、走り出す。 嘘だ!孝之達が、水月のことを忘れるわけない!皆で、俺のことを騙そうとしてるに違いない! そう自分に言い続けて、もう5年が経つ。今日もまたカレンダーには、今まで付けてきた×の印で、 いっぱいになっている。 今日もまた、二人でよく行った海辺の公園で一人、水月が帰ってくるの待つ。 最近では、水月の顔すら思い出せなくなっている。俺も、このまま…水月のことを忘れてしまうのだろうか でも、五年は長すぎるぞ…水月。いったい、どこに行ったんだ…水月~! 日も暮れ帰ろうと思った時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。 ゆっくりと振り返ると、そこには水月が立っていた。 「遅くなって、ごめんね」 水月は苦笑いを浮かべながら、近づいてくる 「馬鹿やろう!どれだけ心配したと思ってるんだよ!」 「ごめん…」 水月はそれだけ言うと下を向いてしまう。そんな水月をやさしく抱きしめ『お帰り…』とささやく それを聞いた水月の目から涙がこぼれる。しばらく、俺の胸の中で水月は泣いていた 「かなり変わったんだね」 二人で帰る時、水月の不意な一言に驚く。 「私が知らない、雑誌、お店、場所…」「5年だもんな…短いようで、すごく長い時間だな」 「そうだね…」「あ、お兄ちゃん!」 前から買い物袋を下げた茜が走ってくる。水月は茜ちゃんを見て、すごく心配そうな顔をする。 それはそうだ、自分のことを覚えているか心配だろう。 「水月先輩!お久しぶりです」 それを聞いて、水月はすごくうれしそうな顔をし、茜ちゃんを抱きしめる。 茜ちゃんは、どうしてこんなことをされるのか判らず慌てている 「御遣い?」「はい!お母さんどじだから、すき焼きに入れるお肉を買い忘れたんです」 涼宮のどじなところは、母親譲りかー。 「そうだ!せっかくですから、先輩も一緒にどうですか?」「え!」 水月は俺の方に見る。俺は黙って頷くと水月もうんと頷く 「お邪魔しようかな~…」「決まりですね!」「お、俺は?」 「いいに決まってるでしょ!ね~、茜」「はい!」 涼宮の家に行くと、孝之が居た。 「よー、元気だったか?」「おかげさんでな」 「今日はたくさん、お客さんが来くれてうれしいよ」「そうでね。お肉足りるかしら?」 俺は茜ちゃんの隣に座る。もちろん、俺の隣には水月が座る 「どうかね?」 涼宮のお父さんからビールをついでもらう。 「ありがとうございます」「あ、それ私が目をつけてたやつ~!」 「早いもん勝ちだ!」「ぶー!」 茜ちゃんは素早く肉だけを取る。俺も負けないように取る。 もちろん、後ろから水月に殴られた。 「まったく、子供みたいなことしないの!こっちが恥かしいじゃない!」 「あ~、もうお肉無いよー。私、一つも食べてなかったのに~…」 「あらあら…どうしましょうー?」「私達が買ってくるよ」 私…達…? 茜ちゃんは俺の腕を取りながら立ち上がる。 「お願いね」「いってきます!」「うわー!俺はまだ~…」 茜ちゃんに引っ張られていかれる。 「俺には関係無いだろ~!」「十分に関係あります!あれだけ食べたんですから!」 それについては、反論できなかった。しぶしぶ、買い物に付き合ことになる。 もちろん、荷物もちに連れて行かれたのは、言うまでもない |
ーENDー |