隠し場所
「えっと…ベットの下とかによくあるよ」「ベットの下ね。それから…」

「他には…ビデオの背びれの部分に、別の名前を書いてるのもあったよ」

「ねえ、遙…なんでそんな事知ってるの?」「前にこんな事があったから…」


久しぶりの孝之君の部屋だ〜。

部屋の中をゆっくりと見渡す。孝之君は冷蔵庫を覗いる。

「遙、悪いけど…少し待ててくれ」「え、どうしたの?」

適当な場所に座り、孝之君の方を見る。

「嫌な、飲み物があると思ったてだけど…無くってさ…」

孝之君は苦笑いを浮かべながら頭を掻く。

「私が…」

そう言って立ち上がろうとすると、孝之君は私の肩に手をそっと置き、そのまま座らせる。

「遙はここで待ててくれ」

黙って頷く。孝之君は出て行った後、テーブルの上に財布があるのに気がつく。

これって…孝之君のだよね〜? 

孝之君が慌てて帰ってくる。そんな孝之君に、笑顔で財布を渡す。

ポツン…

ゆっくりと部屋の中を見渡す。

うん! 孝之君が帰ってくる前に掃除をして、驚かしてあげよう。

窓を開けて風を入れる。さすがにこの時期の風は冷たい。

「やるぞ〜!」

そう言って掃除を始める。

これは…こっちに…それは…こっち…。


20分後…。


掃除も終わり、綺麗になった部屋に座って孝之君が帰って来るのを待つ。

テーブルの上には、掃除中に見つけたビデオが置いてある。後で孝之君と一緒に見る為に、こうして置いてある。

そのテープに手を伸ばし、ビデオデッキにセットして、再生のボタンを押す。

「あ! あ! いい…もっと…」「え…!?え〜!? 何なの…これ?」

テレビに映し出された映像を見て、赤面して手で顔を隠す。

ゴト…

音がした方を見ると、孝之君が呆然と立ち尽くす。孝之君は、急いでビデオの停止ボタンを押す。

「遙…これは…」「孝之君。大丈夫だよ…男の子だもんね…これくらい見るよね…」

赤い顔をしながら言う。

「ねえ…孝之君…」「遙…?」「あのね…私…」

もじもじしながら孝之君の方を見る。孝之君そって私の肩に手を添える。立ち上がり、ベットに向かう。


「それでね…それでね…その後にね…」「遙…もういいわ…」

何よ…結局は、二人ののろけ話じゃない。

「有難う…参考になったわ。それじゃあね」「うん。またね…」

遙と別れて彼の所に行く。

「今日…家に行っても良い?」「唐突だな〜!」「駄目かなー?」

ジーと彼を見つめる。彼は頬をポリポリとしながら考える。

「別にいいぞ。だけど、今日は掃除当番だからな〜」「終わるまで待ってるわ」「そうだ!」

彼をポケットから一つの鍵を取り出して私に渡す。

「何? この鍵?」「家の鍵だ。先に中に入ってて良いから。いずれ合鍵も作ってやるからさ…」

「じゃあ、そうするね」

受け取った鍵を無くさないようにしまう。


鍵を開けて中に入る。

「お邪魔します…」

中に入りって荷物を置き、部屋の中を見渡す。

「よし!始めましょうか!」

部屋の掃除を始める。掃除というのは立て前であることは言うまでも無い。

まずはベットの下…。次はビデオテープ…。

遙から聞いた場所を徹底的に探す。

あれ? 何も出てこないわねー? 見ないのかしら? そうよね、彼に限ってね…。

ため息をついた時に数冊の本が目に入る。

何の本かしら?

一冊の本を持ち上げた時、カバーが取れて中身が床に落ちる。

それを見てしばらく放心状態になる。

「ただいま〜! お! 掃除してくれたのか? 有難うな…ん? 何やってんだ?」

「ねえ、一つ聞きたいんだけど…良い?」「な、何だよ?」「これは…何かしらー?」

さっき見つけた物を彼の前に突きだす。

「それは…孝之が…置いて行ったんだ…」「孝之がね…。それなら、仕方が無いわね…」

「まったく、孝之にも困ったもんだよ」「そんな嘘が通じると思ってるの!」

そう言いながら、テーブルを叩く。

「やっぱり…無理?」「当然よ! 全部処分するから!」「そ、そんな…」「何か文句ある?」

彼をキッと睨みつける。

「……ありません」

この日を境に彼の部屋から、如何わしい物は消滅した

ーENDー



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